高騰が続くブルゴーニュの中で、いかにお買得で現実的な価格のワインを見つけ出すかというのは、愛好家の目下の関心事。そんなお宝さがしの会場となるのは、シャブリやマコン、そして今回ご紹介するコート・ド・ボーヌなどではないしょうか。
今回は、知る人ぞ知るコート・ド・ボーヌの生産者、ドメーヌ・トロ・ボーの魅力をブルゴーニュ担当バイヤー堤に語ってもらいました。
【プロフィール】堤俊豪
資格:調理師免許、WSET Level3 Award Wines and Spirits
商品部所属、ブルゴーニュ購買担当。入社後7年間は、北京、上海、香港、台湾にてエノテカの国際事業に携わる。海外勤務をきっかけに、現地の食材を使った料理とワインと楽しむことが趣味に。週末はワインを楽しみながら、合わせる一品を作ることに試行錯誤しています。
妥協しないワイン造りが生み出すバリュー
―まずはトロ・ボーについて教えてください。
トロ・ボーは、19世紀後半から続いているショレイ・レ・ボーヌの老舗ドメーヌです。2代目がショレイ・レ・ボーヌ村の村長を務めていたこともあって、ドメーヌがある通りはアレクサンドル・トロ通りと名付けられているくらいの名家なんです。
ショレイ・レ・ボーヌ村というと、ジュヴレ・シャンベルタン村などに比べるとどうしてもマイナーな村でして、多くの農家はブドウやワインを自分達で元詰めせず、ネゴシアンに販売したきた歴史がありますが、そんな中でトロ・ボーはワンランク上のワインを造っていて、名実ともにショレイ・レ・ボーヌの看板を背負っているドメーヌです。
―トロ・ボーとエノテカの出会いは?
私はその当時エノテカに在籍していなかったのですが、2000年頃と聞いています。当時、エノテカとしてブルゴーニュの取り扱いを強化したいという思いがあり、それにあたって大きなネゴシアンと取引して多くのエリアを一手にカバーするのではなく、各エリアの中からベストな造り手を選びアプローチを行っていました。
そこでショレイ・レ・ボーヌの名家であり、素晴らしいワインを生み出していたトロ・ボーにアプローチしたと聞いています。普通こういった商談って難航したりするんですが、当時から対応を行ってくれたのが女性当主のナタリーさんで、とても人当たりが良く、気さくな方なので交渉もスムーズに進んだそうです
―ショレイ・レ・ボーヌってブルゴーニュの中ではメジャーな産地ではないと思いますが、なぜ買い付けているのですか?
ベーシックなワインの品質と価格のバランスが良いと感じているからです。実際に大阪のあるレストランさんは、そのバランスが素晴らしいということで、ショレイ・レ・ボーヌはあるだけ買うと言ってくれているほどなんですよ!
また、トロ・ボーはコルトンなどの特級畑も所有していて、素晴らしいワインを造っているんですが、まずベーシックなワインの品質が高くて信頼がおけます。
私は料理が好きでレストランで食事するのも好きなんですが、例えば、前菜から美味しいレストランは非常にワクワクするんですよね。次になにが来るんだろうという期待が湧きますし、小さなアペタイザーにさえ手を抜かないということが伝わってくるからです。
それがトロ・ボーでいうと村名格のショレイ・レ・ボーヌだったり、アロース・コルトンだったりしますが、そういったところにも非常に魅力を感じているからです。
―ショレイ・レ・ボーヌとアロース・コルトンどちらがおすすめでしょうか?
直近のヴィンテージならショレイ・レ・ボーヌを頼みます。5年-10年熟成したものがあるのならアロース・コルトンです。
―で、どっちですか?(笑)
1つ選べと言われると困るけど…。ショレイ・レ・ボーヌですかね(笑)
ソムリエに人気のショレイ・レ・ボーヌ
―ショレイ・レ・ボーヌって村のイメージがありませんけど、どんなキャラクターで何が魅力なんですか?
ショレイ・レ・ボーヌ村といっても一概には言えないのですが、平地部分の畑が多くて、粘土質土壌が多いのが特徴です。粘土質が多いということは、フルーティで凝縮感があるワインができやすいのですが、比較的タンニンは優しめで親しみやすさが出るんです。
だからショレイ・レ・ボーヌは肩肘張らずに、気軽に料理一品作って、気心知れた仲間と飲むのにすごく良い。開けたてからすぐに飲める柔らかさもありますし、アロース・コルトンを熟成させたいと思うのと逆ですよね。少し置いて空気に触れさせたいな、ではなくて、レストランでグラスで食事と一緒に楽しみたいなと思えるワインです。
当主のナタリーさんの人柄そのもので、常に人当たりの良いご近所さんのお姉さんですよね。分かりやすさがあって、バイ・ザ・グラスでも魅力が伝わるからソムリエにもファンが多いんです。
―他のブルゴーニュワインと比較するとどうでしょう?
コート・ド・ニュイのワインと比べると手頃な価格で買えて、比較的すぐ楽しめる1本なので、しみじみとブルゴーニュの魅力を教えてくれる造り手だなと感じています。
―調理師免許も持つ堤バイヤー的にコレ!っていう料理との組み合わせがあれば教えてください。
色々あるんですけど、ベーシックなところですが、鴨はすごくいいですね。すこし血が残るくらいレアな感じで、それとあわせるともう…。
ーもうちょっと気軽な料理にしていただけませんか?(笑)
すみません(笑)
日常で手に入るものでいくと、地鶏がいいと思います。ジューシーなモモ肉をぶつ切りにしたものを塩コショウと美味しいオイルをかけて焼くだけで大丈夫。もちろん柑橘系をかけてもいいですけど、ショレイだったらシンプルなお肉のほうが合います。皮のない淡泊な部分にもすごく合うので、ぜひ一緒に楽しんでみてください。
とにかくいつ飲んでも美味しいトロ・ボーの柔らかな果実味を楽しんでもらいたいという堤バイヤー。今日、飲むためのブルゴーニュとして、トロ・ボーの魅力を語ってくれました。
グラン・クリュの偉大なワインも良いですが、熟成させずに飲むのは少し勿体ない。そんな時はトロ・ボーのショレイ・レ・ボーヌの出番かもしれません。
堤バイヤー、ありがとうございました!
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