ボルドーの名脇役!セミヨンってどんなブドウ品種?

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公開日 : 2019.8.23
更新日 : 2022.5.23
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フランス・ボルドー産白ワインの重要な原料であるセミヨン。ボルドーでは人気の高いソーヴィニヨン・ブランとブレンドされることが多いため、セミヨンは脇役のイメージが強いのですが、他のワイン産地に目を向けてみると、セミヨン単体から素晴らしいワインが造られていることがわかります。

今回は、ボルドーの名脇役でありながら、所変われば自らも異彩を放つセミヨンというブドウ品種について、詳しく解説致します。

目次

セミヨンの特徴

セミヨンは、フランスのボルドー地方が原産とされる白ワイン用ブドウ品種で、甘口から辛口まで幅広いタイプの白ワインの原料になります。

セミヨンから造られるワインは熟成に耐えうるしっかりとしたボディになりますが、若いうちはあまり特徴がなく香りも乏しいため、一般的には強いアロマと高い酸を持つソーヴィニヨン・ブランとブレンドされることが多くなっています。

また、セミヨンとソーヴィニヨン・ブラン、ミュスカデルなどをブレンドして造られるボルドーの「ソーテルヌ」は世界三大貴腐ワインの一つであり、類稀なる長期熟成をする世界最高峰の甘口ワインとして大変有名です。

セミヨンは非常に育てやすく生産性の高いブドウ品種で、樹勢が強く、果実は早熟で果皮は明るい黄緑色をしています。果皮が薄いため貴腐菌がつきやすいので、セミヨンは貴腐ワインを造るに適しているのです。

セミヨンの主な産地

 主な産地の筆頭はフランスのボルドーです。ボルドーではセミヨンから辛口と甘口のワインが造られています。

また、オーストラリアのハンター・ヴァレーや南アフリカでもセミヨンから素晴らしいワインが造られていますが、産地によってワインのスタイルは異なります。詳しく見ていきましょう。

ボルドー地方(フランス)

言わずと知れたフランスの銘醸地ボルドー。大西洋に流れ込むジロンド川流域に広がるワイン産地です。

ボルドーで造られるセミヨンのワインと言えば貴腐ワインのソーテルヌ。高品質の貴腐ワインは、ジロンド川上流にあるボルドー市の南東、ガロンヌ川の左岸に位置し、その支流のシロン川をはさんだソーテルヌ地区とバルザック地区で生まれます。

ブドウが熟した秋に、森の中を流れてくる水温の低い小川やシロン川が大きなガロンヌ川と合流する時、水温の違いから朝霧が発生し、ソーテルヌやバルザックの畑を覆います。そして、午後は畑が太陽の光で暖められるといった適度な温度と湿度の条件により、貴腐菌(ボトリティス・シネレア菌)が発生するのです。その貴腐菌の菌糸によりブドウの果皮に穴が開き、水分が蒸発したブドウから造られるワインが貴腐ワインです。

この恵まれた気候条件のもと、貴腐ブドウから造られたワインは濃厚な甘口となります。色合いも黄金色で、蜂蜜、紅茶、ヴァニラ、干し杏のような香り、アフターに残る酸味も上品ながらしっかりとあります。また、そのしっかりとした酸が長期熟成を可能にするのです。

一方、ボルドー市の南側のグラーヴ地区や、ジロンド川に合流するガロンヌ川とドルトーニュ川に挟まれたアントル・ドゥー・メール地区では辛口のセミヨンが造られます。

ボルドー・グラーヴ地区で造られるセミヨンは、赤ワインと同じようにオーク樽で熟成させた、複雑でしっかりとしたコクのある白ワインとなります。また、グラーブ地区で有名なシャトー・オー・ブリオンは赤ワインだけでなく、白ワインも造っており、名実ともにボルドー最上の辛口白ワインです。

ハンター・ヴァレー(オーストラリア)

シドニーの北に位置する歴史あるワイン産地ハンター・ヴァレー。この地で造られるセミヨン100%の辛口白ワインは「ハンター・セミヨン」と呼ばれる独特なスタイルで知られています。

温暖で湿度の高いハンター・ヴァレーでは収穫期が降雨期と重なるため、セミヨンは降雨を避け酸度が下がる前に早めに収穫されます。そのため、アルコール度数の低い、酸の豊富なワインとなります。

若いうちは柑橘系の香りとミネラル感が特徴のフレッシュな味わいですが、酸がしっかりと残っていることから熟成も可能で、6〜10年ほど熟成させると、蜂蜜や香ばしいロースト香など複雑な風味を持つワインとなります。

ハンター・セミヨンはこの土地の気候条件のもとに生み出された、セミヨンの潜在能力余すことなく表現したワインと言えるでしょう。

南アフリカ

南アフリカは、現在ではセミヨンの生産量は多くありませんが、19世紀には全栽培面積の90%以上もセミヨンが栽培されていました。

近年は国際的に人気の高いシャルドネやソーヴィニヨン・ブランに植え替えが進んでしまいましたが、今も残る樹齢の古いセミヨンからは、とても興味深い高品質なワインが造られています。

南アフリカで造られるセミヨンのワインは、柑橘系のフレッシュな酸味とハーブのようなニュアンスを持ちながらも、肉付きが良く、熟成させることも可能です。また、近年の新たな生産者は有機栽培やシンプルな醸造法を実践し、セミヨンから実にピュアで果実味の豊富なワインを造っています。

なお、現在セミヨンは南アフリカワインの生産の中心地である西ケープ州沿岸地域のケープタウン近郊や、フランス系移民の多いフランシュック地区で主に栽培されています。

セミヨンのと料理の相性

セミヨンの味わいのタイプ別に料理との相性をご説明します。

ドライでほのかな苦味のあるフレッシュなセミヨンのワインには、ホタテのカルパッチョや生牡蠣、刺身、白身魚の塩焼きなどとよく合います。

一方で熟成したセミヨンのワインには、魚介類のムニエルやフライなどがおすすめです。

また、ソーテルヌやバルザックの甘口ワインにはなんといってもフォアグラです。ソーテルヌ×フォアグラは一度は試していただきたい王道のマリアージュですが、なかなかフォアグラを家庭で料理するのは難しいですね。気軽に食卓に取り入れるには、フォアグラを使ったテリーヌやパテをデパ地下などで購入すると良いでしょう。

まとめ

セミヨンは若いうちは香りも乏しいことからソーヴィニヨン・ブランとブレンドされがちで、ボルドーでは名脇役とされています。

しかし、そんなセミヨンがブレンドされるワインもソーヴィニヨン・ブランからは長期熟成に耐えうる酸を、セミヨンからは糖度の高い果汁と凝縮感を、それぞれの品種が互いに補い合うことにより素晴らしいワインとなるのです。脇役というイメージが強いセミヨンですが、セミヨンがなければソーテルヌも世界最高峰の貴腐ワインとしての名声は得られないのです。

また、ソーテルヌでもハンター・ヴァレーでも、セミヨンがその力量を発揮するにはその土地の恵まれた気候条件が欠かせません。最良のテロワールと出会った時に、素晴らしいワインが生まれるのです。

是非、産地ごとに風味の異なるセミヨンのワインをお楽しみください。

参考文献 ・日本ソムリエ協会 教本 2018     ・WANDS ワイン用葡萄ガイド / ジャンシス・ロビンソン

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