ブルゴーニュにはアリゴテという素晴らしいワインを生み出す白ブドウ品種があります。しかしブルゴーニュの主要品種であるシャルドネの影に隠れてあまり目立たない存在のためか、その魅力については広く知られていません。
同地方の名立たる高級白ワインのほとんどはシャルドネから生み出されているので、シャルドネ以外からワインは造られていないのではないかと思われる方もいるでしょう。
しかしアリゴテは“名脇役”と呼ばれているなど、品質の高いワインを生み出しています。
今回はそんなアリゴテがどんなブドウ品種なのか、その魅力を解説していきます。
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アリゴテとは?
アリゴテはブルゴーニュを原産とする白ブドウ品種です。ブルゴーニュ地方では、ほとんどの畑にピノ・ノワールとシャルドネが植えられていますが、畑の6%をアリゴテの畑が占めています。
アリゴテからはスティルワインだけでなくスパークリングワインも造られます。
そんなアリゴテの起源は、ブルゴーニュの主要品種であるピノ・ノワールが関係しています。ピノ・ノワールとグーエ・ブランという品種の交配で誕生した白ブドウ品種で、シャルドネやガメイなどと起源が共通していることでも有名です。
あまり目立たないブドウ品種ですが、ブルゴーニュの他品種とも深い繋がりを持っているブドウ品種なのです。
アリゴテの歴史
冒頭、アリゴテはシャルドネの影に隠れて目立たない存在とお伝えしましたが、その理由の一つに「アリゴテは酸が強く厚みのない低質なワインを生み出す品種」と思われていた時代が関係しています。
アリゴテは17世紀頃からブルゴーニュ地方で栽培されていたと言われてますが、昔はコルトン・シャルルマーニュやモンラッシェなどの有名アペラシオンにも植樹されていたようです。
しかし、シャルドネと比較すると低質なワインを生み出すことから地位は下がり、目立たない存在となってしまったと考えられています。
そんな中アリゴテの可能性を信じ続け、原産地呼称委員会にAOC認定の働きかけをし続けた人物がいました。それが、ドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティ(DRC)の共同経営者オベール・ド・ヴィレーヌ氏です。
ブーズロンという土地とアリゴテの相性を見出したことでその真価が認められ、1979年についに地域A.O.C.として「ブルゴーニュ・アリゴテ・ブーズロン」が認定。そして1998年には、村名A.O.C.「ブーズロン」に昇格し、アリゴテ種で唯一の村名A.O.C.となりました。
このような歴史もあり、アリゴテといえば「ブーズロン」が有名ですが、コート・ドールにも唯一アリゴテの使用が認められている一級畑「モン・リュイザン」が存在しています。
代表的な産地
アリゴテはブルゴーニュが原産ですが、その他の地域でも造られています。ここでは代表的な産地を紹介します。
ブーズロン
前述したようにアリゴテ100%で造られる白ワインの有名産地といえば、コート・シャロネーズ地区にあるA.O.C.「ブーズロン」。
広域のA.O.C.「ブルゴーニュ・アリゴテ」よりも収量などが厳しく規定されているため、ワンランク上のアリゴテワインと言えるでしょう。
アリゴテらしい酸が楽しめるのはもちろん、白い花やレモンを思わせる柑橘の香り、ヘーゼルナッツを思わせる深みのある風味など、複雑ながらバランスの良い素晴らしい白ワインが生み出される産地です。
前述したDRCの共同経営者であるオベール・ド・ヴィレーヌ氏によって設立されたドメーヌ・ド・ヴィレーヌがあるのもブーズロン。アリゴテの個性と魅力を世界に知らしめたワイナリーとして有名です。
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東欧について
アリゴテは病害虫に強く、ピノ・ノワールやシャルドネなどが難しいと言われている産地でもよく育つため、ブルガリアやロシア、モルドヴァなど数多くの国で栽培されています。
特にモルドヴァでは、シャルドネやカベルネ・ソーヴィニヨンなどの国際品種とともにアリゴテも広く栽培されています。ブルゴーニュ原産のブドウであるためそのイメージが強いですが、意外にも世界最大の栽培国はモルドヴァなのです。
ワインカクテル「キール」について
ワインベースのカクテルとして人気の「キール」。白ワインとカシスのリキュールから造られますが、これに使われるのがアリゴテの白ワインです。
キールはブルゴーニュ地方の食前酒として有名になったカクテルですが、第二次世界大戦後にワイン出荷不況に陥ったブルゴーニュ地方のディジョン市を復興させる目的で、当時の市長フェリックス・キール氏が白ワインベースのカクテルを考案し普及させたそうです。
このディジョン市の市長フェリックス・キール氏にちなんでこの名がつけられたとも言われています。
キールはカシス・リキュールと白ワインを組み合わせたカクテルですが、カシスがディジョン市のシンボルであったことも考案された背景の一つでしょう。
アリゴテと合う料理
アリゴテは柑橘の香りやフレッシュな酸、穏やかな風味が特徴のワインです。そのためフードフレンドリーなワインとしても知られており、様々なマリアージュを楽しむことができます。
ここでは、アリゴテと合う料理を紹介します。
ハムのゼリー寄せ(ジャンボンペルシェ)
ブルゴーニュ産のアリゴテと料理のマリアージュを楽しむのであれば、ブルゴーニュ名物の生ハムのゼリー寄せがおすすめ。
豚のモモ肉とハム、パセリをゼリーで包み込んだもので、冷製のオードブルとして提供されることが多く、フレッシュで旨みのある料理です。
アリゴテの柑橘や白い花の爽やかな香りとパセリの風味、豚肉やハムの濃厚な味わいをアリゴテの酸がしっかりと洗い流し、どんどん食べ進めることができます。
冷菜ですのでワインもしっかりと冷やしていただきたいですね。
天ぷら
アリゴテは酸がしっかりとしており、エレガントな印象のワインですので和食との相性も抜群です。レモンやライムの香りに加えミネラル感もあるので、すだちなどをかけ塩でいただく天ぷらがおすすめです。
また、穴子などの魚の脂をワインの柑橘の香りや酸がしっかりと抑えてくれるので、すっきりと食べやすくなります。
口の中をフレッシュな状態にしながら天ぷらを食べ進めたい方には、アリゴテはピッタリです。
まとめ
アリゴテは、シャルドネの二番手として目立たない存在の白ブドウ品種ですが、近年はその品質の高さや可能性、マリアージュの幅広さなどから熱い視線を浴びるようになってきました。
ブルゴーニュといえばシャルドネですが“名脇役”のアリゴテの魅力もぜひ堪能してみてはいかがでしょうか。
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