vol.8 ブリッジ食材を取り入れる

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ワインペアリング
公開日 : 2021.1.18
更新日 : 2023.7.12
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料理は主食材、調理法、味付け、そして付け合わせ(副食材)で成り立っています。これまで、主食材、調理法、味付け、それぞれの違いでペアリングが変わってくることをお話ししてきました。

今回は付け合わせをテーマに、ペアリング法を掘り下げてゆきたいと思います。

目次

付け合わせの存在感

付け合わせの存在感と効果には主旨がいくつかに分かれます。

1.主食材との相性がよく、料理の風味を相乗させる
2.主食材の風味を中和する
3.料理に季節感を与える
4.料理に地方色を付ける
5.料理により価値を加える
6.料理に彩りを付ける

1.主食材との相性がよく、料理の風味を相乗させる

仔羊とナス・ズッキーニ(ラタトゥイユ)、鶏肉とトマト、蟹とアボカドなどのように付け合わせの存在も大きく、付け合わせというより組み合わせと言ったほうがよいものです。

2.主食材の風味を中和する

豚肉にパイナップル、牡蠣とほうれん草、といった脂肪分や独特の風味を和らげる効果を狙ったものです。

3.料理に季節感を与える

同じ主素材でも、アスパラガスや豆類を添えると春らしく、キノコを添えると秋らしくなります。「季節の装い」という、役割を果たします。

4.料理に地方色を付ける

仔羊に蕪や春野菜を添えると、ナヴァランという南仏の料理になります。牛肉にエシャロットを添えるとボルドレーズ、鶏肉に赤とグリーンのピーマンを添えるとバスク風といった具合にその土地の名産とされる素材との組み合わせで、地方色が付きます。

5.料理により価値を加える

高級食材を加えることで、価値が高まります。キャヴィア、トリュフ、ウニ、イクラがその代表で、味や相性云々より付加価値に重きが置かれることが多いです。

6.料理に彩りを付ける

これは説明するまでもないでしょう。

付け合わせに注目する

ペアリングにおいて付け合わせに注目する必要性が高まるのは、3の季節感と4の地方性を目的とした場合です。

第2回でもお話ししたように、季節感によって合わせるワインが変わってきますし、より一層美味しさが増します。それぞれの季節に相応しいワインについては、ぜひ第2回を合わせて読んでみてください。

ブリッジ食材

これまで付け合わせと表現してきましたが、主食材とワインの繋ぎ役の役割を果たす、主食材とワインの架け橋ということからブリッジ食材と表現されることがあります。

やや大袈裟な言い方になりますが、ブリッジ食材であらゆるワインと合わせることができるのです。いくつか例を挙げてみましょう。

ソーセージ:生牡蠣とボルドー赤

ボルドー市街のレストランではどこでもと言ってよいくらいに生牡蠣がメニューに載っています。ジロンド河口の南にアルカションという牡蠣の養殖地があるからです。

ソーヴィニヨン・ブランやセミヨンの白ワインももちろんよく合うのですが、やはりボルドーといえば赤です。

生牡蠣と赤、それもボルドーのような渋みの強いワインはイメージわかないですよね。しかし、サイドディッシュの定番であるグリルソーセージと合わせると見事にボルドーがマッチします。

サワーポテト:ヴィーナー・シュニッツェルとグリュナー・フェルトリナー

オーストリア、ウィーン名物といえばシュニッツェル、仔牛のカツレツです。ウィーンで非常に大規模なワインイベントに参加しましたが、ビュッフェに必ずシュニッツェルがありました。

仔牛のカツレツといえば、ミラノが有名です。シュニッツェルはイタリアからもたらされたと言われています。イタリアでは当然赤ワインを合わせます。しかしウィーンではグリュナー・フェルトリナーが定番です。

「どんな接点が?」と疑心暗鬼でしたが、「シュニッツェルといえばこれさ」と出された、サワーポテトを食べるとカツレツとワインの素晴らしいブリッジとなっていることを実感しました。

マッシュルーム、ベーコン、小玉葱:ブルゴーニュ

ブルゴーニュ、特に赤はペアリングにおいては注意が必要なワインだとつくづく感じています。孤高といいましょうか、料理に寄り添わずワインはワインとして主張するところがあるのです。

またレモンの風味が強かったりするとワインの酸味が刺すような印象になったり、アーティチョークなど風味の強い野菜とは大変苦くなることがあります。

もちろん、ブルゴーニュには数多くの地方料理があり、コック・オ・ヴァン(鶏の赤ワイン煮込)、ブフ・ブルギニヨン(牛肉の赤ワイン煮)、ウフ・アン・ムーレット(ポーチド・エッグ 赤ワインソース)などがその代表でブルゴーニュの赤とよく合います。

余談ですが、ブルゴーニュは煮る、茹でる料理が多く、炭火焼きとも相性は難しいです。ここで挙げましたどの料理にも入っているのが、マッシュルーム、ベーコン、小玉葱です。

いくつかの主食材で検証をしたことがあるのですが、これらを添えるとブルゴーニュとの相性がグンとよくなるのです。まさにブリッジ、ブルゴーニュ三神器といってよいでしょう。

ワインのブリッジ食材(付け合わせ料理)

・ローヌ:じゃがいもチーズグラタン(タルティフィレット)、チーズラヴィオリ
・ボージョレ:じゃがいもと玉ねぎの炒め煮(リヨン風ポテト)
・シャブリ:ニンニク、パセリ
・サンテミリオン、ポムロール:キノコ
・プロヴァンス:オリーブ、アンチョビ
・ピエモンテ:チーズ、キノコ
・トスカーナ:ほうれん草
・シチリア:トマト、ナス
・リオハ:チョリソと豆の煮込み、赤ピーマンの肉詰め(ピミエントス)、パプリカ、赤唐辛子
・ソーヴィニヨン・ブラン:アボカド(ワカモレ)
・リースリング:塩漬けキャベツ(シュークルート)
・甲州:根菜類(ウド、蓮根、蕪)

これらの例はいずれもワイン産地の地方料理や名産食材を組み合わせています。料理を作る際のヒントやアレンジに役立ててもらえばと思います。

今月のペアリング

クリーンで上品な印象、軽く潰したブルーベリー、ダージリンのミルクティーのようなミルキーな香りに、キャラウェイ、カルダモン、バニラなどのスイートスパイス、鉱物や鉄分質も。バラやスミレが華やかさ、気品を与えています。

口当たりはしなやかで流れるよう。口中ではジューシーかつメロウな食感。繊細な酸味が凛とした印象を与えて、密度が高く、デリケートな渋みが余韻を引き締めています。やさしく、緻密さのある調和のとれたワインです。

上質さ、繊細さがキーポイントのワインですから、鶏肉料理でもしっとりと仕上げたものがよいです。シャモを先述のブリッジ食材と共にココット蒸し、または蒸し鶏に仕上げて、炒め煮したサイドディッシュもよいでしょう。焼き色、焦げ目をつけたものは難しいので気をつけてください。

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