フェアトレードとは、立場の弱い途上国の生産者や労働者の暮らしを向上させるために、原材料や製品を適正価格で取引する活動。コーヒーやコットンでの取り組みが有名ですが、実はワイン産業でも取り組まれています。
今回はそんなワイン産業におけるフェアトレードについてのお話です。
フェアトレードの意義
先進国では途上国で生産された製品が安価で流通していますが、その背景では、途上国の労働者に正当な対価が支払われなかったり、生産性を上げるために環境破壊が起こったりしています。
そういった問題を解決するためには、生産者の労働環境や生活水準を改善し、自然環境にも配慮した持続可能(サスティナブル)なサイクルを作っていくことが重要と考えられています。フェアトレードはその一環で、途上国の労働者がより良い暮らしを目指すために、立場の強い先進国が正当な値段で製品を売り買いする活動です。
つまりフェアトレードとは、サスティナブルという大きな枠組みの中のひとつで、途上国の児童労働の問題などを解決するための人にフォーカスした取り組みです。
ワイン産業の場合
ワイン産業の場合、主要な産地でフェアトレードが行われているのは、南アフリカやチリなどです。
特に南アフリカワインは、フェアトレードへの関心が高いイギリスが主要なマーケットということもあり、多くのワイナリーが取り組んでいます。一方チリでは、チリワインの歴史を語る上で欠かせない存在のミゲル・トーレスが、この分野においても牽引しています。
ワイン好きなら、チリや南アフリカと聞くとコスパの良いワイン産地だと連想しますよね。これらの国のワインが安い理由は、EPA(南アフリカはEUと締結している)の影響も大きいですが、土地や人件費、ブドウの取引価格などが安いということもあります。
1970年代以降、そうした低いコストでのワイン生産を求めて世界の大企業が各国へ進出しました。しかしサスティナビリティへの関心が高まる近年、先進国企業が途上国の高品質な原料を低価格で得ることに疑問を感じているワインメーカーや消費者が多くなっています。
昨年8か国9,200名を対象に行われた調査では、フェアトレード認証ワインを認識している消費者の39%がフェアトレードマークがついたワインを求めているという結果になりました。さらにイギリスでは、消費者の9割がフェアトレードマークを知っていたそうです。
何に対してお金を払うのか、商品の裏側にある背景やストーリーまで消費者が選ぶ時代がやってきているのです。
チリワインの場合
コスパの良いワイン産地として日本でも人気のチリでは、スペインのワインメーカー「トーレス」が経営するミゲル・トーレスがチリ最大のフェアトレード生産者として活動しています。
1960年代、外資企業として最も早くチリに進出したミゲル・トーレスは、当時未熟だったチリのワイン産業にいち早く最新技術を導入し広めた近代化の立役者でもあります。
そんな彼らは、2010年にチリ地震で苦しむチリの人々を救済するためフェアトレードを始め、認証を取得しました。
FAIR FOR LIFEマーク(※最新ヴィンテージからマークが変更になっています)
ミゲル・トーレスの取得しているフェアトレード認証FAIR FOR LIFE は、以下の3つを基本原理とした包括的なフェアトレード認証です。
① 人権とフェアな労働条件の尊重
② 環境と生物多様性・持続可能な農業の尊重
③ 地域への貢献の尊重
このためミゲル・トーレスは、単にブドウ農家にマーケットよりも高い買値を保障しているフェアトレードだけに留まらず、彼らのビジネスに関わる全てをサスティナブルにする取り組みも行っています。
例えば、労働者への公正な給与の支払いや、児童労働を減らすために労働者の子供達への保育施設提供、ドラッグ・アルコール中毒撲滅プロジェクトなど。もちろんワイン生産においても自然環境を守るため、殺虫剤、除草剤などは不使用。パッケージングでは、軽量ボトルや再生紙を使用しています。
これらは全て、人も地球も「持続可能」にするための取り組みです。
持続可能ということ
ワイン産業は農業的な側面があるため、年々ブドウの成長サイクルが早くなり霜害が深刻化するなど、地球温暖化の影響をダイレクトに感じることが多い業界。生産者や消費者の関心はますます高まっています。
持続可能(サスティナブル)と聞くと、なんだか難しくてイメージしづらいですが、シンプルに考えると、100年後に子供たちが同じ生活を出来るのか?という問いに置き換えられます。
今、私たちは未来に対する責任を問われているのです。
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