仲良し姉妹シャトー「テューレイ」が語る、ハートのラベルに込められたワイン造りの情熱

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公開日 : 2020.3.6
更新日 : 2023.7.12
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ハートのバッチを付けたマリー・クルセル女史

「ワイン造りは男の仕事」。一昔前では当たり前でしたが、時代の変化によって現在では女性醸造家も増加してきました。

ボルドーに構えるシャトー・テューレイもその一つ。仲良し姉妹が手掛けるハートの可愛らしいラベルが印象的なシャトーです。

そんなシャトー・テューレイからマリー・クルセル女史がバレンタインに合わせて来日。姉妹で取り組むワイン造りについてお話を伺いました。

目次

「二人でワインを造りたい」

(左から)妹のシルヴィ―女史、姉のマリー女史

シャトー・テューレイの始まりは1950年。マリー女史の祖父にあたるアンドレ・クルセル氏がシャトーを購入し、家族経営によるワイン造りが始まりました。

1972年にはマリー女史の父・フランシス・クルセル氏に経営が引き継がれ、若いころからブドウ栽培について学んでいた彼の手によってブドウ畑は大幅に拡張。シャトーの発展に大きく貢献しました。

順風満帆に見えたシャトー・テューレイの歩み。しかし、一つだけ気がかりな点がありました。それは「息子が生まれなかった」こと。

フランシス氏がシャトーを継承した後に長女マリー、その2年後に次女シルヴィ―が誕生しましたが、自身の後継者と考えていた男の子には恵まれませんでした。

そんな父の考えとは裏腹に、二人娘はごく自然な流れでワイン造りに想いを寄せていきます。

「ワインビジネス以外の仕事をするイメージが沸かなかった」。

そうマリー女史が当時を振り返るように、幼い頃から当たり前のように関わってきたワインの世界。それはいつしか「二人でワイン造りがしたい」という姉妹の夢へと変わっていったのです。

仲良し姉妹が手掛けるハートのワイン

フランスでブドウ作りの基本的なことを学んだのち、オーストラリアやカリフォルニアなどで醸造の経験を積んだ二人は2004年、ついにシャトーを継承。

「二人で分業していますが、どちらかができないことは補い合っています。そうやって仕事ができているのはとても良いこと」と語るように、姉のマリー女史はブドウ栽培やワイン造りを、妹のシルヴィ―女史はセールスやプロモーションを担当しています。

2015年からはシャトー・テューレイのラベルを新調。ハートのモチーフで、ラベルには「Made with love!」の文字が書かれています。

「情熱をもってワインを造っていること、この仕事が大好きなこと、姉妹がお互い大好きで仲良く愛を持ってワイン造りをしていること、そういった二人の情熱を表現したラベルです」とマリー女史。「そしてなにより可愛らしいでしょ!」と、チャーミングに話しました。

二人は幼い頃から仲が良かったそうですが、ともに仕事をするようになりワイン造りの情熱を共有するようになったことで、より仲が深まっていったと言います。

できるだけ品質の高いブドウを

ボルドーワインと言えば誰しも赤ワインを想像しがちですが、シャトー・テューレイは白ワインにも力を入れています。所有するブドウ畑の50%が白ブドウというボルドーでも珍しいシャトーです。

その理由はシャトーが位置するアントル・ドゥ・メールという土地にあります。「赤ワインはどんな地でも造れますが、美味しい白ワインを造るためには特定の条件が必要で、造られる場所が限られます。アントル・ドゥ・メールは素晴らしい白ブドウができる条件が揃っているので、白ワインにこだわりをもって造っています」とマリー女史。

さらに「品質の高いブドウを作ることが私の仕事」と語り、化学薬品や農薬をなるべく使わないなど、綺麗なブドウ作りを心掛け、複雑味のあるエレガントなワインに仕立てています。

このようにアントル・ドゥ・メールの地のテロワールを表現するため、マリー女史はブドウへ惜しみない愛情を注いでいるのです。

また、エレガントなワインにこだわるのには、もう一つ理由があります。それは、料理好きの一面を持つマリー女史が料理とのペアリングのしやすさを重要視しているからです。どんな料理と合わせるかをいつもイメージしながらワインを造っていると言います。

来日の際に食べた日本食にも興味津々だったそうで、ワイン造りだけではなく料理への探求心も垣間見えました。

チャレンジングな姿勢で

仲良し姉妹とはいえ、とても厳しく、働き者だったという父からワイン造りを引き継ぐことは一筋縄ではいかなかったはず。

終始笑顔で受け答えしていたマリー女史が唯一険しい表情に変わったのも「男性社会でのワイン造り」についての問いかけからでした。

「15人で働いていますが、私と妹以外は全員男性なので、男性へのマネジメントは難しいなと感じることもあります。また、ワインを飲んでくださるお客様にも“女性だから”と思われないように、真剣に取り組んでいることをお客様に伝えていきたいですし、そうやって信頼されていくことも大事だと思っています」と語気を強めました。

チャレンジングな姿勢を持っていた父からその想いも継承した二人は、常に新たな挑戦を続けているのです。

まとめ

インタビュー中印象的だったのはにこやかな表情と時折見せる力強い眼差し。言葉の節々からも姉妹二人でシャトーを守っていく覚悟とさらなる挑戦心を感じました。

“ハートのラベルのワイン”というイメージが強いシャトー・テューレイは、そんな可愛らしいラベルとは対照的な女性の強さが秘められたワインなのです。

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