フランスのワイン産地、ジュラ地方はフランス国内で最も小さな産地でありながら、そこで造られるワインの質は非常に高く、個性豊かなワインがあふれています。
残念ながら日本ではジュラ自体があまり知られていませんが、ジュラのワインを語る上で欠かせないのがサヴァニャンというブドウ品種です。
今回は、ジュラ地方のスター品種であるサヴァニャンについて紹介したいと思います。
サヴァニャンの基本情報
種類 | 白ブドウ |
主な産地 | フランス・ジュラ地方 |
香り | へーゼルナッツ、クルミ、黄桃、ハチミツ |
味わい | 豊かな酸味とミネラル感、ボリューム感のある味わい |
サヴァニャンはフランス東部のジュラ山脈の西に位置するワイン産地、ジュラ地方を代表する白ブドウ品種です。
フランスとドイツの国境周辺が原産といわれ、非常に古くから存在する品種です。サヴァニャン「savagnin」の語源はフランス語で「野生の」という意味の「sauvage」からきています。
サヴァニャンは果粒も房も小さく成熟の遅いブドウですが、果皮が厚いため病害耐性の強い品種です。また、酸も糖度もしっかりと備えているため、長期熟成ワインを生み出す要素を持ち合わせています。
そして、サヴァニャンと言えばジュラ地方の銘酒で「黄色ワイン」と呼ばれるヴァン・ジョーヌの原料ブドウとして知られています。ヴァン・ジョーヌの中でも最も評価の高いシャトー・シャロンは、ブルゴーニュのムルソーやボルドーのシャトー・ディケム等と並んでフランスの5大白ワインの一つに挙げられるほどです。
サヴァニャンはヴァン・ジョーヌをはじめ、通常の白ワイン、発泡性ワイン、陰干ししたブドウから造られる甘口のヴァン・ド・パイユ、発酵前もしくは発酵初期の果汁にオー・ド・ヴィーを添加して造られるヴァン・ド・リクールのマックヴァン・デュ・ジュラなど、甘口から辛口までジュラ地方独特の個性豊かなワインの原料となっています。
サヴァニャンの豆知識
とても古くから存在するサヴァニャンは、実は多くのブドウ品種の生みの親となってきました。
例えば、ソーヴィニヨン・ブランの親はサヴァニャンです。ソーヴィニヨン・ブランとカベルネ・フランの自然交配で生まれたブドウがカベルネ・ソーヴィニヨンですから、カベルネ・ソーヴィニヨンはサヴァニャンの孫ということになります。
ソーヴィニヨン・ブラン以外にもサヴァニャンを親とするブドウ品種は、シュナン・ブラン、グリューナー・フェルトリーナー、シルヴァーナー、ヴェルデホ、プティ・マンサンなどたくさん挙げられるのです!
また、サヴァニャンは親品種としてだけでなく、長い歴史の中で突然変異した個体も多く、実はあのゲヴェルツトラミネールも遺伝子的にはサヴァニャンと全く同じブドウです。驚くほど芳香性の高いゲヴェルツトラミネールと比較的ニュートラルな香りのサヴァニャンが同じ品種とは驚きですよね。
ヴァン・ジョーヌとは
ヴァン・ジョーヌとは、ジュラ地方で造られている黄色(=ジョーヌ)を帯びたワインのことで、サヴァニャンのみを原料として造られます。
長期間、樽の中のワインを少しずつ酸化させながら熟成させるという特異な方法で造られるため、一般的な白ワインとは異なる独特の風味を持ちます。
ヴァン・ジョーヌの造り方は完熟したサヴァニャンから通常の白ワインと同じ醸造方法で辛口のワインを造った後、収穫翌年から6年目の12月15日までオーク樽で熟成させます。その間の60ヶ月以上はウイヤージュ(目減り分の補充)およびスーティラージュ(澱引き)を一切せず放置するため、樽の中のワインの表面には、酵母(産膜酵母)による皮膜が形成されます。
この皮膜はフルール・デュ・ヴァン(フランス語で「ワインの花」という意味)と呼ばれ、膜をはったワインが適度に空気に触れることでワインは少しずつ酸化熟成し、黄色みを帯び、クルミやヘーゼルナッツ、ハチミツやシナモンのような複雑な風味が生まれます。
なお、ヴァン・ジョーヌはクラヴランと呼ばれる620mlのボトルに詰められ、収穫から7年目の1月1日以降に出荷されます。そしてシャトー・シャロンのような上質なヴァン・ジョーヌなら数十年は熟成させることができます。
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相性の良い料理
サヴァニャンから造られるワインは大きく二つのタイプに分かれます。通常の白ワインと同じように醸造され酸化させずに熟成させるフレッシュな味わいのモダンなスタイルと、いわゆるヴァン・ジョーヌに代表される、酸化熟成させて造られるクラシカルなスタイルの2種類です。
前者のモダンなスタイルのサヴァニャンのワインは、フレッシュな酸味と果実味、ミネラル感があり、さらにしっかりとしたストラクチャーでボリューム感もあります。そのため、バターでソテーした白身魚や野菜、鶏肉のクリーム煮、グラタンなどがよく合います。
一方、ヴァン・ジョーヌのように酸化熟成させながら造られるナッティーなサヴァニャンのワインには、同じジュラ地方で造られるチーズ、コンテがベストペアリングでしょう!
ちなみに現地では、クラシカルなサヴァニャンワインとコッコ・オ・ヴァン・ジョーヌという鶏肉をヴァン・ジョーヌで煮込んだ料理を合わせるのが古くからの定番です。
まとめ
ジュラ地方の生産者は、サヴァニャンという固有品種を大切に守り育てつつ、サヴァニャンから酸化熟成させずにフレッシュなワインを造ったり、シャルドネとブレンドして洗練されたスタイルに仕上げたりしています。
「サヴァニャン」という聞き慣れない品種も様々なブドウの親であることやゲヴェルツトラミネールと遺伝子的には同一の品種だと知ると一気に興味が沸いてきますよね。ぜひ見かけたときは手に取ってみてください!
参考文献 日本ソムリエ協会 教本 2020
サヴァニャンのワイン一覧