奇怪な用語が飛び交うワインテイスティング。フルーツや花ならまだしも、スパイスに、ミネラル、焦げ香??しまいには動物臭?!ですが、これにはきちんと意味があるのです。ソムリエ目線で、毎回難解なテイスティング用語や表現などを解明!
あなたもイメージを膨らませてテイスティングに挑戦してみてはいかがでしょうか。
新たな注目産地は毎年のように誕生しています。ジョージア、ギリシア、モルドヴァなど長い歴史を有する国々の品質向上は目覚ましく、ハンガリー、バルカン諸国のルーマニアやセルヴィアも続けと輸出にも意欲的です。
ニューワールドでは、カナダのノヴァ・スコシア、タスマニア、そして英国はスパークリングワインの名産地として名乗りをあげました。
チリではエルキ・ヴァレー、アルト・コルチャグア、ビオビオなどが、カリフォルニアでも新AVAのペタルマ・ギャップ、またコントラ・コスタやボデガ・ベイといった沿岸産地、ウルグアイ、メキシコ、中国、そして日本もその品質向上を続ける注目産地です。
すでに別格の存在感を誇る伝統有名産地でライジングスターが後を絶たないのはトスカーナでしょう。
トスカーナは大変大胆かつ勇敢な生産地です。内陸部のキアンティ・クラシコ、ブルネッロ・ディ・モンタルチーノといったDOCGの伝統品種のサンジョヴェーゼに加えて、ボルドー品種を登用し、ボルゲリという新たなスターを誕生させます。
モンタルチーノと同じエリアで誕生したDOCサンタンティモもボルドー品種から素晴らしいワインが生まれています。そしてボルゲリの南に広がるマレンマには、モッレリーノ・ディ・スカンサーノとスヴェレートというDOCGと、枚挙に留めがかかりません。ワイン造りにもその大胆さは感じられます。
伝統ある名産地でありながら、最新の醸造施設で、技術を駆使しているのです。そしてその結果が見事なもの、というのもトスカーナの優位性とでもいいましょうか。
「野心的な造り」と表現する人もいます。気候風土に恵まれ、野心的で大胆な試みが功を奏する。「栄光のワイン産地」と言っても言い過ぎではないでしょう。
Gloriousなワイン
Petra 2016は、鮮やかなダークチェリーレッド。濃縮感があり、よく熟した果実香、率直かつ深みが感じられます。ブラックベリー、ザクロ、牡丹やローズヒップが華やかさを与えます。
甘草、オレガノ、セージなどの芳香ハーブ、加えて丁子、ナツメグ、カカオといった木樽の香りのアクセント。トランペット(黒いキノコ)やチャコール、樹脂っぽさ(バルサミック)や動物的ニュアンスもあります。まさに香りの宝庫、多層的で、まだまだいくらでも香ってきそうです。
味わいはスムースなエントリーで厚みがあります。生き生きとした酸味がボディをリフトし、後半にかけて直線的でスリムに伸びてゆきます。舌を掴むような、やや収斂性のある渋みの後味に、チョークのようなミネラル感が伴います。
私がテイスティングして率直に感じたのは、「大胆かつ巧妙」ということでした。造り手が意図したことがすべて見事に現れています。
“Glorious”、直訳の「栄光」というとやや大袈裟な印象を持たれると思いますが、類まれなテロワール、卓越した技術により生まれ、すべての要素がディテールとして際立っている。そんなワインを表現する語彙と理解しています。
ワイナリーの方針は、より多くの人に受け入れてもらえるコマーシャルなワイン造りであったり、テロワールを重視した自然なワイン造りであったり、伝統を重んじるワイン造りであったりと様々です。
秀逸なテロワールを求め、最新鋭の設備で、費用をかけ、世界最高水準のワイン造りを行い、それが見事に結実している、そんなワインをGloriousと表現します。高品位で、華やかさがあり、豊かさ、凝縮感があり、かつエレガンスが感じられる、そんなワインです。
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ミラノ・スカラ座のオフィシャル・サプライヤーであるフランチャコルタの名門、ベラヴィスタ。そのオーナー・ファミリーであるヴィットリオ・モレッティ氏と愛娘フランチェスカ女史が、トスカーナに建てたワイナリーがペトラです。
こちらはワイナリー名を冠するトップキュヴェ。樹齢17年~20年の高品質を誇るカベルネ・ソーヴィニヨン主体で造られるスーパータスカンで、ブドウの出来が良い年にのみ造られます。
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