ボジョレー・ヌーヴォーだけじゃない!世界の新酒

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公開日 : 2020.11.13
更新日 : 2023.7.12
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赤ワイン

“ヌーヴォー”と聞くとボジョレー・ヌーヴォーを連想する人が多いと思いますが、 “ヌーヴォー”とは「新しい」という意味のフランス語で、本来はその年に収穫したブドウから造られる新酒を指します。

もともとボジョレー・ヌーヴォーはその年の収穫に感謝し、実りを祝うために造られてきましたが、ワイン造りの歴史の長いヨーロッパではボジョレー・ヌーヴォーと同じような理由で他の産地でも新酒が造られてきました。

そこで今回は各国の新酒について紹介したいと思います!

目次

イタリアの新酒「ヴィーノ・ノヴェッロ」

イタリアのブドウ畑

イタリアの新酒はヴィーノ・ノヴェッロまたは、単にノヴェッロと呼ばれます。イタリア語でヴィーノは「ワイン」、ノヴェッロは「新しい、出来立ての」という意味があります。

解禁日は2011年までは11月6日でしたが、2012年の8月13日に発効されたイタリアの新しいワイン法によって10月30日に変更になりました。

より正確に言うならば、10月30日の0時1分。これは、ノヴェッロと称するために必要な申請が10月30日の0時までとされているからです。

ノヴェッロは、ボジョレー・ヌーヴォーのように産地や品種が定められていないので、イタリア全土で様々なブドウ品種から造られています。よって、新酒らしいさっぱりとした飲み口のものから、新酒とは思えないコクのあるものまでバラエティに富んだノヴェッロが存在します。

イタリアのワイン法においてヴィーノ・ノヴェッロは単独の立法で、ノヴェッロはD.O.(D.O.C.G.とD.O.C.)とI.G.T.(※1)にのみ認められており、醸造期間は醸造開始後10日以内、瓶詰めは収穫した年の12月31日までに行わなければなりません。

さらに、炭酸ガス浸漬法(※2)で造られたワインが40%以上含まれていなければならず、消費に供する時点で総体アルコール度数は11%以上、残糖分は10g/L未満と定められています。

ノヴェッロが解禁されるとイタリアのワイン産地ではよくお祭りが開催されます。音楽を聴きながらノヴェッロを飲み軽食をつまむのが一般的で、毎年多くの人が集まります。ノヴェッロはカジュアルに楽しむワインなので、お祭りで用意される軽食はハムやソーセージをパンに挟んだものや、きのこのパスタなど簡単なものが多いようです。

また、現地ではノヴェッロに焼き栗を合わせるのが定番で、イタリア人はノヴェッロを飲みながら焼き栗を食べると秋の到来を感じるそうです。

※1 イタリアの原産地呼称法に基づき、ブドウの収量、ワインの量、アルコール度などが厳しく制約された格付けワイン「統制原産地呼称」がD.O.C.で、さらに出荷に際して国の検査を必要とするワインにあたえられるイタリアワイン最高位の格付け「統制保証原産地呼称」がD.O.C.G.。I.G.T.は産地の表示を伴い、その呼称が公式に認定されている「保護地理表示ワイン」のこと。

※2 縦型の大きな密閉ステンレスタンクに収穫した黒ブドウを破砕せずにそのままいっぱいに詰め、二酸化炭素(炭酸ガス)を充満させた状態で数日置く方法。非常にフルーティーな香りで、色の濃さのわりにタンニンによる渋みの少ない、フレッシュな味わいの赤ワインを造ることができる。

ドイツの新酒「デア・ノイエ」

ドイツの白ブドウ

ドイツでは新酒はデア・ノイエと呼ばれています。ドイツ語のデアは冠詞、ノイエは「新しい」という意味ですから、デア・ノイエは日本語に訳すと「新物」という意味になります。解禁日は11月1日です。

デア・ノイエはドイツワイン法でラントヴァイン(※3)の格付けになっており、ヴィンティージの表示義務があり、ブドウ品種の表示が可能となっています。ラントヴァインの指定地域内で栽培収穫されたブドウを使用する必要はありますが、ボジョレー・ヌーヴォーのように限られた地域で、決まったブドウ品種を使用しなければならないといった規定はありません。

寒冷なドイツのデア・ノイエは白ワインが主流で、特にミュラー・トゥルガウ種から造られる爽やかでほのかに甘みを感じる味わいのものが多いのです。

一方、最近は温暖化の影響で黒ブドウも早い時期に熟すようになったことから、赤のデア・ノイエも造られるようになりました。

※3 ドイツワイン法の「地理的表示保護ワイン」を指す。ラントヴァイン指定地域で栽培収穫されたブドウを85%以上使用するなどの規定がある。

スペインの新酒「ビノ・ヌエボ」

赤ワイン 乾杯

スペインの新酒は「ビノ・ヌエボ」と言います。スペイン語でビノは「ワイン」、ヌエボは「新しい」を意味します。

解禁日は11月11日、聖マルティンの日というキリスト教の聖名祝日の日です。この日は収穫祭の日であり、冬の始まりの日ともされており、昔から新酒とともに様々な行事が楽しまれてきました。ただ、収穫祭は地方により12月に行われることもあるため、ビノ・ヌエボの解禁日は12月の第1週前後と言われる説もあります。

ビノ・ヌエボに規定はありませんが、ガルナッチャやテンプラニーリョなどの黒ブドウから造られる赤ワインが主流です。現地ではビノ・ヌエボにチーズや生ハム、シンプルなタパスなど手軽な料理を合わせて楽しんでいます。

オーストリアの新酒「ホイリゲ」

黒ブドウ

「今年の」を意味するオーストリアの「ホイリゲ」は、1年未満のワインの新酒のことで、それを提供する居酒屋もまた「ホイリゲ」と呼ばれます。(※4)解禁日はスペインのビノ・ヌエボと同じく11月11日の聖マルティンの日です。

ホイリゲの歴史は1789年に皇帝ヨーゼフ2世がウィーンのブドウ農家に、年間300日以内に限り自家製ワインを小売し簡単な食事を供しても良いという特別許可を与えたのが始まりです。今でもブドウ農家が家族経営で営む居酒屋ホイリゲは、新酒ホイリゲを提供できる準備が整うと目印に軒先に松の小枝を吊り下げます。

そんなウィーンのホイリゲ文化は2019年にユネスコ無形文化遺産に登録されました。

新酒ホイリゲは現地ではワイングラスではなく1/4リットルのジョッキで飲まれており、居酒屋ホイリゲでは新酒ホイリゲに合わせてチーズや自家製ハム、ベーコンなどのシャルキュトリー、バーベキュー、サラダなどの軽食が用意されています。

オーストリアは白ワインの生産量が多い国ですからホイリゲも白ワインが一般的で、特にウィーン近郊で造られる混植混醸ワイン「ゲミシュター・サッツ」(※5)のホイリゲが有名です。

ただ、近年はオーストリアでも良質な赤ワインが造られるようになってきたことから、オーストリアで最も生産量の多い黒ブドウであるツヴァイゲルトからもホイリゲが造られるようになりました。

※4 法的に規定された居酒屋を意味する単語は「ブッシェンシャンク」

※5 一つに畑に様々なブドウを植えて、全てを同時に収穫し一緒に醸造して造られるオーストリアのワイン。

日本でも造られる!新酒

山梨ヌーボー祭り

日本でも新酒は造られています。解禁日が定められているのは山梨ヌーボーで、11月3日です。

2008年に山梨県ワイン酒造組合によって県産ワインのブランド化と販路開拓を促進するため解禁日が設けられました。山梨ヌーボーの原料ブドウは白ワインが甲州、赤ワインがマスカット・ベーリーAでいずれも日本固有の品種です。

例年、山梨県では山梨ヌーボー解禁日より一足早くデラウエアの新酒がリリースされるなど、山梨ヌーボーの他にも新酒は造られており、山形県や栃木県でも生産者各々のスタイルで新酒が造られています。

そして、10月〜11月にかけて収穫祭やヌーボー祭などがワイナリーやワイン産地で開催されていますので、機会があれば是非参加してみてください。ブドウ畑を眺めながら飲む新酒はどんなワインよりも美味しく感じることでしょう。

日本ワインの新酒はこちら

まとめ

新酒はどの国のものでも、白ワインでも赤ワインでも概ね飲み心地は軽く、フレッシュでジューシーな味わいが魅力です。

そして何より新酒は今年もまたブドウが実り、美味しいワインが生まれたという喜びを私達に与えてくれます。今年はこれまで味わったことのない新酒を選んでみてはいかがでしょうか?

参考文献 ・日本ソムリエ協会 教本 2020

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