奇怪な用語が飛び交うワインテイスティング。
フルーツや花ならまだしも、スパイスに、ミネラル、焦げ香??しまいには動物臭?!ですが、これにはきちんと意味があるのです。ソムリエ目線で、毎回難解なテイスティング用語や表現などを解明!
あなたもイメージを膨らませてテイスティングに挑戦してみてはいかがでしょうか。
「固定概念が悪」とはよく言ったもので、ワインの世界にはそれが顕著に表れています。「~らしい」という言葉がありますが、それはすっかり過去のものとなり、現在ではそういった認識が通用しなくなっているということが多々あるのです。
伝統国(オールドワールド)、ニューワールドという分類は、紀元前からワイン造りが始まったヨーロッパ諸国、そのヨーロッパからワイン造りが伝えられた国々というものです。前者は伝統的な製法が継承され、産地名をワイン名としています。後者は現代的な製法で、ブドウ品種名をその名としています。
今日はどうでしょうか。ニューワールドと呼ばれる国も国際市場に台頭してから50年が経とうとしています。ニューカリフォルニア、ニューオーストラリアという表現がありますが、つまりそれは「オールド」の存在を示すことになります。
また品種について。たとえば、シャルドネはニュートラルな個性と拙著『10種のブドウでわかるワイン』でも記しています。しかし近年のシャルドネをテイスティングしていると、その認識はあらためないといけないのではと感じるようになっています。
熟度の高いシャルドネはパイナップルのような香りが感じられます。トロピカルフルーツの香りのあるワインは「アロマティックな品種」といわれます。それは一部のシャルドネの特徴なのですが、「シャルドネ=ニュートラル」と言い切れなくなっていると思うのです。
新たなスタイルのグルナッシュ
シャトーヌフ・デュ・パプといえば、「熱さ」を感じさせるパワフルなアルコール感が代名詞とされてきました。主要品種であるグルナッシュは「濃縮感があり、アルコリックな、重量感のあるワイン」をつくる品種と認識されていました。
近年、砂質土壌のグルナッシュが注目されています。先だっての全日本最優秀ソムリエコンクールでも、「これら5つのワインをテイスティングし、砂質土壌のものを答えなさい」と世界のグルナッシュが出題されました。
砂質土壌というと、「軽いワインに仕上がる」とされ、イメージはよいものではありませんでしたが、「エレガントなワインが生まれる稀有なテロワール」と認識が変わっていったのです。
シャトーヌフ・デュ・パプ ピエロン2014は、香りの広がりと奥行きがあり、かつ緻密さがあります。
ブランデー漬けのグリオットチェリーのような濃縮感のある果実香、スミレの華やかさ、リコリス、丁子、スターアニス、カルダモンとスパイスも豊富です。ドライトマトやドライビーフのニュアンスもありますが、全体的にはフレッシュかつクリーンです。
味わいは強く、活力を感じされます。ふくよかでヴォリュームのあるボディ、なめらかなテクスチュア、スパイシーなタンニンが心地よい後味となります。
秀逸なテロワールから生まれるこのワインは、シャトーヌフ・デュ・パプのテキストブック的な個性を有し、巧妙な造りにより、緻密さとフレッシュ感のある、重厚感というよりなめらかさのある、新たなスタイルのグルナッシュを見事に表現しています。
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シャトーヌフ・デュ・パプの名門、ブルニエ兄弟が、所有する樹齢70年という古樹のグルナッシュを表現するために生み出したワイン。
地中深くまで張り巡らされたブドウの根から吸収された、土壌中のミネラルも余すことなく表現され、フィネスが感じられる味わいが特徴です。
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