長い歴史を誇る大阪をはじめ、近畿地方で造られるワイン

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公開日 : 2020.4.24
更新日 : 2022.5.23
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大阪 風景

日本ワインの産地と言えば山梨、長野、北海道など、自然豊かな地方都市をイメージすると思いますが、実は大都会の大阪でもワインが造られています。

大阪のワイン造りは日本でも有数の長い歴史を持ち、ブドウ栽培面積も一時は山梨県を凌ぐほどでした。しかし、残念ながら現在、日本ワインの産地として大阪はそれほど有名ではありません。

そこで、今回は大阪を中心に近畿地方で造られているワインについて、ワイン造りの歴史とともに紹介致します。

目次

近畿地方でのワイン造りの概要

大阪 ワイン産地

近畿地方では現在、奈良県を除く2府3県でワインが造られています。ワイナリー数は大阪府が8軒と最も多く、続いて兵庫県に4件、京都府と滋賀県に2軒ずつ、和歌山県に1軒となっています。

国税局のデータによると日本ワインの生産量も大阪府が近畿地方で最も多く170kl、750ml換算で約23万本。しかしながら、日本全体の生産量からみるとわずか1%ほどに過ぎません(注1)。

大阪府は近畿地方はもとより、全国的にみても非常にユニークなワイン産地と言えます。

ご存知の通り、大阪府は近畿地方の経済・交通の中心であり、都道府県としては東京都、神奈川県に次いで全国3位の人口規模を持ち、人口密度は東京に注いで2位です(注2)。そんな大都会で本格的なワイン造りが行われているなんて驚きませんか?

大阪府の主なブドウ園は府の東側、奈良県と大阪府を隔てる金剛山地と、和歌山県と隔てる和泉山地の一部の麓の斜面にあります。栽培されているブドウ品種はデラウェアが最も多く山梨県、山形県に次ぎ全国で3位。その他にマスカット・ベーリーAやメルロ、ナイアガラと続きます。

その他の県においては、兵庫県には第3セクターのワイナリーがあり、平成初期のピーク時には、欧州系ブドウ品種を中心に栽培する自社管理畑の広さが100haを超え年間生産量も90万本を超えていましたが、その後は激減しました。

京都府には京都市街から30km以上離れた京丹羽町と丹後半島にそれぞれ1軒、滋賀県には東近江市に濾過をしない濁りワイン専門のワイナリーや、栗東市に日本酒メーカーが運営するワイナリーがあります。

(注1)国税局課税部酒税課 平成30年度調査分による(注2)平成27年度 国勢調査による

大阪のワイン造りの歴史

大阪 風景

大阪府は、実は日本でも有数のワイン造りの長い歴史をもちます。商業ベースではないものの、すでに安土桃山時代には栽培したブドウからブドウ酒らしき酒が造られていたという記録が残っています。また、江戸時代にも農家の軒先でブドウが栽培されブドウ酒が名産だったという記録があります。

大阪では、明治11年(1878年)ごろ当時の大阪府指導園から堅下村(現在の中河内地方の柏原市)に甲州ブドウの苗が移植されたのをきっかけに甲州ブドウの栽培が盛んになりました。明治、大正期には中河内、南河内地域に広がり、現在にわたって栽培されています。

本格的なワイン造りは大正時代に始まりました。果樹園が規格外のブドウを活用するために1914年にワイナリーが立ち上げたのがきっかけです。その頃にはデラウェアも導入され、栽培面積を増やしていきます。そして、1935年の最盛期にはブドウ畑の面積は800haを超え山梨県を凌ぐほどで、ワイナリー数も119軒を数えました。1928年から10年間においては、大阪府は山梨県、岡山県にも勝る日本一の栽培面積を擁するブドウ産地だったのです。

しかしながら、戦後、1959年の伊勢湾台風、1961年の第2室戸台風の際にブドウ畑が大きな被害を受けてからは、急速な宅地化や他のブドウ産地の台頭の煽りを受け、ブドウ栽培面積及びワイナリー数は急激に減少します。

1988年には大阪市内の酒販店が地元大阪産のブドウでワインを造るワイナリーをスタートさせますが、2000年代まではワイナリー数は5軒のみでした。

その後、2004年以降の日本ワインブームの追い風にのり、日本ワインの販売に注力していた酒販店が2013年に大阪市の街中にワイナリーを設立。同ワイナリーは南河内地方で放棄されそうな畑を引き継ぐことで原料を自ら調達し、ワイン造りを始めました。現在、大阪府内の耕作放棄地を引き継ぐ動きは他のワイナリーにも広がっています。

近畿地方のワイン産地

近畿 地図

近畿地方の主な産地とワイナリーを紹介します。

大阪府

大阪ではブドウの作付面積のほとんどをデラウェアが占め、生産される日本ワインの約3分の1がデラウェアから造られています。

生食用、ワイン用も含めたブドウの主な産地は大阪北部に位置する能勢町と大阪東部に位置する北河内、中河内、南河内地方に点在しています。

中河内地方に位置する柏原市には西日本で現存する最古のワイナリー「カタシモワイナリー」があります。大正3年、創業者である高井作次郎が日本酒の製造技術を用いてワインの醸造を始めたのが始まりで、既に100年以上の歴史を持ちます。

カタシモワイナリーは、かつて日本一の生産量を誇るブドウ産地だった大阪の畑を後世に残すためにも、ワイナリーツアーやイベント等、様々な取り組みを積極的に行っており、地域に密着した事業を展開しています。

京都府

京都には天橋立ワインと丹波ワインの2軒のワイナリーがあり、それぞれの風土に合うブドウ品種から高品質なワインが生まれています。

京丹波町にある丹羽ワインは京都の食文化に合うワインを造ることをモットーに1979年に創業されました。丹波は昔から京都の優良食材を数多く産出する「食の宝庫」として知られる地域で、昼と夜の気温差が非常に大きく、ブドウ栽培に適した産地です。

丹羽ワインはジョージア産のサペラヴィといった珍しい品種のワインも製造していますが、欧州タイプのワインを目指すのではなく、京都・丹波のテロワールを生かし、食文化と相乗するワインを目指してワイン造りが行われています。その結果、早い時期から国内外のワインコンクールで高い評価を得ています。

「都市型ワイナリー」の先駆け

ワイン

2013年、大阪市街に島之内フジマル醸造所が設立されたことは、大阪のワイン造りが再び注目されるきっかけとなりました。今ではよく耳にする「都市型ワイナリー」の先駆けです。

「交通網が発達している都市部にワイナリーを作れば、ブドウや物資の輸送もしやすく、人も訪れやすい」という、消費地との距離の近さをメリットとする今までにない発想で作られたワイナリーは、当初世界中から注目を集めました。

また、島之内フジマル醸造所が柏原市で管理する自社畑では農薬、化学肥料の使用を抑え栽培し、基本的には酵母添加はゼロ、酸化防止剤の添加もゼロもしくは微量に抑えたナチュラルな醸造を実践しています。そんな地元産ブドウで造ったワインをより身近に感じてもらいたいとワイナリーにはワイン食堂も併設し、食事と共に出来立てのワインを楽しめるスタイルで人気を博しています。

なお、島之内フジマル醸造所が設立された2013年には、100年以上続くブドウ栽培とワイン造りの歴史を伝え、「大阪ワイン」ブランドを全国に発信して認知度を上げるとともに、ブドウ生産者である農家を支援すること主旨として大阪ワイナリー協会が設立されました。

まとめ

現在、近畿地方はワイナリー数は多くはないものの、老舗ワイナリーが新しいブドウ品種の栽培にチャレンジするなどして、個性的で興味深いワインが数多く造られています。

いずれのワイナリーも他のワイン産地に比べて都市部から比較的近いですし、ワインイベントも頻繁に開催されていますので、ワイナリーに足を運んでみるのも楽しいですよ。

参考文献 ・日本ソムリエ協会 教本 2020

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