スペインのボルドー?イギリスで大人気の産地リオハ

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公開日 : 2021.4.14
更新日 : 2023.1.20
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スペインのボルドー?イギリスで大人気の産地リオハ

スペインで2か所しかない生産地カテゴリD.O.Ca(特選原産地呼称)に属する、銘醸地リオハ。


日本ではあまり馴染みがない産地かもしれませんが、イギリスの消費者が愛してやまないワインとして知られています。


今回はそんなリオハと切っても切れないボルドーとの関係性や違いを解説します。

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目次

なぜリオハが銘醸地となったのか?

ブドウの葉につくフィロキセラ

リオハのワイン造りの歴史は長く、2000年以上前に遡ることができますが、本当の意味で世界に登場したのは19世紀になってから。それまで地理的孤立に苦しんでいましたが、アロという町に鉄道が開通したことによって物流が改善され、知名度を上げていきました。


長い間、地元で消費されていたワインでしたが、製品として品質が向上したのもこの頃です。大きな要因となったのは、フィロキセラ禍でした。


フィロキセラはアブラムシのような小さな虫ですが、被害に遭うと手の施しようがなくブドウを枯らしてしまいます。


解決策が見つかるまでの間にヨーロッパ中のブドウ樹を食い荒らし、フランスワインの生産量はピークだった1875年の8,450万hlから、1889年にはわずか2,340万hlに減少。

マルケス・デ・ムリエタに現存する19世紀当時のワイン

これに困ったフランス・ボルドーの商人たちがワインの供給先として目を付けたのが、当時まだ、フィロキセラ禍にあっていなかったリオハでした。彼らはリオハをボルドーの代替品とするべく、ボルドーの最新技術を伝え、品質の向上に大きく貢献したと言われています。


また積極的にボルドーの技術を導入したリオハの生産者もいました。マルケス・デ・ムリエタの創設者でもあり、「リオハの近代的ワイン造りの父」とも呼ばれるルチアーノ・デ・ムリエタ氏です。ルチアーノ氏は自らボルドーに渡り、ボルドーワインの品質の秘訣を探り、オーク樽をリオハに導入した人物と言われています。


こうしてリオハは、フィロキセラ対策が発見されボルドーのブドウ畑が回復するまでの数十年間、ボルドーワインの代替品として務め上げました。


そのためワイン商たちの主な顧客であったイギリスからして見れば、リオハとボルドーは兄弟のような産地なのかも知れません。

リオハとボルドー

ブドウ畑

兄弟のような産地といっても、人間と同じように、似ているところもあれば違うところもあります。


似ている点はブドウ品種こそ違うものの複数品種をブレンドすることで、どちらの産地も生産者ごとの「ハウススタイル」を造り上げている産地です。カベルネ・ソーヴィニヨンやメルロなどを使用するボルドーに対して、リオハはテンプラニーリョやガルナッチャなどを使用しています。


テンプラニーリョはカベルネ・ソーヴィニョンと比較すると渋味が穏やかな味わいですが、なくてはならない主役という点では同じような存在と言えるでしょう。スペイン語の「Temporano=早熟な」を語源とする早熟なブドウのため、標高が高くて涼しいリオハの西側エリアで多く栽培されています。


ガルナッチャは、スペイン版のメルロと言えるほど近しい味わいです。渋味や酸味は穏やかで、ワインに肉付き与えます。テンプラニーリョとは対称的に晩熟なため、標高が低く温暖なリオハの東側エリアで多く栽培されています。


このように、ボルドーでは左岸・右岸と産地を括りますが、リオハでも同じように西側、東側と括ることができるのです。

小樽とルチアーノ・デ・ムリエタ氏
1902年撮影 小樽とルチアーノ・デ・ムリエタ氏(右)

二つ目の共通点は、小樽による長期間の熟成です。上述の通りルチアーノ・デ・ムリエタ氏がボルドーから導入した小樽熟成は、今やリオハの個性を作り上げている重要な要素と言えるでしょう。しかし、このオーク樽の原材料が異なることが、この二つのワインの異なる点でもあります。


スパイシーな香りが控えめなフレンチオークを使用するボルドーに対して、リオハは伝統的にスパイシーで力強い香りのアメリカンオークを使用します。このため長期熟成を経れば樽香が溶け込みどちらも優美な味わいになりますが、若いリオハのワインはボルドーに比べると、ややスパイシーな味わいと言えるかも知れません。飲む際に注目してみてください。

ブドウの収穫

そして大きな違いが、産地のビジネスモデルです。ブドウの栽培から醸造まで一貫して行うシャトースタイルが一般的なボルドーに対して、リオハではブドウ栽培農家とワイン生産者が分業化されており、買いブドウで原料を調達するのが一般的。リオハにおけるワイン生産者は、シャンパーニュのメゾンと同じスタイルだということです。


分業制はメリットもありますが、原料ブドウの品質コントロールが難しいというデメリットを抱えています。


これにいち早く気付いたマルケス・デ・ムリエタなど一部生産者は自社畑でのブドウ栽培とワイン生産をしていますが、現在でも自社畑から造られるワインは全体の20~30%ほどに留まるそうです。ワイン選びの一つの指標になりそうですね。

まとめ

ボルドーとはただならぬ関係のリオハ。その背景にはフィロキセラ禍というワイン史上最大の困難がありました。


元々ボルドーの代替品として見出されたため、フィロキセラ禍の終息後は市場を失った時期もありましたが、その高い品質と控えめな価格から、現在再びイギリスをはじめとした市場で大人気となっています。


リオハワインをあまり飲んだことがないというボルドー好きの方は、ぜひ手に取ってみてくださいね。

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