ピエモンテの造り手「プルノット」が語る“古典派”ワイナリーでありたい理由
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ピエモンテで100年以上続く歴史あるワイナリー「プルノット」のブランドマネージャーであるエマニュエル・バルディ氏が来日。老舗ワイナリーの哲学について語っていただきました。
バローロで初めて単一畑の概念を取り入れた「革新的」とも言えるワイナリーの歴史を紐解きます。
100年続く老舗ワイナリー
プルノットの歴史は1904年までさかのぼります。創業者のアフレッド・プルノット氏の名前からワイナリー名を「プルノット」と名付けました。
その後、アフレッド・プルノット氏の友人である醸造家ペッペ・コッラ氏に経営を引き継ぎます。ペッペ・コッラ氏は、バローロやバルバレスコを取りまとめる団体のトップであり、D.O.C.G、D.O.Cの決定権があるほどの実力者でした。
そんな彼の時代に生まれた概念が、今やバローロを語る上で欠かせない「単一畑」。この概念を生み出したのがプルノットなのです。
「バローロ・ブッシア」の誕生
バローロ一帯は西と東で造られるワインのタイプが大きく異なります。西側は600万年前の地層が隆起したとされている砂質土壌のため、香り高く優美な女性的な味わいに、東側は1,200万年前の地層が隆起したとされる粘土質土壌のため、厳格でスパイシーな男性的な味わいのバローロが生まれます。
そんなバローロの中でブッシアという地形は独特で、そのちょうど中間地点に位置します。そのため、ここで造られるワインはエレガンスとリッチさを兼ね備えたバランスの良いワインとなるのです。
ワイナリーを引き継いだペッペ・コッラ氏は、もともとブッシアのブドウを取り扱っていたため、このような地形を理解したうえで美味しいブドウが取れることを知っていました。
あるとき、ペッペ・コッラ氏は、有名なワインジャーナリストであるルイージ・ヴェロネッリ氏に誘われてブルゴーニュを訪問したそうです。「ルイージ・ヴェロネッリ氏はジャーナリストなので、ブルゴーニュでは単一畑で素晴らしいワインが造られていることを知っていて、それを彼に教えなきゃ!と思ったんだ。」とエマニュエル氏。
このブルゴーニュ訪問が追い風となり「この狭いエリアのテロワールを生かしてワインを造りたい!」と、単一畑でのワイン造りを決意します。
そうして造られた「バローロ・ブッシア」はこれまでのバローロとは一線を画すほどの上質な出来で、バローロ全体の品質向上にもつながる革新的な出来事となりました。以後、バローロにとどまらずピエモンテ全体で「単一畑」の考えが広まり、今やピエモンテでは単一畑は「文化」とまでなったのです。
「伝統派とは言われたくない!」
今回のインタビューで最も印象的だったのは100年以上もの歴史を誇るワイナリーの哲学について。
「プルノットは『伝統派』とは言われたくない、自分の中では『古典派』だ」とエマニュエル氏は語ります。
「伝統派というのは燃え上がる火を見つめ続けるだけで、灰になったものにありがたやぁと祈ること。一方、古典派というのは過去に固執するというわけではなく、過去を継承して物事を見つめながら進むということなんだ。
昔はご飯を作るとなると、薪を炊いて火を起こしていた。今もレシピや原料は変わらないが、電気やガスが発展し短い時間でより美味しく作れるようになったということは革新的な部分だと考える。
プルノットのワイン造りにおいても同じで、ネッビオーロやバルベラを使って、エレガンスやフィネスのあるワインを造るという基本的なスタイルは変わってないが、機械化することによって良くなることは取り入れてきた。これが私の『古典派』という考え方だ」。と語気を強めて語りました。
伝統的なスタイルを守りながら、革新的な技術は取り入れていくという考えがプルノットの哲学であると言います。過去に捉われることなく、良いと思ったことは率先して取り入れてきたことが今のワイナリーのスタイルを生み出したのです。
そんな哲学を貫きながら、100年以上の歴史あるワイナリーがいつの時代も目指してきたのは、ブドウのピュアな味わいが感じられる“楽しく飲みやすいワイン”。これはテロワールを表現した結果、エレガントでフィネスのあるワインをプルノットのスタイルとして確立したと語ります。
近年、世界のワインのトレンドはエレガントな味わい。奇しくもプルノットが長年貫いてきたスタイルと重なったのです。
和食とのペアリング
エレガントなプルノットのワインはその飲みやすさゆえ、様々な料理に寄り添います。「王のワイン」とも呼ばれるバローロの重厚なイメージを覆すほどにプルノットのバローロは優美で上品、まるでブルゴーニュのワインのような味わいです。
そんな楽しく飲みやすいプルノットのワインは繊細な味わいの和食とも好相性なのでは?食の宝庫ピエモンテを生活の拠点に置く、食通のエマニュエル氏にプルノットのワインと和食のペアリングについて伺いました。
バローロには焼き鳥や照り焼きがぴったりだよ。焼肉は濃い味のタレでなければ合うと思うね!」と次々に例を挙げ、楽しそうに答えてくれました。
まとめ
今回の来日で割烹料理屋を訪れたというエマニュエル氏。「カウンター越しで、鮮度が良いものをその場で調理して提供するということに感動した!割烹料理は日本の素材の良さを体感できる、本当にすごいこと!」と興奮気味に話してくれました。
“素材を生かした造り”という点がプルノットのテロワールにこだわる哲学とリンク。そんな点も割烹料理に感動した理由の一つなのかもしれません。
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