カリニャンというブドウ品種をご存知ですか?
多くはブレンドに使用される品種なので、「カリニャン」という名前にピンとこない方もいらっしゃると思います。
今回はそんなカリニャンの魅力について詳しく紹介します。
カリニャンの特徴
種類 | 黒ブドウ |
主な産地 | ラングドック・ルーション、サルデーニャ、リオハ、カタルーニャなど |
香り | 熟したプラム、スパイス、なめし皮、鉄 |
味わい | 酸味や渋みのしっかりした重口 |
カリニャンはスペインのアラゴン州カリニェナを原産とする赤ワイン用の黒ブドウです。乾燥した温暖な気候を好む晩熟のブドウ品種で、現在は主にフランスのラングドック・ルーションやイタリアのサルデーニャ、スペインのリオハやカタルーニャで栽培されています。
カリニャンの最大の特徴として挙げられるのは生産性の高さで、その量は実に各国の原産地法で定められる一般的な収穫量の上限50~100hl前後に対して、200hl/1haといわれるほどです。
ワインの質より量が求められた時代、その収穫量の多さから、20世紀の終わりにメルロにとってかわられるまではフランスの品種別栽培面積第1位になったこともあります。しかし、収穫量こそ多いものの、ブドウの房と樹の結びつきが強く、機械収穫することが難しいという困った特徴も持っています。
味わいは強靭な渋みと酸味があり、単一でワインにするには厳しいため、多くはグルナッシュやシラーなどとブレンドされ、ワインに骨格を与える役割をしています。
しかし、高樹齢になったカリニャンは自然と収量も減り、暴れん坊で個性的な味わいも落ち着き、高品質なブドウを実らせます。近年は、このような高樹齢のカリニャンから熟成にも耐え得る高品質なワインが造られ、注目を集めています。
カリニャンのシノニム
古くから多くの国で栽培されていたカリニャンは、生産地によって呼び名が異なります。
通常、ワインのエチケットはそのワインの造られた国や産地の言葉で記載されるため、覚えておくと便利です。
フランス:カリニャン
イタリア:カリニャーノ
スペイン リオハ州:マスエロ
スペイン カタルーニャ州:サムソ
カリニャンの産地
カリニャンの主な産地についてそれぞれ説明します。
ラングドック・ルーション(フランス)
フランス南部、地中海沿岸のワイン産地ラングドック・ルーションでは、カリニャンの原産地であるスペインと近いこともあり古くからカリニャンの栽培が行われてきました。
夏は暑く乾燥し降雨量が少なく、冬は穏やかな地中海性気候を特徴としていてまさにカリニャンに最適な気候です。
かつては、水代わりに飲まれる低廉な大量生産ワインの供給地でもあったため、高収量のカリニャンは生産者にとってコスパの良い品種として広く植えられた歴史があります。
現在でもこの地域では、カリニャンは最も広い栽培面積を誇りますが、シラーやグルナッシュなどのブレンド用という異なる役割で栽培されています。
一方で、特徴となる荒々しいタンニンを抽出しないため、マセラシオン・カルボニックと呼ばれる特殊な製法によって、早いうちから楽しめるワインが生産されています。
サルデーニャ(イタリア)
イタリアのサルデーニャ州では、カリニャーノというシノニムで呼ばれ、特に沿岸部で栽培されています。
夏は暑く乾燥し、冬は温暖な地中海性の気候と海から吹く風により夏の暑さをやわらげ、しばしば干ばつに見舞われるほどの降雨量の少なさは、カリニャーノの栽培に最適です。
サルデーニャ島では9世紀には自生していたと言われるカリニャーノ。
そこに目を付けたのはイタリアワイン界のレジェンド、故ジャコモ・タキス氏でした。カリニャーノのポテンシャルに感銘を受けた彼は、イタリアのトップ生産者たちと手を組んで「アグリコーラ・プニカ」を立ち上げたのです。
彼らのワインは、2002年の初リリース直後から世界中から脚光を浴びました。その後もイタリアの評価誌をはじめ、ワイン評価誌で軒並み最高賞を獲得し、高い評価を得ています。
この地域では接木を行わない「ピエーデ・フランコ」という独特な方法で栽培されています。株を土中に埋めて取り木をする伝統的な方法で繁殖させることでブドウ樹が乾燥に耐え、中には100年を超える古樹も存在しています。
アグリコーラ・プニカ
リオハ(スペイン)
スペインはカリニャンの生まれ故郷です。しかし、リオハやカタルーニャでは別のシノニムで呼ばれています。
というのも、アラゴン州にはカリニェナという同名のアぺラシオンが存在するため、その名前をラベルに表記することができず、スペインのリオハでは代わりにマスエロ、カタルーニャではサムソというシノニムで呼ばれています。
カリニャンは暖かく乾燥した土地を好むため、リオハの南西のデマンダ山脈がメセタ(中央台地)からの過酷な熱波を遮り、北のカンタブリア山脈によって海から吹き寄せる冷たい北西風を遮る雨に恵まれた環境は厳しいと考えられます。そのためテンプラリーニョにとってかわられつつあるのが現状です。
生産されるマスエロのほとんどがガルナッチャとブレンドされ、凝縮感のある濃厚なワインとなっています。
まとめ
若いうちは荒々しいタンニンと酸味が、高樹齢になると丸くなるなんて人間みたいですよね。
そんな愛嬌いっぱいのカリニャンを見かけたら、ぜひ試してみてください。
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