「今日は飲み切れないからやめておこう」。ボトルを目の前にため息をついたことはないでしょうか。
近年では核家族が増え、また健康への配慮からボトル1本を軽々と飲む機会が少なくなってきたと感じます。
ワインは開けた瞬間から酸化が始まり、たとえ栓をして冷蔵庫に入れて保存していても数日で風味が落ちてしまいます。
一昔前なら「ワインを酸化させずに保存したい」という願いはある意味妄想だったかもしれません。しかし、ついにその願いを叶える画期的なワインセーバー「コラヴァン」が誕生したのです。
今回は、昨年末日本で発売したコラヴァンを実際に自宅で使用し、使用感やワインの味わいに変化があるかどうかについても実験し、検証してみました。
目次
必要は発明の母~コラヴァンの誕生秘話~
かつて医療機器の開発に関わっていた、創業者のグレッグ・ランブレヒト氏
コラヴァンはアメリカ人グレッグ・ラブレヒト氏のアイディアで2013年に産声を上げました。
グレッグは大のワイン好きでしたが、この頃、妻が妊娠中だったために「ひとりでもゆっくりグラスでワインを楽しみたい」とコラヴァンのアイディアを思いついたのです。
評論家ロバート・パーカーも「この35年間で最も画期的な発明」と絶賛しており、今では世界で広く愛用されています。
使い方は簡単!
細い針をキャップシールの上から直接コルクに差し込むことで、コルクを抜くことなく直接ボトル内のコルクを注ぐことが出来ます。この専用の針を通じて注ぐことで、注いだ分量と同等の純度99%の窒素ガスがボトル内に注入されます。
針を抜いた後は、コルクそのものが自然に穴を閉めるためワインは空気に触れることないという仕組みです。
針を抜いた後のキャップシール上部
実験スタート!
下記の方法で定点観測を行いました。
①同一生産者、同一ビンテージのワインを2本用意する
②1本はコラヴァンを使って1週間おきにテイスティングする
③もう1本を4週間後に開けて、コラヴァンを使い続けたワインと比較する
使用ワイン
実験に使ったワインはこちらです。
ワイン名:Ca’Camarcanda 2015
生産者:Gaja
産 地:イタリア トスカーナ州
品 種:メルロ50% カベルネ・ソーヴィニョン40% カベルネ・フラン10%
1週目
説明書を読みながら不慣れに注いだため、「ジュー」とういう音と同時に勢いよくグラスに注がれました。注ぎ終わってコラヴァンをワインから抜くとキャップシールに小さな針の跡が残ります。
これまでは一度ワインを開けたら垂直保存が常識でしたが、栓を抜いているわけでないので横にして寝かすことができます。
収納の選択肢が増え冷蔵庫がすっきりするので気分が上がります。
味わいコメント
艶のある濃いダークチェリーレッド。香りはやや閉じ気味な第一印象。カシスなどの黒系フルーツに、メントール、木樽熟成由来の丁子の香り。しっかりとしたストラクチャーのある味わい。
2週目
スムーズに注ぐことができました。1度使えば2度目は簡単です。
1週目と全く変化なく、豊潤な黒系フルーツが香ります。
3週目
3週目にしてごくわずかな変化が見られました。開けたての時に比べて、香りが開いており、味わいにマイルドさが感じられるようになったのです。
4週目
いよいよ真新しい同一ワインを抜栓し、コラヴァンを使用した4週間目のワインと比較します。
まず驚いたのが外観です。
通常ならば4週間も経てば艶が失われ、マットな印象になるのが一般的です。しかしコラヴァンを使用したワインは開けたてのワインと変わりなく艶と輝きを保っていました。
香り、味わいについても開けたてとほとんど変わりがありませんでした。あえて言うならコラヴァンを使用したワインの方が香りは開いており、タンニンも柔らかくマイルドに感じられました。しかしこの変化はごく微妙なものです。
実験を終えて
コラヴァンを使用したワインは開けたての状態と全く同じ状態が続くというわけではなく、3週間目以降はまるでデキャンターをしたときのような穏やかな変化が起きたという印象です。
これは酸化による劣化とは別次元のもので、むしろその変化はポジティブなものと言えるでしょう。
またこの変化は、今回のように真剣に観察して分かるものなので、自宅でサラリと飲むには何ら気にならず、開けたてのボトルと遜色ない味わいが保たれていたと言えるでしょう。
コラヴァンが「飲み方改革」を起こす!
実はこれまで似たようなサーバーシステムは存在していましたが、大型で場所を取ることに加え、1台100万円近くするため、小規模な飲食店や一般家庭での導入は困難でした。しかし、コラヴァンなら小さく収納しやすいので個人経営の飲食店のみならず、家庭でも気軽に始められそうです。
飲食店では、これまで予約状況に応じて抜栓するワインをいちいち決めていたのが、コラヴァンの導入でゲストの好みや食事内容に合わせてグラスで自由にワインが開けられるようになりました。もちろんワインのロスもなくなります。
家庭においても革命児になりそうです。
まずは冒頭のグレックのように「おひとり様飲み」や、「ちびちび飲みたい」「あれこれ開けてみたい」という願いにはうってつけだからです。「もったいないから」といった理由でついつい飲みすぎてしまうこともなく体調管理にも期待できそうです。
二つ目の理由に、バローロやボルドーのグラン・ヴァンのように収斂性のあるタンニンを含む赤ワインなら、4週間ぐらいかけて飲めば、デキャンタージュしたような穏やかな変化も期待できるかもしれないからです。
コラヴァン上手になる 3つのポイント
最後にコラヴァンを使うときのポイントいくつか紹介します。
①かっこよく注ぐにはコツがいる
不慣れだと「シュー」という音が出てしまいます。優しくフックを押下して美しい所作で注ぎたいものです。でも少し練習すればボトルからダイレクトに注ぐよりも簡単です。いつかソムリエコンクールでも「コラヴァンでサーブしてください」という日が来るのでしょうか。
②熟成ワインには細心の注意を
古酒に使うときには丁寧に扱う必要がありそうです。熟成ワインはコルクが脆くなっていることがあるので、針がうまく刺さらない可能性があります。
③天然コルクのみ
現在日本で購入できるコラヴァンは、天然コルクにしか使うことが出来ません。つまりスクリューや人工コルクなどのすべてのワインに対応していないのでご注意ください。
参考:すでに米国ではスクリューキャップに対応する製品「Coravin Screw Cap」を発表されています。いつか日本にも上陸するかもしれないので今後後が楽しみです。
まとめ
コラヴァンの特徴と扱い方のポイントを知っていれば、ワインを酸化劣化させずに保存できるメリットは絶大。自宅でもレストランでもワインの楽しみ方が広がりそうです。
アメリカではスクリューキャップのコラヴァンも登場しているようですので、これからのコラヴァンの進化にますます目が離せません。
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