東京・丸の内に位置するカジュアルダイニング、エスプリ・ド・タイユヴァン。
調理を担当する栗原シェフは、グランメゾン「トゥールダルジャン 東京」で料理人としての腕を磨き、現在はエスプリ・ド・タイユヴァンで調理技術だけでなくその豊富な経験を活かし、食材の選定からメニュー開発までを担当しています。
エスプリ・ド・タイユヴァンは食とワインの調和をコンセプトにしており、ワインと合わせることを前提とした味つけにすることで、最上級の相乗効果を生み、人々を魅了させます。
今回、そんな彼の仕事に対する思いや大事にしていることを伺いました。
目次
料理人を志した理由
―トゥールダルジャン 東京など名店を経験した栗原さんですが、どうして料理人になろうと思ったのですか?
学生の時に飲食店でアルバイトをしていまして、その頃に料理を作ることが楽しくて「もしかして向いているかも」と思い、将来の進路を考えた時に料理人の道を選びました。専門学校では西洋料理を学び、その頃から西洋料理の道でずっとやっています。
また、私は幼い頃からサッカーをやっていたんですが、料理人はスポーツと似ていると思ったんです。
何が似ているのかというと、努力をして経験を積み重ねることでスキルアップしていく感覚ですね。ただ「楽しい」だけではなく、努力をすれば必ずいつか結果につながるというところにも惹かれました。
継続してコツコツと経験を積んで進化する
―料理人として修業をしていく中で辛いこともあったと思いますが、辞めずに続けられた理由は何ですか?
専門学校に行くって決めた時に、自分の中で料理を一生の仕事にすると心に決めた部分があったので、途中で辞めるっていう選択肢はありませんでした。忍耐力と継続力は自信がありましたし、ある程度大変な仕事だと知った上で覚悟は決めていました。
先ほどお話しした通り、料理の道は継続すれば力になっていくということが分かっていたので、辛いことがあっても将来の糧になると信じてやってきた感じです。
実際に今もその選択をしたことは、間違っていなかったと思っています。
―過去のこの経験が今の自分の価値観というか軸になっているところはありますか?
レストランでいくと「エスプリ・ド・タイユヴァン」で4店舗目なんですが、今一番役立っているのは技術的なところは「トゥールダルジャン」ですが、料理人としての基礎を作ったのはホテルニューオータニの「SATSUKI」ですね。そこには8年間在籍しました。
料理の基本的なところはもちろんですが、社会人としての基礎も身に付けることができました。「SATSUKI」はフランス料理ではなく西洋料理でしたが、「SATSUKI」での経験があったからこそ、今の私があると思います。
お客様の笑顔が溢れるお店にしたくて
ーエスプリ・ド・タイユヴァンで働くようになって、何か変わったことはありますか?
一番はお客様目線で仕事ができるようになったことではないでしょうか。
過去にお客様目線を持っていなかったというわけではないんですが、今改めて振り返ってみると、自分のスキルアップや自分がやりたいことを最優先で考えていました。
今、エスプリ・ド・タイユヴァンを任せていただけるようになってから、常にどうすればお客様に喜んでいただけるかを考えます。お客様の想像を超えなければ“感動”は生み出せないので、ずっとお客様のことを考えています。
また、レストランは五感で味わう「食」の体験だと思っていて、タイユヴァンのワインと様々なペアリングに期待している人が多いと思うので、そんな中でどういった感動体験を与えられるか?も考えています。
あまりにも考えすぎてアイデアが出てこない時は苦しいんですが、そんな苦しさも自分がやっている中で感じる苦しみなので、それを通り越して更に料理が楽しくなっています。
―メニューは栗原さんが作っていると思いますが、特にこだわっている点を教えてください。
ランチメニュー、ディナーメニューは三か月に一回くらいのペース、ペアリングイベントのメニューは毎月考えています。
食とワインの調和がコンセプトのお店なので、ソムリエにワインを決めていただき、そのワインに合わせて作ることが多いです。ただ、ワインが潤沢にある場合は、私が作った料理に何が最も合うか?ということで決めていくケースもあります。
アイデアは、料理を作っている途中に思いつくこともありますし、逆に考えたメニューを作っている時に気が変わることもあります。毎回試行錯誤ですね。うまくいかないこともやっぱりありますし。
そんな中、メニューを考える上でストーリーというか、テーマは必ず決めるようにしています。分かりやすい例だと「春の食材」だったり、フランス料理であれば地方にスポットを当てて、そのテーマのもとメニューを考えています。
エスプリ・ド・タイユヴァンで働くまでは「フランス料理を作っている自分」でしたが、今では「自分が考えて作っているフランス料理」に変わりました。少し分かりづらいかもしれませんが、お客様目線でメニューの開発も行えるようになってきたということです。
ここで働かせてもらって、大きく変わったところなので本当に感謝しています。
ペアリングにおすすめの簡単おつまみは?
ー栗原さんがおすすめする、簡単おつまみなどあれば教えてほしいです。
すごく簡単なおつまみを考えてきました。「ムール貝のピカディージョ」です。こちらはスペイン語で細かく刻んだという意味の料理で、アンダルシアのタパスです。
ムール貝とその他みじん切りにした材料を混ぜ合わせるだけです。酸味が効いているので、その酸に合わせてワインを選んでみてください。
【材料】
ムール貝 1個
パプリカ赤・黄・緑(1cm角) 適量
赤玉葱(1㎝角) 適量
パセリみじん切り 適量
(お好みのハーブ:コリアンダー、セルフィーユでも可)
オリーブオイル 少々
シェリービネガー(酢で代用可) 少々
塩コショウ 少々
おいしい料理で笑顔があふれる!
―最後に栗原さんにとって料理とは、どういう存在ですか?
すごくシンプルな回答になってしまいますが、「生きる」ということですね。
食べるということは、毎日多ければ3食が当たり前に行うことです。本当に特別にお金をかける必要もないと思いますし、美味しいものを作れば喜んでくれるし、その喜ぶ姿を見て僕も嬉しくなります。
食はお互いに幸せを与えられるものです、シンプルなことですがやっぱり「生きる」ってことの延長線だと僕は思っています。
エスプリ・ド・タイユヴァン
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