近年品質が急上昇し、国内外で注目されているアルバリーニョのワイン。
アルバリーニョは日本から遠く離れたヨーロッパの西端が主な産地でありながら、我々日本人の嗜好に合い、和食とも相性が良いと言われています。そして、最近は日本での栽培も活発化しています。
そこで今回は、私たち日本人なら必ずおさえておきたいブドウ品種、アルバリーニョについて解説したいと思います。
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アルバリーニョとは
種類 | 白ブドウ |
主な産地 | スペイン・ガリシア地方、ポルトガル・ミーニョ地方 |
香り | 桃、青リンゴ、白い花 |
味わい | 果実味豊かな辛口、ミネラル感、溌剌とした酸味 |
アルバリーニョはイベリア半島の北西部を原産とする白ブドウで、スペインの白ワインを代表する高貴な品種と言われています。
果実は小粒で緑色をしており、房も小ぶり。果皮が厚いため多湿な環境でもウドンコ病などの病害に強い品種です。
アルバリーニョはスペインのガリシア地方やポルトガルのミーニョ地方の土着品種で、長年この地方でのみ栽培されてきましたが、近年は日本の新潟県や大分県でも栽培されるようになりました。
いずれの産地にも共通するのが海に近い場所であるということです。
アルバリーニョから造られるワインはこれまで酸が豊富でフレッシュなタイプが多かったのですが、近年は樽に由来する複雑で芳醇なワインも生産されるようになってきました。
“海のワイン”と呼ばれる理由
アルバリーニョから造られるワインは、産地が海の近くであることや、取り分け魚介との相性が良いことから、“海のワイン”と呼ばれています。
一般的にアルバリーニョのワインは、冷涼な海風によって育まれるフレッシュで溌剌とした酸味とミネラル感を持ち合わせます。
つまり、アルバリーニョのワインは海の影響を多分に受けた味わいなのです。
アルバリーニョの主な産地
アルバリーニョの主な産地は原産地であるスペインやポルトガルの大西洋沿岸です。詳しく紹介致します。
スペイン リアス・バイシャス
スペイン北西部のガリシア州に位置するリアス・バイシャスは「スペインで最も上質な白ワインの産地」と評価を受けているワイン産地です。リアスは「入り江」、バイシャスは「下部」や「南部」というガリシア語の意味から、具体的にはガリシア州の大西洋岸のリアス式海岸地域一帯を指します。
リアス・バイシャスは年間降水量が約1600mlとスペインの中では雨が多い湿潤な気候ですが、土壌が主に砂と花崗岩のため水捌けが良く、高い湿度の対策としてヨーロッパでは珍しい棚式栽培で長年ブドウを育ててきました。
アルバリーニョはこの地域で栽培されているブドウの約96%を占めており、複雑に入り組んだリアス式海岸の傾斜地やポルトガルとの国境を流れるミーニョ川沿いの険しい渓谷にブドウ畑が点在しています。
1980年頃から協同組合を中心に醸造技術が刷新されワインの品質が飛躍的に向上。結果、大西洋の影響に由来するミネラル感と溌剌とした酸、フローラルな香りと豊富な果実味をもったアルバリーニョのワインは、一躍スペイン産白ワインの代表となりました。
ちなみに、リアス・バイシャスはスペイン原産地呼称法の原産地呼称ワイン(D.O.)に1988年に認定されており、さらにアルバリーニョを100%使用して造られたワインのみが、エチケットに品種名の表示をすることが許可されています。
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ポルトガル ミーニョ地方
ポルトガル北西部に位置するミーニョ地方もまたアルバリーニョの産地です。ブドウ畑はスペインとの国境となるミーニョ川一帯に広がっています。
ミーニョ地方は別名「緑のワイン」と呼ばれるポルトガルを代表する白ワイン、ヴィーニョ・ヴェルデの産地であり、そのヴィーニョ・ヴェルデの原料となる品種の一つがアルバリーニョです。
原産地名称保護(D.O.P)ヴィーニョ・ヴェルデにある九つのサブリージョンはそれぞれ気候や降水量が異なるので造られるワインのタイプも異なります。
サブリージョンの一つで比較的大陸的な気候のモンサォン・イ・メルガッツで育つアルバリーニョからは、ボディがあり、熟成に耐えうることのできる白ワインが造られます。オーク樽で熟成させるものもあり、リアス・バイシャスで造られるアルバリーニョのワインより凝縮したコクのある味わいとなります。
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アルバリーニョと合う料理
アルバリーニョは海のワインと言われるだけあって、和洋問わず海の幸との相性は抜群です。
タコや帆立のカルパッチョや生牡蠣など生でいただく冷たい料理から、白身魚やエビのフリット、グリル、ワイン蒸しなど、しっかりと火入れした料理まで、魚介料理全般に合わせることができます。比較的シンプルな味付けの料理の方がよりワインと楽しめるでしょう。
また、アルバリーニョのワインの特徴である爽やかな酸味、ほのかに感じる塩味のようなミネラル感は上品な味付けの和食とも好相性です。アルバリーニョの産地であるポルトガルでは魚を塩焼きにして食べる文化があり、和食の代表である天ぷらもポルトガルから伝えられたと言われています。
ワインはそれが造られている土地で食されている食べ物とよく合いますから、和食とも相性が良いことがイメージできますね。
日本の家庭料理の定番である魚の塩焼きはもちろん、出汁を効かせた煮物、冷しゃぶサラダ等、さっぱりとした和食がよく合います。天ぷらなら塩をつけて食べるのがおすすめです。
日本で造られるアルバリーニョ
新潟市街地の南西部、角田浜、越前浜にある数件の生産者からなる新潟ワインコーストでは、現在アルバリーニョの栽培に力を入れています。
2005年、新潟ワインコーストのカーブドッチが越前浜の海岸砂丘の特性を活かしてアルバリーニョ栽培をスタートしました。ブドウ畑は水捌けの良い砂地土壌で、年間降水量も1,600〜1,800mmでリアス・バイシャスと同等程度。さらに、日本海の影響を受けるため、リアス・バイシャスのワイン同様、この地で造られるアルバリーニョからも溌剌とした酸と豊かなミネラルを備えたワインが生まれます。
以降、「新潟ワインコースト」に所属する近隣のワイナリーもアルバリーニョの栽培を開始しました。生産者らは越前浜一帯のテロワールがアルバリーニョの栽培に適すると考え、アルバリーニョから日本ワインらしさも兼ね備えたエレガントなワインを生産しています。
そしてもちろん、日本海の豊かな海の幸との素晴らしいペアリングは言うまでもありません。
まとめ
アルバリーニョのワインは和食に限らず、私たち日本人の家庭料理に合わせやすいため、今後ますます人気が上昇することが予想されます。日本での栽培もより盛んになるでしょう。
ヨーロッパの西端で栽培されてきたアルバリーニョが、遠く離れた日本でも花開き、そのワインが楽しまれていることを思うと改めてワインという飲み物のロマンを感じますね。
ジメジメと蒸し暑い梅雨時期にもピッタリのアルバリーニョのワイン、是非魚介料理と合わせてお楽しみ下さい。
参考文献 日本ソムリエ協会 教本 2020
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