人類にとって未曾有の年となった2020年、ボジョレーは史上2番目に早い8月20日に収穫が解禁されました。
それからはや1ヶ月が経ち、ひと段落したボジョレーワイン委員会から2020年のヴィンテージレポートと今年のボジョレー・ヌーヴォー選びのヒントが届いたので皆様にお伝えします!
2020年は極端なヴィンテージ
ボジョレーワイン委員会によると2020年のボジョレーは、極めて早い成熟と乾燥をした極端なヴィンテージで、十分な成熟度とフレッシュさを兼ね備えたバランスの良い仕上がりになったそうです。委員会の報告を追って、1年間のブドウの生育を振り返ってみましょう。
2020年、日本は全国的に暖冬で雪不足となったことが記憶に新しいですが、フランスも同じく穏やかな冬だったようです。冬の暖かさのお陰でブドウは休眠から早く目覚め、萌芽は3月末にはスタートしました。
その後、4月~5月も日照量が多く気温が高い乾燥した日が続いたことで、ブドウは順調に成長し早い開花を迎えます。
6月前半は冷え込み雨が降りましたが、後半は暑く乾燥した日が続き、気候が大きく変わりました。
2020年の7月は、1940年以来3番目に乾燥した年になりました。ブドウの実が緑から黒へと色付いていく7月の時点で、乾燥による水分不足のためブドウの生育にばらつきが見られたようです。
続く8月も猛暑が続きましたが、一転し8月28日以降は気温が大きく下がりました。しかし収穫解禁日が8月20日でしたから、この涼しさの影響は少なそうですね。
降雨量は例年の平均を大きく下回り、不規則かつ局所的だったためブドウ畑によって状況が異なるそうです。
2020年は1年を通して温暖で乾燥した年だったと言えますが、水分不足のため区画によって成熟度にばらつきがあることが特徴だとボジョレーワイン委員会は述べています。
今年は古樹を狙え!
このように今年を振り返ってみると、年間を通して温暖な天候に恵まれていたので濃厚な味わいになりそうですが、ボジョレーワイン委員会の言う「ばらつき」が気になりますね。
普通に考えれば暖かく雨の少なかった年は、よく熟したブドウがなりそうなものです。しかし、それは「普通」の範囲で暖かく乾燥していた場合の話。
暑く乾いた天候が続き、ブドウが極度の水分不足に陥ると、命を優先して成長(成熟)することをストップして休眠状態のようになってしまいます。この成熟不良の状態になると、いくら良い天候が続いても十分な水分が確保できるまでブドウは熟しません。
ボジョレーワイン委員会の言う「ばらつき」は、ボジョレー地方の多彩なテロワールと2020年の降雨量の少なさから、この成熟不良によって畑ごとに成熟度の差があったということです。
そんな中、委員会のプレスリリースでは、土壌が深く保水力のある畑と地中深くまで根を張っている古樹が良い結果を出したとの報告がありました。
ワインのラベルを見てもブドウがどんな畑で育ったかはわかりませんが、古樹であれば「Vieille Vigne(ヴィエイユ・ヴィーニュ)」とラベルに記載されています。今年は狙い目かも知れません。
2020年の作柄は?
2020年の収穫は、量としては最近の平均からすると少なめという位置付けです。
一方、質の点から見ると、非常にバランスが取れた爽やかさのある仕上がり。
最初の段階で試飲したワインはすっきりして飲みやすく、爽やかさと確かな成熟度が感じられました。
※ボジョレーワイン委員会のプレスリリースから作柄について抜粋
猛暑となった2020年ですが、重すぎずバランスの良いボジョレーが多いのでしょうか。果たしてどんな味わいなのか、今から楽しみですね。
また、7月に成熟不良の起こった畑でも解禁後すぐには収穫せず、ブドウがしっかり熟すまで待った生産者も多いので造り手によっても味わいが異なりそうです。
色々なボジョレーを比べて、「ばらつき」を楽しむのも面白いヴィンテージかもしれません。
ボジョレー・ヌーヴォーについて