ペアリングにおいて重要なことは、その料理がどんな風味を特徴としているかを詳細に掴むことにあります。
魚介料理だから白ワインが必ず合うわけでもありませんし、鶏肉だからピノ・ノワールが必ず合うわけでもありません。
料理の特徴を詳細に掴むポイント
① 主食材
② 加熱法
③ 味付け
④ 付け合わせ
もちろん最も重要なのは①の主食材です。新鮮かつ良質な食材を使った料理というのは、その食材をいかに美味しく食べるかに主眼がおかれたものです。
つまりワインもその食材をいかに美味しくしてくれるか、というポイントで選ぶことになります。
しかし食材だけでワインを選ぶことはできません。いや可能ではありますが、よりよいペアリングにするには食材を、「どのように料理しているのか」が重要になるのです。
今回は②の加熱法によるペアリングの違いについてお話ししたいと思います。
加熱方法による違い
加熱は以下の通り、主たるものとして挙げられます。
・蒸す
・茹でる
・焼く
・煮る
・燻す
そして、「加熱しない」という料理、つまり生または半生もあります。
蒸す
和食や中国料理では蒸し物が多いですが、フランス料理などでは「ヌーベル・キュイジーヌ」と呼ばれる1970年代に起きた、食材の質感を重視し、軽く繊細なスタイルの料理という潮流の中で、取り入れられるようになった加熱法です。
食材風味が率直に出るやさしい加熱法です。ワインも当然、率直で、繊細なタイプが要されます。
茹でる
効果としては、蒸すに近いものがありますが、食材の脂分が抜けるのでワインもよりサラリとした口当たりのものが求められます。
焼く
焼き色がつくという風味がプラスされ、焼き方、器材によりヴァリエーションがある加熱法です。
・フライパンで焼く(ソテー)
・網で焼く(グリル)
・炭火で焼く(グリル)
・オーブンで焼く(ロースト)
・鍋で蒸し焼きにする(ココット、キャセロール)
ソテー
軽い焼き色、焼き加減、短めの加熱時間という特徴があります。バターやオリーブオイルなど油脂の存在も重要です。ワインはよく熟した果実味のなめらかな味わいのものがよいでしょう。
グリル
強い焼き色、時間をかけてじっくり焼く加熱法で、「焦げ」が重要な風味として加わります。ワインは凝縮感があり、がっしりとした骨格(酸味、アルコール、タンニン)のものが必要です。
炭火焼では、炭の香りも加わります。木樽の香りに加えて、土っぽさや木の葉のような深みのある風味のワインが相応しいです。
ロースト
焼き色がしっかりとつき、中身はしっとり仕上がる加熱法です。香味野菜と共にオーブンに入れられますので、その風味も加わります。ワインは風味の豊かさがありながら、ジューシーな味わいのものがよいです。
蒸し焼き
焼き色が付けられる場合と付けられない場合があります。野菜など共にワインやだし汁で蒸しながら加熱されることで、風味豊かで、やわらかな食感に仕上がります。ワインはロースト同様ですが、よりやわらかさのあるものがよく合います。
煮る
蒸し焼き同様に野菜やワイン・だし汁と共に長時間加熱されます。ハーブやスパイスが大抵の場合加わります。食材を味わうだけでなく、ソースというか、スープも味わう料理となります。ワインは、複雑性があり、味わいはソフトで、円熟したもの、つまり熟成感のある伝統的なスタイルのものが最適です。
燻す
文字通り、スモーキーな風味が特徴です。多くの場合、レアに仕上げられ、冷製料理となりますが、スモークした後(またはしながら)焼くという複合的な加熱というのもあります。ワインはそのままではありますが、やはりスモーキーな風味、木樽を使ったものとなります。
加熱法によるペアリング例
例えば、鶏肉で加熱法によるペアリングワインの一例を挙げてみます。
加熱しない〜刺身やたたきなど
軽快なリースリング。ドイツやカナダ、ニュージーランド、タスマニアなど。オフドライ(甘みのある)のものがよいでしょう。
ソテー
中庸のヴォリュームのシャルドネ。マコン(フランス)、オーストラリアやカリフォルニアなどのノンオークやニュートラルオークといった木樽の風味が抑えられたタイプ。
グリル
ボディのしっかりとしたリースリング。アルザスやクレアヴァレー(オーストラリア)。キアンティ・クラシコ(イタリア)やアルゼンチン マルベック。
ロースト
ピノ・ノワール。ブルゴーニュ、オレゴンなど複雑性のあるもの。
蒸し焼き
ピノ・ノワール。ロースト同様で、加えてヴォリューム感のあるもの。グルナッシュ、シラー、カリニャン。ローヌやラングドックなど。
煮込み
熟成したリオハ、ブルネッロ、バルバレスコなど。
「今日はこれを開けよう」というワインに合わせて、加熱法を変えることでより美味しく楽しめますので、ぜひやってみてください。
今月のペアリング
非常に緻密で繊細な香りで、ブラックベリー、バラ、丁子やナツメグなどのスパイス、スモークミートとディテールに富んでいます。スムースでソフトな口当たり、ふんわりとエアリーな広がりが心地よく、中盤以降は際立った酸味がテンションをつくり、やさしくグリップする渋みはスパイシーさを伴い、口中をリフレッシュしてくれます。
穏やかでありながら、芳香性に優れ、優雅さのあるボルドー。銘柄はオー・メドックですが)マルゴーという産地の個性を彷彿とさせます。
燻製香があり、やわらかな味わいでありながら、酸味や渋みによる骨格もあり、スパイシー。炭火焼がぴったりです。リブロースやサーロイン、カジキマグロなどグリルが合う肉厚な魚ともよいでしょう。
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