噛むほどにコクと旨味が広がるハードチーズ。そのままでワインと共に味わうことはもちろん、料理に使用すると芳醇な香りや旨味が楽しめますよね。
硬さのあるチーズは切ってそのまま食べたり、削って料理に入れたりと様々に楽しめます。
そんなハードチーズはセミハードとハードタイプに分類されることがありますが、その違いについてと、ワインと合わせて食べたい代表的なチーズをご紹介します。
目次
セミハードチーズとハードチーズの違い
チーズの保存性を高めるために造られてきた、セミハード・ハードチーズですが、両者の違いについてご説明します。
違いと特徴
2つの大きな違いは、製造工程によるチーズの水分量です。
セミハードチーズ
・チーズを造る際、カード(凝乳)を圧搾し、水分量を減らしたり除去したり、やや硬めに仕上げたチーズ。半硬質。
・ワックス加工タイプや、ウォッシュタイプのように表皮を洗っているタイプもあり、外見からでは判断しづらいことがある。
・しっとりと、むちっとした食感で食べやすく、料理にも溶けやすい。
ハードチーズ
・セミハードよりもさらに脱水するために、カードを高温で加熱し、圧搾して硬く仕上げる。
・外見は、長期熟成のためにしっかりとした表皮に覆われ、大型タイプも多い。
・水分量を減らし保存性を高くしていることで、セミハードよりも長期熟成に向いている。
明確に区別することは難しい
このように両者の違いを説明しましたが、実はセミハードとハードの違いには様々な見解があるのです。
チーズの硬さは水分量が目安になりますが、熟成度合によって水分量は大きく変わるため、セミハードであっても熟成したタイプは硬い食感のものが存在します。
また、脱水のための加熱温度によっても、チーズの水分量が異なります。
ナチュラルチーズの分類方法は水分量だけではなく、非加熱・加熱の温度を基準としたケースもあるなど、様々に存在するのです。
このような点を考慮し、非加熱圧搾タイプ(半硬質~硬質熟成)・加熱圧搾タイプ(硬質~超硬質熟成)に分けることもあります。
現在では世界中からチーズが輸入されていますが、全世界共通の分類法はありません。そのため、細かな分類が難しいセミハードとハードチーズですが「大きな違いは水分量」と覚えておいて間違いはありません。
セミハードチーズの代表銘柄3種
ここではセミハードチーズの代表銘柄を三つご紹介します。一度は食べたり見かけたりしたことがあるチーズもあるのではないでしょうか。
ゴーダ/Gouda
オランダ原産のゴーダは、穏やかであまりクセのないことから、プロセスチーズの原料としても使用され、世界中で愛されているチーズです。
1ヶ月~48ヶ月の熟成別に販売され、熟成の若い穏やかな味わいのタイプから旨味を楽しめる熟成タイプまであり、チーズ初心者から上級者まで楽しめます。スライスしてサンドウィッチに入れたり、熱を入れるととろりとした食感も味わえます。
外皮を黄色のワックスでコーティングしてあるタイプと、コーティングのないリンドレスタイプ(外皮なし)があり、ワックス加工されているものは、ワックスは取り除いて食べましょう。
ゴーダについて詳しくはこちら
テット・ド・モワンヌ/Tête de Moine
スイスで造られる、「修道士の頭」という意味を持つテット・ド・モワンヌ。チーズ名は聞き慣れないかもしれませんが、チーズの盛り合わせなどで、花びらのような華やかな見た目をしたチーズを見た事がある方も多いのではないでしょうか。
テット・ド・モワンヌは、「ジロール」と呼ばれる専用のチーズ削り器でフリル状に削り取って盛り付けられることから、見た目も華やかなためレストランなどで提供されることも多いです。
そのまま削り取って食べるテット・ド・モワンヌは、ジロールで空気を含ませて削るため、芳醇な香りと濃厚なバターのような旨味が、口の中で解けながら広がります。
カンタル/Cantal・Fourme de Cantal
フランス最古のチーズと言われる、カンタル。起源は数千年にも遡る、長い歴史を持ちます。
カンタルが生産されるオーヴェルニュ地方には、サレール(Salers)・ライオル(Laguiole)というカンタルに似たセミハードチーズがあり、三兄弟として有名です。
カンタルは熟成度合によって名前が変化するほど、熟成によって香りや味わいを楽しめるチーズの一つ。若いタイプは柔らかく素朴でシンプルな味わいですが、熟成するにつれ、香り・味わいともに深みを増し、味わいが強くなります。
そのままスライスして、ナッツ入りのパンやカンパーニュなど、香ばしいパンに挟んで、軽めのワインと共に楽しむのがおすすめです。
ハードチーズの代表銘柄3種
次に、ハードチーズもご紹介します。代表的なパルミジャーノ・レッジャーノをはじめ、チーズフォンデュに欠かせないチーズなどの3種です。
パルミジャーノ・レッジャーノ/Parmigiano Reggiano
イタリアチーズの王様として名高い、パルミジャーノ・レッジャーノ。「パルメザン」の名を持つチーズは世界各地で造られていますが、伝統的なパルミジャーノ・レッジャーノは、パルミジャーノ・レッジャーノ協会のもと、厳重な検査や等級に分けられ、チーズの品質が守られています。
熟成によってアミノ酸の結晶が固まりじゃりじゃりとした食感も加わり、噛むほどに豊かさが感じられます。
直径35~45㎝の大型タイプなので、専用のナイフで切り取られ、砕いてそのままワインと楽しんだり、粉チーズとしてパスタなどの料理に使用されたりします。
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コンテ/Comté
フランス・ジュラ地方が原産のコンテは、厳しい冬を乗り越えるための保存性が高い「山のチーズ」代表で、直径55~75㎝と大型のチーズです。
熟成が進むにつれ、色合いは黄色から茶系になり、香りもナッツのような香ばしさが広がります。ホクっとした栗や芋のような食感で、コクも旨味も強く、後味に甘味を感じます。
カットしてそのままいただくことが多いコンテですが、薄切りや厚切りなど、チーズの切り方によっても口に広がる風味の違いを感じることができます。料理にも多用され、世界中から愛されるチーズです。
グリュイエール/Gruyère
チーズフォンデュの味わいを決めるために欠かせないチーズとして、スイスを代表する人気のグリュイエール。
大型の円盤形をした保存性の良いチーズで、熟成度合によって味わいが濃厚になります。若いうちは酸味を感じ、熟成が進むにつれ外観の色合いも濃くなり、ナッツのような芳しい香りが広がります。
そのままカットし芳醇な味わいを楽しむことはもちろん、代表的なチーズフォンデュの他、グラタンやキッシュ、オニオンスープなどの料理に使用され、熱を加えることでさらに豊かな風味を楽しむことができます。コクのあるワインにピッタリです。
ワインと合わせるときのポイント
フレッシュタイプとは異なり、熟成の違いを楽しめるセミハード・ハードチーズは、水分量が少ない事から、噛むほどに奥深い味わいが広がります。
ワインと合わせる場合は、ワインとチーズの熟成度で合わせることがポイントです。シンプルに楽しめる若いタイプ同士から、複雑性や熟成感のあるタイプ同士などを組み合わせることで、お互いが引き立ち合いますよ。
熟成期間なども意識しながら、セミハード・ハードチーズを楽しんでみてはいかがでしょうか。