毎年11月の第3木曜日に解禁するボジョレー・ヌーヴォー。今年の解禁日は2024年11月21日(木)です。
毎年ボジョレー・ヌーヴォーのキャッチコピーが話題になることがありますが、これにはちょっとした秘密があります。
今回はこのキャッチコピーについて解説します!
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キャッチコピーは誰が決めているの?
実は、日本で出回っているボジョレー・ヌーヴォーのキャッチコピーは2種類あります。
一つ目は、現地のボジョレーワイン委員会によるブドウの評価をもとに、フランス食品振興会(SOPEXA)が発表した公式見解を和訳したもの。二つ目は、その情報をもとに日本で作られたキャッチコピーです。
後者については、公式見解よりも日本人により分かりやすく伝えるためにつけられており、少し誇大広告気味だと指摘されることもあります。
過去には「110年ぶりの当たり年」(2003年:公式コピー「並外れて素晴らしい年」)や、「100年に1度の出来とされた03年を超す21世紀最高の出来栄え」(2011年:公式コピー「3年連続で、偉大な品質となった」)などのキャッチコピーが発表されており、元のキャッチコピーと比べても大げさな文言が目立っています。
それ故に、毎年ボジョレー・ヌーヴォーの解禁日が近くなると話題にされますが、実は、この大げさなキャッチコピーを誰が作っているのかは定かではありません。
また、実際に使用しているワイン業界の企業は少ないのではないでしょうか。エノテカでは毎年、ボジョレーワイン委員会の公式見解を皆様にお伝えしています。
過去のキャッチコピー
それでは、公式見解としてどんなキャッチコピーがあったのか、2000年から振り返ってみましょう。
2000年
出来は上々で申し分の無い仕上がり
2001年
ここ10年で最高
2002年
色付きが良く、しっかりとしたボディ
2003年
並外れて素晴らしい年
2004年
生産者の実力が表れる年
2005年
59年や64年、76年のように偉大な年の一つ
2006年
とてもうまくいった年
2007年
果実味が豊かでエレガント
2008年
フルーツ、フルーツ、フルーツ
2009年
数量は少なく、完璧な品質。桁外れに素晴らしい年
2010年
果実味豊かで、滑らかでバランスの取れた
2011年
3年連続で、偉大な品質となった
2012年
心地よく、偉大な繊細さと複雑味のある香りを持ち合わせた
2013年
繊細でしっかりとした骨格。美しく複雑なアロマ
2014年
エレガントで味わい深く、とてもバランスがよい
2015年
記憶に残る素晴らしい出来栄え
2016年
エレガントで、魅惑的なワイン
2017年
豊満で朗らか、絹のようにしなやか。しかもフレッシュで輝かしい
2018年
2017年、2015年、2009年と並び、珠玉のヴィンテージとして歴史に刻まれるでしょう
2019年
有望だが、生産者のテクニックが重要な年
2020年
非常にバランスが取れた爽やかさのある仕上がり
2021年
挑戦の末たどり着いた、納得のヌーヴォー
2022年
太陽に恵まれたヴィンテージ 果実味とストラクチュアの完璧なバランス
こうやって振り返ってみると年々良い評価になっているように感じませんか?その真相は後述します。
2024年のキャッチコピーは?
気になる今年(2024年)のキャッチコピーは発表され次第、こちらの記事でお伝えいたします。
では、2022年のキャッチコピーを振り返ってみましょう。
2022年のキャッチコピーは、「太陽に恵まれたヴィンテージ 果実味とストラクチュアの完璧なバランス」。
春先から夏にかけての天候の変化が厳しく、生産者にとっても難しいヴィンテージとなりました。収穫は2003年に次いで最も早くなりましたが、素晴らしい出来となりました。
ボジョレーワイン委員会のダニエル・ブリア会長は、「収穫は、区画によりばらつきがある。収穫量は、過去5年平均に対し20%減と予想されるが、品質は喜ばしいものである。2022 年ヴィンテージは、偉大な年である2009年、2015年、2018年そして2020年と似ているところがあり、特別なワインとなるであろう。このヴィンテージは、とても多彩な特徴を示す。豊満でしっかりとしたストラクチュアがあり、際立つ色で、熟成向きのワインもあれば、フレッシュで心地よく肉付きがあり、飲みやすいワインもある(※)」と述べています。
引用 (※)ボジョレーワイン委員会(https://beaujolais-wines.jp/)
良い評価が多い理由
過去を振り返ってみると、年々良い評価となってきているように見えますよね。
これは生産者や販売側のビジネス戦略というわけではなく、温暖化によりブドウの完熟度が上がり、結果的に凝縮感のある状態で収穫されるようになってきているからです。
温暖化というとネガティブなイメージを抱いてしまうかもしれません。確かに深刻な環境問題ではありますが、その年の気候によってはブドウを完熟させることが難しかったワイン産地でも、ワイン産地においては温暖化の影響で良いワインが造れるようになってきており、ボジョレー地区もこれに当てはまるというわけです。
毎年少々大げさなキャッチコピーだけが一人歩きして何かと話題になりますが、環境の変化が味わいに関わっていることを知ると、ボジョレー・ヌーヴォーも違った観点から味わえるかもしれませんね。
そんな背景も踏まえつつ、今年もボジョレー・ヌーヴォーを楽しみましょう!