アウトドアを楽しみたくなる季節になってきました。
花見のシーズンになると、散歩がてら他の集まりではどんな食事(飲み物)をしているのか、眺めていました。缶ビール、缶チューハイが定番だった時代はもうはるか昔の話、近年はワインが開いていないグループを見つけることはまずないといっていいほどに、定着しました。
花見やピクニックでは様々な料理が持ち寄られますから、一品にワインを合わせるようなペアリングよりも、シーンを合わせるペアリングが最適です。
スパークリング(カジュアルな)とロゼの人気はすっかり定着し、ワイン売り場を席巻し、棚一面ロゼという風景は欧米では当たり前になりました。
欧米のソムリエがよく使う言葉に‘approachable’(=親しみやすい)があります。スパークリングとロゼは難しいうんちくがなくとも楽しめる‘approachable’な飲み物として、特に若いワイン愛飲層にぴったりなのです。
ミレニアル世代(2000年以降に成人になった世代。20−30代)はカジュアルなもの、軽い食事、軽めのアルコールを好みます。
スペインバルやフィンガーフードやチーズなどを盛り合わせた“アペロ”、グランピングなどの流行がそれを示しています。
そんなシーンにぴったりなのがスパークリングやロゼなのです。スパークリングやスクリューキャップのワインはオープナーが不要というのもアウトドアには好都合です。
Pinknic ピンクニック
ピンク&ピクニック。数年前からニューヨークで始まりました。
“ピンク“をドレスコードにして、ロゼを楽しむというものです。ニューヨークではSNSで人が人を呼び、広大な広場をピンクが埋め尽くしました。
今はこんな大規模なイベントは無理でも、今日ならではのやり方を工夫して、Pinknicというシーンを楽しむのはとても現代的だと思います。
ベランダやテラスで、白かピンクの服を着て、カジュアルな食事とロゼを楽しむと気分も晴れやかになります。
今月のペアリング
ヴィーニャ・エスメラルダ ロゼ 2019は、ペタルピンクにイエローゴールドの反射。
フレッシュで透明感があり、繊細。赤すぐり、ピンクグレープフルーツに、ライラック、ハイビスカとはなやかかつ清らか。
オレガノやマジョラムなどセイヴォリーハーブ、さらにチョーク的ミネラル。率直な個性、精密な造りを感じます。
ソフトでドライ、スムースな口当たりに果肉感のある味わい、しなやかな酸味とパンジェントな苦味が全体を心地よく引き締める。軽快なフィニッシュ。
生ハム、トマト、サーモン、アヴォカドなどクリームチーズを塗ったバケットに乗せたカナッペ、BLTやクラブミートサンド、タコス。
アンチョビ、オリーブ、ツナのニース風サラダや、じゃがいもやチーズ、卵の黄身を散らしたミモザサラダ。シャルキュトリーやチーズ盛り合わせ。
もちろん和食にも。お花見弁当やちらし寿司にぴったりですし、菜の花の胡麻和えや桜エビとキャベツ炒め、ホタルイカと筍の酢味噌和え、ささみ梅肉……、そう春の和食にもロゼがとてもよいのです。
アクリルなどの透明なクーラーで冷やすと、より一層華やかなシーンを演出できます。そこに桜の花びらがはらはらと落ちてきたら……。
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昨年6月から連載をさせていただいた、「ペアリングレッスン」。ソムリエの真骨頂といえばペアリング、長年取り組んできたわけですが、このように文章に起こしたことで、私自身にも新たな気付や発見もあり、大変楽しく執筆させていただきました。
ワイン愛好家の中には「ペアリングは面倒」という意見もあり、それはもちろん理解できます。またグランヴァンと呼ばれる超高級ワインにはペアリングをあれこれ言う必要はないかもしれません。
日々の生活、食卓に彩りを添えるのがワインです。そしてアルコール類の中でワインがもつ一番の特徴は「食中酒」であることです。
本連載では、気軽に家飲みがしたい方にも、ペアリングを本格的に実践したい方にも、楽しんでいただけけるように、様々なアングルからペアリングについてお話をさせていただきました。
食事のテーマを決めるもよし、調理にひと工夫するのもよし、郷土料理を学んでみるのもよし、そしてシーンで楽しんでみるのも、すべてペアリングです。
家での食事の機会が倍増した2020年、それは今でも続いていますが、そんな日々の食卓に彩りを添えられるヒントとなれば、なによりもうれしく思います。
そしてご愛読いただきました皆様に心よりお礼申し上げます。ありがとうございました。