地中海に浮かんでいるサルデーニャ島は、高級リゾート地として知られています。その起源はなんとイタリア半島よりも古く、島全体が海上に現れたのはおよそ3億年前とされています。
地中海に浮かぶ島であるのに海鮮物よりも羊肉のほうがよく食べられていたり、その歴史からイタリアの他の州とは全く違った文化を持っていたりと個性的な州で、一風変わった雰囲気はワインにもよく現れています。
今回はそんなサルデーニャのワインをご紹介します。
サルデーニャってどんなところ
サルデーニャ島はイタリア半島の西側、ティレニア海に浮かんでいます。フランスのコルシカ島のすぐ南に位置しており、面積はシチリア州、ピエモンテ州に続いてイタリア第3位となっています。
典型的な地中海性気候で、雨は冬に集中するため夏は温暖で乾燥しています。そのため四方を海に囲まれた立地ですが、水不足に悩まされることもあります。良質なブドウ畑は丘陵地帯にあり、標高の高さによる冷却効果がブドウの酸を保持するのを助けています。
海に浮かぶ島であるものの「山の民族」と言われており、羊飼いや農民が非常に多い州です。さらに、歴史的に貿易や通商に積極的でなかったことから孤立を選んだとされ、周辺の島々とサルデーニャ自治州を構成して、固有の民族集団だと主張しています。
そんな島独自の存在や個性にプライドを持つという姿勢は、ワイン造りにも現れています。このような考えから流行に惑わされることなくサルデーニャの土着品種を使用した伝統的なワインが今もなお多く残っているのです。
なお、コルクの産地としても知られておりイタリア産のコルクのほとんどはサルデーニャ産です。
代表的な産地
サルデーニャの代表的な産地は島の北東部にあるガッルーラです。この地の丘陵地帯で造られているワインは、1996年にイタリア南部の白ワインとしては初めてD.O.C.G.に認定されました。
このワインは白ブドウ品種のヴェルメンティーノ主体で造られます。ヴェルメンティーノはサルデーニャのあちこちで栽培されていますが、ガッルーラでは芳醇さや力強さなど全てにおいてワンランク上のものが生み出されています。
ヴェルメンティーノのワインは、よく熟した果実や甘い花の香りがあり、アルコール度数は高めでコクが感じられ、後味の心地の良い酸味と仄かな苦味が味わいを引き締めます。
栽培されている品種
サルデーニャは、ある種閉鎖的な環境で島独自の文化を持ちながら発展した歴史から、現在も土着品種がメインで栽培されています。
中でも有名なのが白品種のヴェルメンティーノと赤品種のカンノナウです。
ヴェルメンティーノ
サルデーニャだけでなく、ティレニア海沿いのリグーリア、トスカーナ、フランス・コルシカ島などでも栽培されている白品種ですが、その起源はイタリア・トスカーナ州であるという説とスペインであるという説が存在します。
お手軽なワインから高級ワインまで幅広いラインナップをカバーし、基本的にはアロマティックで爽やかな香りと味わいに仕上がります。
高級なワインは、適度な酸味を保つために比較的早く収穫され、仕上がったワインからはフローラルかつフルーティーなアロマとミネラル感を感じます。
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カンノナウ
サルデーニャで最も栽培されている黒ブドウがカンノナウ。赤系フルーツの果実味が豊かで酸味は少なく、わずかなスパイシーさも感じる品種です。重厚で長期熟成できるタイプから、軽快でみずみずしく飲みやすいワインまで幅広いタイプが造られます。
フランスではグルナッシュ、スペインではガルナッチャという名前で親しまれています。サルデーニャでは何世紀にも渡ってカンノナウの名前で知られていますが、その由来は現在も不明です。
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まとめ
サルディーニャでワイン造りが発展したのは、かつてイタリアのピエモンテ州やフランス、スイスを支配していたサヴォイア家が支配するようになった18世紀からと遅めでした。
古くからの個性的な伝統と文化を守り続けたサルデーニャ。近代化するワイン造りに流されることのない、頑強で意外性のあるワインスタイルを、ぜひ楽しんでみてくださいね。
<参考>
『2019 ソムリエ協会教本』一般社団法人日本ソムリエ協会
杉山明日香『ワインの授業 イタリア編』(リトルモア)
『Winart』No.92
Jancis Robinson他『Wine Grapes』(Penguin)
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