ソーテルヌってどんなワイン?

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公開日 : 2021.5.19
更新日 : 2023.1.20
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ソーテルヌ

デザートワインと言えば真っ先に思いつくのがソーテルヌではないでしょうか?黄金色のワインが入ったソーテルヌのボトルを眺めているだけでもうっとりしてしまいます。

ソーテルヌはボルドー地方で造られる極甘口の貴腐ワインです。貴腐ワインはいろいろなワイン産地で造られていますが、その中でも圧倒的な人気と存在感を誇るのがソーテルヌです。

今回は、今も昔も多くのワインラヴァーを魅了してやまないソーテルヌの魅力を紹介したいと思います。

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目次

ソーテルヌとは

ソーテルヌ 地図

ガロンヌ河畔をボルドー市から上流へ40km、ガロンヌ川左岸と広大なランド地方の森林に挟まれたソーテルヌ地区は貴腐ワインの産地であり、そこで造られる貴腐ワインをソーテルヌと言います。

ドイツのトロッケンベーレンアウスレーゼ、ハンガリーのトカイワインと並んで世界三大貴腐ワインの一つとして大変有名です。

A.O.C.ソーテルヌはソーテルヌ、バルザック、ボンム、ファルグ、プレニャックの五つの村に認められており、A.O.C.バルザックはバルザック村のみに認められています。つまり、バルザック村のシャトーで造られる貴腐ワインは生産者の意向でA.O.C.ソーテルヌもしくはバルザックのどちらのA.O.C.も名乗ることができます。ソーテルヌとバルザックの製法上の規定は同一です。

ソーテルヌの原料として認められているブドウ品種は、セミヨン、ソーヴィニヨン・ブラン、ソーヴィニヨン・グリ、ミュスカデルの4品種。果皮の薄い品種の方が貴腐化しやすいため、大半のソーテルヌがセミヨン主体で造られています。

そもそも貴腐ワインとは、貴腐菌が付着したブドウから造られる極甘口のワインのこと。貴腐菌はボトリティス・シネレア菌というブドウの果皮に付着するカビの一種で、この菌が果皮に付着すると果皮の組織が破壊され、そこからブドウの水分が蒸発し、エキスが凝縮された糖度の高いマスト(ブドウ果汁)が得られます。

貴腐ワインは通常のワインを造るマストよりはるかに高い糖度のマストから造られるため、アルコール発酵後もワインには糖分が残り甘口となるのです。

貴腐ブドウ

しかし、この貴腐菌は特別な環境下でなければブドウに付着しません。具体的には、収穫の時期の明け方に霧が発生して菌の生育に都合の良い温度や湿度状態になり、さらに日中は晴天で乾燥してブドウの水分が蒸発するような奇跡的な環境でなければならないです。

貴腐ワインは貴腐菌が生育する限られた場所でしか造ることができない上に、ブドウの貴腐化は粒によっても異なるため、収穫作業は手作業で一粒一粒、果実の状態を見極めながら数回に分けて行われます。

通常、ブドウ樹1本からボトル1本分のワインができると言われていますが、貴腐ワインの場合はブドウ樹1本からグラス1杯分のワインしか造ることができません。

ソーテルヌはその奇跡的ともいえる自然の条件と、驚くほど多大な手間と時間をかけて生まれる貴腐ワインなのです。だからこそ希少性が高く非常に高価になります。

ソーテルヌとバルサックの違い

ソーテルヌ 風景

ソーテルヌ地区のブドウ畑は、森の中を流れ下る小川、シロン川がガロンヌ川に合流する地点の南側に広がっています。

ブドウが熟す秋になると森の中を流れるシロン川は水温が低くなり、ガロンヌ川に合流すると二つの河川の水温差により、明け方に霧が発生します。この湿った環境によりボトリティス・シネレア菌がブドウ畑に広がり、午後になって霧が晴れると、ボトリティス・シネレア菌の生じたブドウは水分が蒸発して貴腐化します。

ソーテルヌ一帯は明け方の霧と日中の暖かく乾燥した気候、この二つの条件が重なる特異な微気候(ミクロクリマ)に恵まれた土地なのです。

また、ソーテルヌがブドウ栽培に適した土地と言われる理由には、地質の素晴らしさも挙げられます。

シロン川右岸のソーテルヌ、ボンム、ファルグ、プレニャックの四つの村は、牡蠣殻が堆積した石灰質、泥灰岩、粘土を含む砂岩などを基盤に持つ東に傾斜した台地にあります。さらに、この地質は遥か昔、ガロンヌ川により運ばれてきた砂利層で覆われています。

ミネラルを多く含むこの砂利層に覆われた丘は十分な日照が得られるため、日中の太陽熱が夜間まで蓄えられます。また、シロン川や周辺を流れる小川の集水に優れたこの丘は、水捌けがよく余分な雨水を逃し、酷暑の際には乾燥しません。ブドウの根は水分と栄養を求めて地中深く、時に10メートルを超える深さまでしっかりと張っているのです。

一方、シロン川左岸のバルザックでは状況が異なります。

バルザック地区の土壌もブドウ栽培に適していますが、完全にカルスト化※した石灰岩が基盤となっており、裂け目が多く浸水性が高くなっています。地表はわずかに粘土質を含む大粒の砂からできた赤茶色の珪土で覆われています。

ブドウはその地表の痩せた土壌を貫いて石灰岩層に根を張っているのです。このようなテロワールの特性により、A.O.C.バルザックが設けられています。

これらの土壌の違いは、おのずと両地区で生まれるワインのスタイルにも違いを及ぼします。

砂利層に覆われたソーテルヌでは、酸度が低めの力強くボディのあるワインが生まれるのに対して、石灰質土壌に根を張るバルザックではソーテルヌより全体的にフレッシュで細身なストラクチャーのワインが生まれています。

※雨水や地表水、土壌水や地下水などによって侵食されること

美味しい飲み方

ソーテルヌ おすすめペアリング

まず極甘口のソーテルヌはしっかりと冷やしてから飲みましょう。温度が高いと酸味がぼやけ、まったりとした重い口当たりになってしまいます。通常の白ワインの提供温度と同じくらいか、より低めの7度前後が理想です。

おすすめのペアリングは、なんと言ってもブルーチーズです。ピリッとしたチーズの辛味と塩味が濃厚なソーテルヌの甘味と驚くほど合います。また、比較的風味の強いエポワスやマンステールなどのウォッシュタイプチーズもおすすめです。

デザートと合わせるなら、洋梨のタルトやタルト・タタン、香ばしいアーモンド系の焼き菓子がおすすめです。また、カジュアルにクレープやワッフル、フレンチトーストなど合わせても良いでしょう。休日の午後に是非お試し下さい。

昔からソーテルヌにはフォアグラと言われてきましたが、昨今の世界的な健康志向による食のライト化に伴い、ソーテルヌの生産者も最近はもう少しカジュアルな食事との楽しみ方を提案しています。

例えば、食後酒としてのイメージが強いソーテルヌですが、手頃な価格帯のソーテルヌなら氷を浮かべて食前酒として、また、ナッツやドライフルーツ、スナックなどとアペロに楽しむのもおすすめしています。

なお、糖度の高いソーテルヌは、抜栓後2週間程度は風味が保たれます。ですから、食前や食後にグラス1杯、数日かけてゆっくりと楽しむことができます。

高貴なワインというイメージが強いソーテルヌですが、意外と日常のワインライフに取り入れやすいワインでもあるのです。

ソーテルヌの格付け

有名なボルドー・メドック地区の赤ワインの格付けは1855年のパリ万国博覧会の開催に際して制定されましたが、実は、同じタイミングで白ワインも格付けされています。

対象はソーテルヌとバルザック地区の甘口ワインとされました。このことからも、当時からソーテルヌの甘口ワインの評価が高かったことが伺えます。

ソーテルヌ 格付け

ソーテルヌの格付けの等級は三つに分かれており、別格扱いの最高クラスであるプルミエ・クリュ・シュペリュールにシャトー・ディケム、第1級のプルミエ・クリュに11シャトー、第2級のドゥージエム・クリュに15シャトーの合計27シャトーが格付けされています。

特別第1級

特別第1級のプルミエ・クリュ・シュペリュールはシャトー・ディケムのみです。

第1級

第1級のプルミエ・クリュは下記の11シャトーです。

シャトー・ラ・トゥール・ブランシェ
シャトー・ラフォリ・ペラゲ
シャトー・クロ・オー・ペラゲ
シャトー・ド・レーヌ・ヴィニョー
シャトー・スデュイロー
シャトー・クーテ
シャトー・クリマン
シャトー・ギロー
シャトー・リューサック
シャトー・ラボー・プロミ
シャトー・シガラ・ラボー

第2級

第2級のドゥージエム・クリュは下記の15シャトーです。

シャトー・ド・ミラ
シャトー・ドワジー・デーヌ
シャトー・ドワジー・デュブロカ
シャトー・ドワジー・ヴェドリーヌ
シャトー・ダルシュ
シャトー・フィロー
シャトー・ブルーステ
シャトー・ネラック
シャトー・カイユ
シャトー・シュオー
シャトー・ド・マル
シャトー・ロメール・デュ・アヨ
シャトー・ロメール
シャトー・ラモット
シャトー・ラモット・ギニャール

最高峰の貴腐ワイン、シャトー・ディケム

シャトー・ディケム

格付けからもわかるように、シャトー・ディケムはソーテルヌの中でも特別で、名実ともに世界最高峰の貴腐ワインと言っても過言ではないでしょう。

テロワール

シャトー・ディケム(以下、ディケム)の所有地は約170ha。そのうちブドウが植樹されているのは113haで、ソーテルヌの丘の標高の高い場所にあります。

日当たりもよく、地表は保温性の高い砂利質土壌、地中は保水性の高い粘土質で、ソーテルヌ地区最良の条件を兼ね備えた素晴らしいテロワールです。

しかし、ディケムの素晴らしさは、その恵まれたテロワールとともに、シャトーを運営する人々の妥協を許さぬ厳しさ、「まさにディケムにふさわしいディケム」だけを造り出そうとする弛まぬ努力にあります。

歴史

シャトー・ディケム ブドウ畑

ソーテルヌの王者シャトー・ディケムには今日の名声を築くまでに多くの苦難の歴史を持ちます。

ディケムは中世には当時アキテーヌ公でもあったイングランド王が所有していましたが、1453年にフランス南西部はシャルル7世によって再びフランスの支配下に置かれたため、フランス国王の所有となりました。

1593年、地元の名門貴族であるソバージュ家がディケムの封建的所有権を与えられ、ブドウが植樹されました。驚くべきことに当時既に特別な栽培慣行と遅い収穫が行われていた記録が残っています。そしてルイ14世の治世中の1711年に、ソバージュ家は正式に払い下げを受けディケムの所有者になりました。

1785年、婚姻によりサリュース伯爵家の所有となったディケムですが、伯爵はその3年後に事故死したため、若き未亡人がディケムを取り仕切ることになりました。彼女はワインの生産と経営に類稀なる才能を発揮し、ディケムは世界で高い評価を得るようになりました。

ソーテルヌの複数回に分けて行われるブドウの選別収穫方法は、彼女の時代に行われるようなったと言われています。彼女の死後、その多大な功績が認められ、ディケムは1855年の格付けで唯一の最高クラスであるプルミエ・クリュ・シュペリュールに認定されました。

格付け公表後ディケムはさらなる繁栄を遂げるも、2度にわたる世界大戦やフィロキセラの被害、ボルドーワイン不況と連続する不作ヴィンテージ、相続に伴う驚くほど高額な税金の支払いなど苦難の時代を経ます。

しかし、不断の努力と1975年と80年代に続く優良ヴィンテージに助けられ、ディケムはソーテルヌの王者としての確固たる名声を得ました。1999年にはLVHD(ルイ・ヴィトン・モエ・ヘネシーグループ)が筆頭株主になり、さらなる飛躍を遂げています。

栽培と醸造

ディケムのブドウ栽培は、テロワールの良さを引き出すために一切化学肥料を用いません。

また、ブドウの収穫量を下げて熟度を上げるため、初冬に厳しく剪定を実施します。収穫期前には、70万本にも及ぶブドウ樹の東側だけの葉を落して日照量を確保し、最適な状態でブドウを収穫しています。

通常6~8週間かけて150人もの摘み手が、最低でも4回の時期に分けて完全に熟したブドウのみを収穫。厳しく選別されたブドウから造られたワインでも、樽熟成の段階でディケムとして世に出すにふさわしくないと判断されたものは生産量を減らしてでも容赦なく切り落とします。

完璧さを維持するため、1930、51、52、64、72、74年など不作の年は製造されませんでした。

醸造においては、ソーテルヌでは珍しい樽発酵を行っています。最高級のオークの新樽を100%使用し樽ごとに丁寧に監視し、2~6週間の発酵を行います。その後、6~8ヶ月間熟成。テイスティングにより基準を満たしたものは更に20ヶ月間熟成させ、ブレンドされてから瓶詰めが行われます。

このように手間暇かけて造られるシャトー・ディケムは言葉にできないほどの優雅さを持つ甘美な味わいです。南国フルーツを思わせる豊潤な果実味と蜂蜜やバニラのような豊潤で上品な甘さ、香ばしい新樽のフレーバーに凛とした酸も存在感を放ちます。

長熟とされるソーテルヌの中で、100年を超えて飴色になっても風味を持続させることができると言われるほど、高い熟成ポテンシャルを誇る究極の貴腐ワインとなるのです。

まとめ

奇跡とも言える特異な自然条件の恩恵と、生産者の惜しみない努力によって生まれるソーテルヌ。

一度でも口にすればその魅力と価値は必ずわかるでしょう。

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