ワインはブドウのみを原料とするお酒です。
だからこそ、同じブドウでもどの品種でワインを造るかによって香りや味わいが大きく異なります。
ワイン用のブドウ品種の起源をたどると、実は親子や親戚関係だったり、研究により生み出された品種があったりとその起源は様々。
例えば赤ワインの代表的品種カベルネ・ソーヴィニヨンは黒ブドウですが、実は白ワインの代表的品種で白ブドウのソーヴィニョン・ブランを親に持つ品種だったことが明らかになっています。
そんなブドウの品種について、一度じっくり考えてみませんか?今回はブドウ品種の、意外と知られていない歴史をご紹介します。
ワイン用のブドウと食用のブドウはどう違う?
ワイン用のブドウ品種についてお話しする前に、食用のブドウとワイン用のブドウがどう違うかについてご説明します。
主に食用のブドウとされるのはヴィティス・ラブルスカというアメリカ原産のブドウ品種。代表的なものには、キャンベル・アーリーやコンコードが挙げられます。
食用のブドウは生で食べて美味しいことが重要なため、皮が薄くてワイン用のブドウに比べて糖度が低く、水分を多く含んでいるのが特徴です。
食用のブドウにはヴィティス・ヴィニフェラとヴィティス・ラブルスカを掛け合わせて作られるブドウもあり、日本でもよく食べられている巨峰がこれに当たります。
一方ワイン用ブドウは「ヴィティス・ヴィニフェラ」と呼ばれるヨーロッパ原産のブドウ品種。
これは、食用のブドウに比べて皮が厚く、糖度、酸味ともに高いのが特徴です。
カベルネ・ソーヴィニョン、ピノ・ノワール、シャルドネ、リースリングなど、ワイン用のブドウ品種のほとんどは、このヴィティス・ヴィニフェラという大きな一つのグループに当てはまります。
辿っていくと面白い、ブドウ品種の歴史
ワイン用に使われるブドウ品種は長い歴史の中で増えてきており、突然変異や自然交配など自然に生まれた品種がたくさん存在しています。
特に20世紀初頭までは一つのブドウ園で複数のブドウ品種が混在することも多かったそう。
そのため異なるブドウ品種間の自然交配が起こりやすく、たくさんの品種が生み出されてきました。
ピノ・ノワール
例えば赤ワインの代表品種、ピノ・ノワール。
この品種は長い歴史の中で、果実の色や収量、品質、葉の形、果粒の大きさなどが変化し、新しい品種やクローン品種を生み出しています。
例えば白ワインに使われる品種のピノ・ブランやピノ・グリは、ピノ・ノワールの黒い果皮が白や灰色に変化したことよって生まれました。
また、ピノ・ノワールのクローン品種は数多く存在し、それぞれに番号がつけられています。
中でも品質が高いためよく使われているのが、113、114、115、667、777の番号が付けられた「ディジョン・クローン」。
この名前は、これらの挿し木がフランスのディジョンからアメリカに持ち込まれたことに由来しています。
その他有名なクローン品種と言えば、ロマネ・コンティの枝を分木したと言われる「Abelクローン」。
Abelクローンは、ロマネ・コンティから盗んでニュージーランドに持ち込もうとした枝を検疫官のAbelが没収し、こっそり自宅の畑に植えて増やしたと言われています。
サヴァニャン
フランス・ジュラ地方原産の白ブドウ品種であるサヴァニャンは古くから存在する品種で、自然交配により多くの子を持つ品種です。
なんとソーヴィニヨン・ブラン、シュナン・ブラン、グリューナー・フェルトリーナー、シルヴァーナーなどの白ブドウ品種はすべてサヴァニャンの子どもなんです!
さらにルーツを辿っていくと、カベルネ・ソーヴィニヨンはソーヴィニヨン・ブランとカベルネ・フランの交配で生まれた品種のため、サヴァニャンの孫ということになります。
サヴァニャンは突然変異することもあり、アロマティック品種であるゲヴュルツトラミネールはサヴァニャンと遺伝子的には同じであることが分かっています。
品種開発による新しいブドウ品種
ブドウ品種の中には生産者が開発してできた品種もあります。
ミュラー・トゥルガウはリースリングとマドレーヌ・ロワイヤルという品種を掛け合わせた白ブドウ品種。リースリングよりも育てやすく、収量の多い品種を造るために開発されました。
ドイツで多く栽培されており、白い花のアロマと白桃や柑橘のフレッシュでフルーティーな果実味が特徴です。
また、ピノタージュはピノ・ノワールとサンソーを人工交配して作られた黒ブドウ品種です。
ピノタージュという名は、親品種であるピノ・ノワールと、当時エルミタージュと呼ばれていたサンソーの名前をかけ合わせて名づけられました。
この品種はプラムやラズベリーなどの果実味豊かな味わいが特徴で、現在も南アフリカで多く栽培されています。
ハイブリッド品種
生産者が開発してできた品種の中には、アメリカ原産のブドウ品種と、ヨーロッパ原産のブドウ種を掛け合わせて生まれた、ハイブリッド品種という品種が存在します。
有名なのは、ヨーロッパ原産のユニ・ブランとアメリカ原産のセイベル4986を掛け合わせて造られたヴィダルというハイブリッド品種。
もともとはコニャックを造るためにフランスで開発されましたが、フランスでの認可が下りなかったためほとんど栽培されていませんでした。
しかし、この品種がカナダに伝わると状況は一変。ヴィダルの強い耐寒性を生かし、ブドウを凍らせて造るアイスワイン用の品種として広く栽培されるようになりました。
ヴィダルで造られたアイスワインは桃や柑橘のシロップ漬けのような上品な甘みが特徴で、甘口ワインの中でも人気の高いワインの一つとなっています。
まとめ
長い歴史の中で増えていった、ブドウの品種。
知っている別の品種同士が実は親子や兄弟だったなんて、なんだか不思議ですよね。
今でこそ遺伝子解析が進み、ブドウ品種の祖先や品種同士の繋がりが解明されてきていますが、少し前までは多くが謎に包まれていました。
今後も新たにブドウ品種の意外な歴史が明らかになってくるかもしれませんよ。
【参考文献】 Jancis Robinson, Julia Harding, Jose Vouillamoz. Wine Grapes. 2013