2020年、日本の国別ワイン輸入量1位となり、6年連続トップの座を守ったチリワイン。
コロナ禍でワインの全輸入量が減少し、フランスやイタリア、アメリカといった国々が前年を下回る中、チリは前年も上回る伸びをみせました。
その背景には、手頃な価格と品質の高さから、家飲みやオンライン飲み会などの自宅消費に選ばれたことが考えられます。
しかし、「ブドウの楽園」と言われるほどブドウ栽培に適したテロワールを持つ、チリの実力が発揮されるのは低価格帯のワインだけではありません。
今回は、世界最高クラスの品質を持つプレミアム・チリワインのお話です。
ロサンゼルスの審判
1976年、プロでさえも「ワインと言えばフランス」という考えを持っていた当時、ブラインド試飲で行われた品評会において無名のカリフォルニアワインがボルドーの格付けシャトーたちを打ち破り、世界に衝撃を与えました。この事件は通称「パリスの審判」と呼ばれ、カリフォルニアワインの品質を広く世に知らしめることになります。
それ以来、新世界の生産者たちは虎視眈々と自分たちのワインの品質を証明する機会を伺い、パリスの審判を模倣した数多の試飲会が開催されてきました。そして、いよいよチリワインの出番が来たのです。
きっかけはウォールストリートジャーナル誌に掲載された「コルチャグア・ヴァレーのア“アパルタ”は、チリのグランクリュだ」というコメントだったそうです。
アパルタを本拠地とするモンテスのアウレリオ・モンテス氏がこのコメントに触発され、モンテス・グランクリュ・チャレンジと題した、ブラインド試飲による品評会をロサンゼルスで開催しました。
招かれたのはアメリカやイギリスをはじめとした国々のプロ総勢12名。カベルネ・ソーヴィニヨンの部とシラーの部に分けられ、シャトー・ラフィット・ロスチャイルドなどの5大シャトーやオーストラリアのグランジをはじめとした錚々たるワインと、アパルタ産のモンテスのワインが銘柄を明かされずに提供されました。
結果、カベルネ・ソーヴィニヨンの部では、残念ながらシャトー・ラフィット・ロスチャイルドがトップになったものの、モンテス・アルファ・エムは2位に。シラーの部では、モンテス・フォーリー・シラーがグランジを僅差で破り1位になりました。
もちろん、ヴィンテージの良し悪しによる条件の違いはありますし、一概にどちらが優れているという話ではありません。しかし、世界の伝説的ワインとチリのプレミアムワインが並び立つ品質であるということが証明されたのです。
これを受けてアウレリオ・モンテス氏は、「モンテスの設立当初から、私たちの目標は世界最高のワインと肩を並べるようなワインを造ることでした。今回の試飲会によって、私たちが信じたアパルタのポテンシャルが証明されました」とコメントしました。
同様の取り組みは、他のプレミアム・チリワイン生産者によっても行われており、同じような結果となっています。チリワインの“コスパが良くて美味しい”というイメージは、手頃な価格帯のワインだけではなく、プレミアムな価格のワインにも当てはまるのです。
チリのグランクリュ、アパルタとは?
では、チリのグランクリュといわれる「アパルタ」とは、どんな場所なのでしょうか。
アパルタは、チリ中部コルチャグア・ヴァレーにあるサンタ・クルスの街からほど近く、円形闘技場のように広がる谷です。
日中は谷に熱がこもり気温が上がりますが、夜間は寒流の影響で冷え込み、カリフォルニアのナパヴァレーと同じように1日の寒暖差は20度を超える環境です。土壌は主に砂質と粘土質で構成されていますが、丘陵にはフランス・北ローヌと同じ花崗岩も。
険しい斜面は浸食が進んでおり、アパルタという言葉のとおり(地元の言葉で「痩せた土地」)水はけが良く痩せた、高品質なブドウ栽培に最適な土地と言われています。
チリで最も有名なモンテスやラポストールといった生産者の本拠地があり、ここで生産されているワインのほぼ全てが赤ワイン。チリ最高の赤ワイン産地といっても過言ではありません。
1990年、このアパルタの丘陵地を開拓したパイオニアが、前述のアウレリオ・モンテス氏です。
当時チリでは、ブドウを平地で栽培するのが当たり前でした。平らな場所に植えたほうが遥かに管理しやすいため、斜度45度を超える斜面に開墾したモンテスを、誰もがおかしいと言いました。
ところが丘陵地は、機械化が難しいため労働力は必要になりますが、品質と量をより細かくコントロールできるため高品質なワイン生産には最適な環境だったのです。その後、クロ・アパルタで知られるラポストールがこの谷に興味を持ち、アウレリオ氏がコンサルタントとして手助けをしたそうです。
アパルタの名声は、この二つのワイナリーの存在によって世界に知れ渡りました。モンテスがこの地で造るモンテス・アルファ・エムとモンテス・フォーリー・シラーは、たちまちアパルタの名をとどろかせるアイコンワインとなったのです。
今やアパルタは、アルマヴィーヴァが生産されるプエンテ・アルトと並ぶ、チリの最高級の赤ワインが生まれる産地として広く知られています。
チリワインの神髄はバリュー
手頃で美味しいというイメージのあるチリワインですが、その魅力は低価格帯のワインに限りません。
チリワインの神髄は価格と品質のバランス、すなわちバリューの高さだといえます。対価を払えば払うほど、品質で答えてくれるのです。
ステータスや格式を気にせず、自分が楽しむためのワインを探しているのならば、とても心強い選択肢の一つになるのではないでしょうか。
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