ワインも料理も四季と共にあります。特に日本は季節がはっきりとしていますし、節句や歳時を大切にします。旬は特に大切にされています。日本料理の献立には「走り」「旬」「名残り」と旬を三つに分けて、それぞれの食材が盛り込まれます。これほどまでに旬を意識するのは世界でも日本はトップクラスでしょう。
そんな旬と合わせてワインを選ぶのは、ペアリング以前に、ワインをより楽しむ秘訣です。ワインの旬というと「飲み頃」になりますが、ここではワイン産地の特徴やイメージから季節感、つまり「旬のワイン」を掘り下げてみたいと思います。
土地に感じる季節感
皆さんもその土地から季節をイメージするのは容易なことでしょう。沖縄は言うまでもなく夏、京都といえば紅葉の秋、北海道といえば冬、春といえば桜の青森…。人それぞれかと思いますが、こんな考え方です。
フランスでいうと、ロワール地方は春のイメージです。夏はバカンスの地、南仏、秋は「黄金に染まる丘」ブルゴーニュ、冬は滋味深いローヌ。そして面白いことに、それぞれの旬食材がその季節を彩ります。
ロワールはアスパラガスやモリーユ茸、山羊乳チーズ。プロヴァンスは夏野菜、乳飲み仔牛。ブルゴーニュはキノコやルブロッションやエポワッスといった風味豊かなチーズ、ローヌはキノコや栗、ジビエが有名です。イタリアでも、トスカーナは初夏〜夏、ピエモンテは冬といえるように、それぞれの季節の郷土料理が有名です。
ワインの特徴やイメージから季節を想像することもできます。ロゼは日本では春。欧米、特にフランスは夏のイメージです。キリッと冷やして飲みたい爽快な白は夏。芳潤で深みのある白や赤は秋、凝縮感があり複雑なワインは冬といった具合です。
このように季節感でワインを考えると、その旬の食材やその季節に食べたい料理と自然とよくマッチします。ぜひワインの季節感を、意識してみてください。
今月のペアリング
初夏は魚介が豊富で旬を迎える魚が目白押しです。貝類も美味しい季節ですが、今回は魚に注目したいと思います。旬の魚というと、さわら、スズキ、イサキ、血鯛、カレイ、コチ、あいなめ、アナゴなどが挙げられます。こうみると、土っぽさのある魚が多いですね。
こういった魚には独特のミネラル感のあるリースリングがよく合います。リースリングというと冬の味覚、蟹とよく合うのですが、初夏の魚にはクリーンでクリスプな酸味が楽しめるタイプがよいです。
ヴィットマン リースリング・トロッケン 2018
クリーンな香りで、グラニースミスやゴールデンデリシャスの熟した果実がピュアに感じられ、スイカズラやライラックのフラワリーな芳香が立ちのぼります。コリアンダー、カモミールのアクセント、さらに砂岩や薫香が奥行きを作ります。緻密さ、ディテールのあるワインです。
味わいは活き活きとした口当たり、クリスプな酸味が弾けます。豊かな酸味とジューシーな果実味が心地よい調和を作り、余韻に塩味を伴います。
この商品はこちら
炙りさわらのマリネ
旬は冬といわれますが、この時期も脂の乗ったさわらが売り場には並びます。西京焼きが定番の魚ですが、この時期は爽やかなマリネに。
さわらもリースリングも柑橘とは相性がいいですし、アップルヴィネガーで仕上げるとさらによく合います。さわらの身質にリースリングの酸味とミネラル感がしみ入ります。また炙って香りの立ったところと薫香もよく合います。
同様のテイストで、鯵とクレソンのサラダやホタテとインゲンのサラダ カモミール風味の柑橘ドレッシングもよいですね。
白身魚 海藻蒸し
魚をシンプルにワカメとともに蒸し上げた料理です。イサキ、スズキ、血鯛などがよいですね。ワカメからの塩分と風味が染みこみ、旨味たっぷりにふんわりと仕上がった白身とこのラインヘッセンのリースリングを合わせると、口の中はいつまでもワカメの香りと魚の旨味が残ります。
コチやアイナメの唐揚げ、アナゴの天ぷらとも大変美味しそうです。