真夜中のブドウ収穫!?「ナイトハーヴェスト」について知ろう

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公開日 : 2021.5.4
更新日 : 2023.7.12
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ワインの説明でよく耳にする「ナイトハーヴェスト」というワード。

直訳すると「夜摘み」という意味で、言葉の通り日の出前にブドウを収穫する収穫方法です。

世界各地のワイナリーで行われており、近年では日本のワイナリーも積極的に取り入れていることで知られています。

しんと静まり返った日の出にする収穫作業は、神秘的な雰囲気すら感じられます。

なぜ日中ではなく深夜にブドウを収穫するのでしょうか。どんな目的や効果があるのか見ていきましょう。

目次

ナイトハーヴェストの目的と効果

ナイトハーヴェストでは、日中に比べて気温が下がった夜明け前の時間に、冷えている状態の果実を摘み、そのまま仕込みまでをおこないます。

このナイトハーヴェストには大きく3つの目的があります。

1.糖度が高い状態に収穫する

ブドウの糖度には、温度変化が大きく影響しており、夜の温度が低い状態のときに糖度は上がる傾向にあります。

理由としては、植物も人間同様、昼夜問わず「呼吸」をしていますが、植物の場合気温が高ければ高いほど呼吸は盛んになります。

夜に温度が低くなれば呼吸も穏やかになり、呼吸とともに消費されてしまう糖も少なくて済みます。

したがって、蓄えられた糖度が最高の状態である夜明け前に収穫をすることで、高い糖度を保ったブドウを収穫することが出来るのです。

2.アロマがピークのうちに収穫する

ソーヴィニヨン・ブランなどに含まれていることで有名な香り成分「3MH(3-メルカプトヘキサノール)」。

これは柑橘のような香りに関与していると言われています。

この3MHは、ブドウの果皮に存在している「3MH前駆体」が最終的に酵母の働きによって変換されて生成されるものです。

3MHなどの香気成分は、その成分を最終的に生成させるための“前駆体”が必要です。さらにいえば、一概には言えませんが、この前駆体が多ければ多いほど香り成分が多いワインと言われています。

ナイトハーヴェストでは、この前駆体がブドウに多い状態で収穫することが可能です。よって、アロマがピークの内に収穫が出来るというわけです。

※参照:ブドウの品種特徴香から紐解くナイトハーベストの科学的有意性 鈴木 俊二

3.醸造におけるリスクを回避

ナイトハーヴェストによって収穫されたブドウは、冷えた状態で醸造までおこなうことで、その品質を保持しやすいと言われています。

収穫した後のブドウが高温だった場合、酸化や腐敗などのさまざまな要因から、痛みが進行しやすくなってしまいます。

ナイトハーヴェストで収穫した低い温度のブドウをすぐに醸造にまわすことができれば、低温での原料処理が可能になるため、酸化や微生物汚染のリスクを低減することができるのです。

ナイトハーヴェストを実施しているワイナリー

アメリカのワイナリーが始めたと言われるナイトハーヴェスト。現在では日本でも積極的に取り入れるワイナリーが増えています。

実際にナイトハーヴェストを取り入れて収穫をおこなっているワイナリーを見ていきましょう。

オーパス・ワン

2001年ヴィンテージから、醸造責任者に就任したマイケル・シラーチ氏。

マイケル・シラーチ氏が栽培へ携わるようになったことで、夜明け前に収穫する「ナイトハーヴェスト」を実施しています。

彼はオーパス・ワンを任されるにあたり、初ヴィンテージから最新ヴィンテージに至るまでの全てのヴィンテージをテイスティングし、そのスタイルを徹底的に分析。

オーパス・ワンのスタイルを継承しつつも、科学的な検証の基、ナイトハーヴェストやビオディナミとオーガニックを併用した自然な栽培方法に取り組むことで細部に手を伸ばし、ワインの洗練度に磨きをかけ続けています。

20名ほどの社員でナイトハーヴェストの作業を実施することで、良質なブドウを収穫することへと繋がるのだそうです。

サントネージュ

サントネージュワインは、山梨県甲府盆地で誕生したワイナリーです。

「よいワインは、よいブドウから」の姿勢で、日本の清らかさや美しさを表現した最高のワインを追及していおり、近年ではデカンター・ワールド・ワイン・アワードやインターナショナル・ワイン・アンド・スピリット・コンペティションなど、数々の受賞歴を誇ります。

数々のワインの中で、同社のフラッグシップである「山梨牧丘倉科畑 シャルドネ」は、標高750mに位置する冷涼な牧丘倉科畑のシャルドネ種を丁寧にナイトハーヴェストし仕立てられています。

柑橘系の香りを活かした芳香高いワインを造るべく、深夜2時に約20名のスタッフが集合し、朝6時まで収穫作業を行われているとのこと。その後すぐにワイナリーにて、仕込み作業が始まります。

ナイトハーヴェストの賜物とも言えるグレープフルーツやパッションフルーツのような軽快でフレッシュな香りに、やわらかな樽香が調和。爽やかな酸味と厚みのあるボディのバランスに優れたワインに仕上がっています。

まとめ

実は筆者もナイトハーヴェストを体験したことがあるのですが、真夜中のブドウ畑は9月とは思えないほど寒く感じられ、吐く息が白かったことを覚えています。

こういった生産者の絶え間ない努力が、ワインの美味しさに繋がっていると思うと、よりワインが美味しく感じられるかもしれません。

ナイトハーヴェストで収穫されたブドウを使ったワインを見つけたら、収穫の夜に思いを馳せてみてくださいね。

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