2018年5月19日ワインショップ・エノテカ成城学園前店で行われた、アルザスの名門ワイナリー「トリンバック」のテイスティングイベントをレポートします。今回ゲストとして登場したのはトリンバックのセールスディレクター、ジャン・トリンバック氏。
トリンバック・セールスディレクター ジャン・トリンバック氏
トリンバックはアルザスのロマネ・コンティと言われる単一畑「クロ・サンテューヌ」を擁する、アルザス地方を代表する名門ドメーヌ。その実力はフランスの全ての3つ星レストランにオンリストされているほどです。
今回は2015年をはじめとした、各銘柄の最新ヴィンテージをお披露目して頂きました。
1杯目から感動
イベントは、ウェルカムドリンクとして 2015年リースリング・レゼルヴが配られてスタート。2015年はフランス全土で当たり年となりましたが、アルザスもそれに漏れず、温暖で乾燥した気候で凝縮した果実が得られたそうです。
2015年リースリング・レゼルヴは、熟度の高いシトラスに、ほのかなケロシンの香りが複雑さを与えています。味わいは既に開いていて、アタックから果実味が広がりますが、中盤からはミネラル感が味わいを引き締め、長い余韻に繋がります。
「しっかりとしたボディはあるけれど、自然な酸も備えたヴィンテージで、このリースリング・レゼルヴでも5年~10年は熟成するポテンシャルがある」とのことでした。
通常ならこの価格帯の白ワインで10年?と思ってしまいますが、それもそのはず。なんとこのリースリング・レゼルヴには約10~15%のグラン・クリュ(キルシュベルグ・ド・リボヴィレ)のブドウが使われている贅沢な造りだったのです。
スタッフもジャンさんが語るまで知らなかった情報で、ソムリエから絶大な支持を得ているトリンバックのコストパフォーマンスの秘密を知ることが出来ました。
世界最高峰リースリングの共演
続いては今回のイベントのハイライト、世界最高峰のリースリング2銘柄の共演です。
まずは 2008年キュヴェ・フレデリック・エミール。 このワインは2008年ヴィンテージとちょうど10年前のヴィンテージですが、実は最新ヴィンテージです。飲み頃をまってからリリースするトリンバックでは、このように長期熟成を経てからリリースする銘柄もあるのです。
ちなみにこのヴィンテージの前にリリースしたのは2009年で生産年が前後していますが、2008年は強かったので後に回したそうです。そのため次にリリースされるヴィンテージは2010年。まるでプレステージ・シャンパーニュのようですね。
ブドウはグラン・クリュのガイスベルグとオステルベルグから50%ずつブレンド。隣り合うグラン・クリュのため土壌の組成は非常に似ていますが、オステルベルグはその名の通りオステル(東)向きでしっかりとした骨格、ガイスベルグは南向きでリッチになるそうです。
2008年リースリング キュヴェ・フレデリック・エミールは、アカシアの花やマンダリンに蜂蜜、トーストなどの甘く香ばしい魅力的な香り、まだまだミネラル感が強いですが、既に果実味も充分に感じられ複雑で長い余韻が感じられます。やや開き始めている印象で、記者が飲んだ中では過去最高のヴィンテージでした。
参加者からの質問に答えるジャンさん
一方クロ・サンテューヌはグラン・クリュの表記こそありませんが、ユナヴィール村のグラン・クリュ ロザケールにある1.67haの単一区画から造られています。非常に強い石灰質で構成されるその区画は南東向きの緩やかな斜面に広がっており、ブルゴーニュの最高峰モンラッシェに良く似ているそうです。
「なぜグラン・クリュであるロザケールの名前を名乗らないのか」という、素晴らしい質問が参加者からありましたが、答えはとてもシンプルなものでした。クロ・サンテューヌを造り始めたのは1919年で、1975年のアルザス・グラン・クリュ制定よりずっと前。そして制定されたころにはクロ・サンテューヌという名前の方が知られていて有名だったからだそうです。
2012年 クロ・サンテューヌ マグナム は凝縮したシトラス、白い花とヨードの香り、果実味はまだ閉じていて、石そのものの様な巨大なミネラル感が感じられます。「偉大さ」を体験できるワインと言えるでしょう。
ジャンさんは、クロ・サンテューヌは「最低でも20年」の熟成が可能で、ボルドーの赤ワイン以上に熟成するので子供のバースデーヴィンテージにオススメと語っていました。ボルドーの1級シャトーの価格を考えるとお買い得と言えるのかもしれません。
テイスティングワインの締めは、 2015年ゲヴュルツ・トラミネール と 2008年ピノ・グリ・ヴァンダンジュ・タルディブ の甘口ワイン2種類。
透明感のあるゲヴュルツ・トラミネールと、飛びきり複雑なアロマで心地よい酸味のあるピノ・グリ・ヴァンダンジュ・タルディブに参加者は至福の表情を浮かべていました。
トリンバックでは甘口ワイン造りにおいて、「バランス」をもっとも重視しているそうで、どちらも残糖度と酸味のバランスに優れ、甘いだけではなく飲み飽きない味わい。参加者のグラスの中もすぐに空になっていました。
まとめ
トリンバックのワインは日本人の味覚に合うスタイルだからでしょうか。今回のイベントはテイスティング参加者のワイン購入が非常に多く見受けられたのが印象的でした。
アルザスワインは日本人の味覚だけでなく和食とも相性が良いので、イベント終了後にジャンさんお勧めの和食とのペアリングを伺うと「お刺身×ピノ・グリ(辛口)」という意外な答えが返ってきました。
後日、記者も試してみましたが、油分の多い魚のお刺身とピノ・グリのオイリーさがマッチし、とろけるような味わい。定番のリースリングは酸が高過ぎるので、お刺身よりも天ぷらが合うとのことです。
ジャンさんにはコスパに優れ、和食とも相性の良いトリンバックの魅力をたっぷり教えていただきました。