知る人ぞ知る!近年注目を集めるクロアチアワイン

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公開日 : 2020.4.17
更新日 : 2022.5.23
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クロアチア 風景

紀元前から続くワイン造りの歴史を持つクロアチア。残念ながら日本人にとってはなじみの薄い東欧の国の一つではないでしょうか?

しかし、近年クロアチアは新しいワイン産地として、特にヨーロッパで注目を集めています。1990年代まで民族抗争が続いた困難な歴史を持つクロアチアでは今、どんなワインが造られているのでしょうか?詳しく紹介致します。

目次

クロアチアってどんなところ?

クロアチア 地図

東ヨーロッパ、バルカン半島に位置するクロアチア共和国、通称クロアチアは西にスロヴェニア、北にハンガリー 、東にセルビアとボスニア・ヘルツェゴビナと国境を接しています。南はアドリア海に面し、対岸にはイタリアが位置しています。

1991年に、ユーゴスラビアからスロヴェニアと共に独立しましたが、1995年まではセルビア人との抗争が続き、今でも国土の一部がボスニア・ヘルツェゴビナに分断されています。EUには2013年に加盟しました。

クロアチアの国土は、首都ザグレブを中心とする中央クロアチア地方、ハンガリー平原に続くなだらかな低地のスラヴォニア地方、スロヴェニアの一部を含むイストラ半島の大部分を占めるイストラ地方、そしてアドリア海を挟んでイタリアと向かい合うダルマチア地方の四つに分けられます。

アドリア海に面する海岸線は1777.3kmと長く、1,246の島々とその他の小島が4,058kmにも及ぶ海岸線を取り巻いていて、これは地中海で最も入り組んだ海岸線です。

自然豊かなクロアチアは国土のおよそ50%が森林または低木林で覆われ、約40%が様々な農業の用地となっています。444もの自然保護区があり、ヨーロッパで最も豊かな生物多様性を有する国の一つです。

クロアチアの気候は、ダルマチア沿岸部とスロヴェニア国境近くのイストラはイタリアとほぼ同じ緯度にあるため、温暖な地中海性気候。一方、北にアルプス、北東にパンノニア平原の西端を持つ内陸部は、寒暖差が激しく、夏は暑く冬は寒さの厳しい大陸性気候となっています。

クロアチアのワイン産地は、長らくアドリア海沿岸部と首都ザグレブから東側に広がる内陸部に二分されてきましたが、2013年のEU加盟に伴い、「大陸東部」「大陸西部」「沿岸部」の三つのリージョンへの区分けが導入されました。これらのリージョンはさらに12のサブリージョンに分けられています。

クロアチアのワイン造りの歴史

クロアチア 風景

古代ギリシャ人が入植した紀元前5世紀頃にヴィス島で使用されていたコインにはブドウとアンフォラが描かれています。そのため、クロアチアのブドウ栽培の歴史は少なくとも2500年以上の歴史があると言われています。

中世にはワインの生産は拡大し、積極的に輸出されるようになりました。しかし、15世紀にオスマントルコが南東欧に上陸し、司祭や修道士は例外としてワイン生産が許されていましたが、厳しい禁酒法が課されます。

18世紀にはハプスブルグ帝国の支配下に入り、オーストリアやドイツ系ブドウ品種のワインが主流となります。その後、ヨーロッパでフィロキセラが発生した1874年からしばらくクロアチアはフィロキセラの影響を受けなかったため、ワインの輸出が急速に拡大しますが、20世紀にはクロアチアにもフィロキセラが侵入し大きな被害を受けました。

1945年、ユーゴスラビア共産主義体制になるとワイン造りは協同組合が中心となり、品質よりも数量が重視されるようになります。さらに、1990年代初頭からはクロアチア紛争により、多くのワイナリーやブドウ畑が損害を受けました。

こういった様々なネガティブな要素が重なり、ワイン生産者の多くが国を離れ、ワイン生産量は激減します。

しかし、1995年、イストラでワイン生産者による協会が発足。翌年にはブドウ栽培とワイン醸造学の研究所が設立され、ワイン産業の復活をめざす動きが見られるようになりました。

クロアチアで造られるワイン

ワイングラス

クロアチアでは土着品種を中心にワイン造りが行われています。現存する土着品種は130種ほどありますが、実際に使われているのは30種ほど。

主に沿岸部では赤ワインが、大陸部では白ワインが生産量の多くを占めており、国全体のワイン生産量の7割が白ワインとなります。主なブドウ品種から造られるワインを紹介します。

プラヴァッツ・マリ

クロアチアにおけるワイン生産のルーツともいえるダルマチア地方南部で主に栽培されている黒ブドウがプラヴァッツ・マリです。マリとは「小さな」という意味で、砂地土壌でよく育つ品種です。

伝統的にフヴァル島で栽培されてきましたが、最近はブラーチュ島やヴィス島でも栽培されるようになりました。

2001年のDNA鑑定によりプラヴァッツ・マリは、カリフォルニアで人気のジンファンデルやイタリアのプリミティーボのルーツと言われるクロアチアの古代品種トリビドラゲと、同じくクロアチアの古代品種ドブリチチとの自然交配で生まれたことが分かりました。

クロアチアではプラヴァッツ・マリは栽培地域により二つの異なる性格を持ちます。

南斜面の畑で太陽の光を十分に浴びたプラヴァッツ・マリからはフルボディで力強く、国際的な市場でも勝負できる長期熟成可能なワインが出来上がります。一方、内陸部の高地や南ダルマチアの奥地で造られるプラヴァッツ・マリはライトでフルーティな味わいとなり、全く別の品種に思えるほど異なる個性を持つワインとなります。

グラシェヴィナ

クロアチアで最大栽培面積を誇るのが、白ブドウのグラシェヴィナです。大陸東部にあるクロアチア最大のワイン生産地、スラヴォニア地方を代表する品種です。オーストリアではヴェルシュ・リースリングと呼ばれて栽培されていますが、起源はクロアチアと言われています。

グラシェヴィナから造られるワインはリンゴのような果実のアロマに加え、アーモンドやカモミール、緑茶のような香りも併せ持ち、キリッとした酸味とエレガントな味わいが特徴となります。

ワインの樽の産地

ワインの樽

クロアチアのスラヴォニア地方はワインだけでなくワインの樽の産地でもあります。しかしながら、日本ではワインのプロでも名前がよく似たクロアチアの隣国スロヴェニアとクロアチア内陸部のスラヴォニア地方を混同し誤解している人が多いようです。

クロアチアのスラヴォニア地方はワイン樽のオークの産地として有名で、スラヴォニアオークの樽はクロアチアでももちろん使用されていますが、主な輸出先はイタリア。イタリアの長期熟成赤ワイン、熟成させる大樽はスラヴォニア産が多く使用されています。

バローロやブルネッロ・ディ・モンタルチーノの熟成にはスラヴォニアオークの樽が欠かせません!

まとめ

クロアチアでは古くからワインが造られてきましたが、そのほとんどが商業用ではなく、自家消費用として楽しむためのものでした。それは今も変わらず、クロアチアのブドウ畑の約半分はワインを売るためのライセンスを持っていないそうです。

そんなクロアチアのワインは、土地の風土や個性を反映したワイン造りが見直されるようになってきた昨今、少しずつ注目され国際的にも評価されるようになってきました。

なお、クロアチアでは地元のデイリーな赤ワインを水で割ったり、白ワインを炭酸水で割ったりして飲むのも人気があるのだとか。ワイン好きには邪道と思ってしまうかもしれませんが、一度試してみたいですね。

参考文献 ・日本ソムリエ協会 教本 2020

クロアチアのワイン一覧はこちら

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