瓶詰めされたワインが日本へ到着し、いよいよ販売が開始された2018年のボルドー。
ボルドーではプリムール販売(※)が行われるため、リリース前のヴィンテージ情報も一般消費者に向けてすでに発信されていますが、ワインの評価は十分な熟成を経る前のものです。今回のリリースに合わせ改めて、各国の専門誌も評価を更新しました。
そんな2018年ボルドーのヴィンテージ情報について、最新評価を交えておさらいします。
※プリムールはフランス語で「新酒」を指し、熟成の途中でワインを購入するボルドー独自のシステムです。
2018年は偉大な年
ジャン・ピエール・ムエックス社のクリスチャン・ムエックス氏
気になるヴィンテージの良し悪しについてですが、一言でいうと2018年は「偉大な年」となりました。ワインのキャラクターは2015年や2009年に近く、色が濃くてリッチな味わいで、親しみやすい国際的なスタイル。
右岸を代表するネゴシアンであり、生産者でもあるジャン・ピエール・ムエックス社のクリスチャン・ムエックス氏は、自身の50年間のキャリアの中で“ベストヴィンテージ”と語り、若くして楽しむことができるのはもちろん、熟成のポテンシャルも永遠だと評価しています。
しかし一方でVinousのニール・マーチン氏は、2018年を素晴らしい品質としながらも、2005年や2016年のような一貫性は見られないというコメントをしています。
なぜでしょうか?より詳細なレポートを追ってみましょう。
生産者を悩ませた対照的な気候
2018年は、ブドウの生育期の前半と後半で対照的な天候が続き、気候変動の影響を色濃く感じる年となりました。
2018年ボルドー全体の収穫量は、およそ5億リットル。記録的な霜害で3億5000万リットルとなった2017年から見ると回復していますが、過去20年間の一般的なヴィンテージの収穫量と比較するとやや少ない数字です。
4月~7月上旬までは多雨で湿度が高く、生産者たちは病害に悩まされます。特にオーガニック農法やビオディナミ農法を行っているシャトーでは農薬が使用できないため、この時期に多くのブドウを失いました。ビオディナミ農法を実施しているシャトー・パルメの収穫量は、例年の1/3ほどになったそうです。
ところが、それ以降はカラリとした晴れ空が続きます。いえ、続き過ぎました。
7月中旬から9月末の収穫期まで非常に暑く乾燥した天候おかげで、ブドウは高い糖度とタンニンを備えましたが、その一方で、保水力の低い畑では干ばつによってブドウの成熟が止まってしまったのです。保水力の高い粘土質土壌が少ない畑では、ブドウが十分に熟すことが出来ませんでした。
ボルドーで粘土質土壌が豊富な畑といえば、右岸が想起されます。右岸の巨匠クリスチャン・ムエックス氏の評価はこのためでしょう。
また、乾燥によって果汁が少なく果皮が厚いブドウになっていたため、醸造におけるタンニンの取り扱いも、各シャトーの最終的な品質を大きく分ける要因になったと言われています。
2018年のボルドーは、恵まれたテロワールと高度な醸造技術を持つ一流のシャトーにとっては紛れもないグレートヴィンテージですが、各シャトーのテロワールと人智が試されたヴィンテージとも言えるのです。
評価の高い銘柄は?
最後に、各誌が熟成を経たワインを再評価し、改めて100点を与えたシャトーを見てみましょう。
Vinousはペトリュス、ラフルール、パルメ。ワインアドヴォケイトはオーゾンヌ、ラフィット、マルゴー、ラトゥール、オーブリオン。そしてデキャンターは、オーゾンヌ、シュバル・ブラン、ムートン、パルメに満点を与えています。
どの評価誌にも共通して言えることは、上記以外にも95点以上を獲得しているワインが非常に多いということ。格付けクラスの著名シャトーの評価は、やはりグレートヴィンテージと言える水準の評価になっていそうです。
ただし、プティシャトークラスを購入する際には、一度テロワールを考えてみると失敗しないかも知れません。テロワールはブルゴーニュだけのものではありません。
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