ワインが生まれた8,000年前から、ワインを飲む超基本は「食べ物と共に」です。
ワインと食事を合わせるマリアージュの基本は、①同じ系統の組み合わせ、②正反対の組み合わせ、③化学変化を起こす組み合わせの3種類があります。
自宅でワインを飲む場合、圧倒的に多いシチュエーションは「ワインと和食」の組み合わせですね。
今回、ワインと和食の簡単なのに意外なマリアージュを5つ紹介します。是非、ご家庭でお試しください(逆に、家庭でしか試せない組み合わせがほとんどです)。
目次
その1:うなぎの蒲焼きとジンファンデル(同系統の組み合わせ)
日本人は、なぜか鮎とうなぎに異常なこだわりがあります。いわゆる食通が好むマニアックな魚の双璧ですね。
特にうなぎは女神様扱いで、焼いたうなぎを「焼き魚」とは呼びません。そこまで崇拝と尊敬を受ける魚はうなぎだけでしょう。
天然物のうなぎの蒲焼きを出す名店では、蒲焼きと高級シャンパーニュの組み合わせを売り物にしてことが多いようです。
ビールやシャンパーニュのように「泡は合わせる食事の間口を広くする」法則がありますし、シャンパーニュ、特にシャルドネだけのブラン・ド・ブランのエレガントな感じと天然うなぎのふっくら柔らかい感じが良い相性です。何より、料理とワインの格が合っています。
「料理とワインの格を合わせる」とは、料理とワインの価格を合わせることで、逆に言えば、「高価なワインと安価なワインを合わせるな」「安価なワインと高価な食事を合わせるな」です。
2013年度世界最優秀ソムリエ大会@有楽町で優勝したパウロ・バッソさんをインタビューしたとき、マリアージュの基本中の基本として最初に挙げたのがこのルールでした。
このルールは、レストランでのマリアージュの基本ですが、家庭ではなんでもありです。
高級なうなぎ屋には頻繁には行けないので、家庭ではスーパーマーケットに並ぶ普通のうなぎを食べる機会が多いでしょう。そんなうなぎにどんなワインを合わせればイイか?
ロミオとジュリエット、木曽義仲と巴御前、工藤新一(名探偵コナン)と毛利蘭、なら、うなぎにはジンファンデルで決まりです。
どちらも泥臭い同士で、上記の①同系統のマリアージュですね。両方とも、あまり繊細ではないというか、少し垢抜けない下町の雰囲気があり、非常によく合います。
私の経験では、ジンファンデルは、古木から造った甘みのある少し高価なものも、軽めの安価なものもよく合うようです。また、ジンファンデルのスパイシーさと、山椒との相性も絶妙です。
うなぎに合わせるワインとして、品種の個性を直球的に表現したケンダル・ジャクソンのワインと、古木の甘みがあるベッドロック・ワインズのものがおすすめです。
おすすめワイン
ヴィントナーズ・リザーヴ ジンファンデル / ケンダル・ジャクソン
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オールド・ヴァイン・ジンファンデル / ベッドロック・ワインズ
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その2:鮎とムルソー&カベルネ・ソーヴィニヨン(同系統の組み合わせ)
うなぎと並んで食通に熱烈な人気のマニアックな魚が鮎ですね。
時間をかけて弱火でじっくり焼いた鮎にはバターの風味があります。となると、合わせるワインは同じくバターの香りがあるムルソーで決まりですね。
この組み合わせはワイン系の雑誌や書籍に載っています。で、「鮎の塩焼きには、実はカベルネ・ソーヴィニヨンがよく合うんですよ」というと、皆さん「えッ、鮎にボルドーの赤?」と驚きます。
そこで、「バターの香りがする鮎の白身はムルソーを合わせ、少し苦みがあり濃厚なワタはカベルネ・ソーヴィニヨンがよく合うんですよ」とタネ明かしをすると、皆さんに納得してもらえます。
この「一粒で二度おいしい」組み合わせを是非、お試しください。
ムルソーはオリヴィエ・ルフレーヴのもの、カベルネ・ソーヴィニヨンは、ムートン・カデ・セレクション・ルージュがおすすめです。
おすすめワイン
ムルソー / オリヴィエ・ルフレーヴ
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ムートン・カデ・セレクション・ルージュ / バロン・フィリップ・ド・ロスチャイルド
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その3:きんぴらごぼうとソーテルヌ(同系統の組み合わせ)
フレンチでは、桃1個の丸ごとのコンポートのように、華麗なデザート文化がありますが、和食のデザートは、水菓子(果物)のように、質素で「おまけ感」が満載ですね。
なぜこうなったのか?フレンチでは(イタリアンも)砂糖を使わず、厨房には砂糖が一粒もないそうです。コース料理を食べ終わると、無意識に身体は猛烈に甘いものを求め、その結果、華やかなデザート文化が花開いたそうです。
一方、和食では(タイ料理も)、みりんをはじめ、砂糖を使いますので、コースが終わっても、身体は甘いものはそれほど必要とせず、甘いものはおまけ程度にしか出てこないと聞いたことがあります。「なるほど」ですね。
5年前、あるワイン学校で「いろいろな食事とワインのマリアージュ」の講師をしていた時、スーパーマーケットの和のお惣菜とワインを組み合わせる機会がありました。ワインを12種類、お惣菜を36種類用意し、羊羹やシュークリームに合わせてもらおうとソーテルヌ(シャトー・ギロー)も選びました。
実際に合わせると、きんぴらごぼうとソーテルヌとの相性が抜群で、全員、ビックリ。なんで合うのだろうと色々なお惣菜を食べた結果、「みりんの甘みがソーテルヌと合う」と分かり、カレーうどんとも絶妙の相性でした。
以降、「和食とワインのマリアージュ」の講座でいろいろなソーテルヌを試したところ、イケムのように「ロールスロイスやベンツみたいに重量級のデザートワイン」より「モダンで軽快なスポーツカー的なソーテルヌ」が合うようです。
高級割烹では、料理とワインの格(価格)を合わせますので、1品500円のきんぴらごぼうに、1本数万円のソーテルヌは合わせません。きんぴらごぼうと軽快なソーテルヌは、是非、ご家庭で試して驚いてください。
おすすめは、あのムートンが造った軽快なソーテルヌ「レゼルヴ・ムートン・カデ・ソーテルヌ(ハーフボトル)」ですね。
おすすめワイン
レゼルヴ・ムートン・カデ・ソーテルヌ [ハーフボトル] / バロン・フィリップ・ド・ロスチャイルド
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その4:フグ刺しとブルゴーニュの赤ワイン(化学反応を起こす組み合わせ)
和の高級料理の一つがフグですね。フグ刺しには甲州のような白ワインを合わせるのが定石ですが、超変則技として、是非、ブルゴーニュの赤ワインをお試しください。
フグ刺しとピノ・ノワールを合わせる場合、通常なら、ポン酢でいただくところ、塩だけで食べてください。その後でブルゴーニュの赤ワインを飲むと、なんと、口の中で化学反応が起こり、ピノ・ノワールと塩がポン酢に変化するのです。この不思議な感覚を是非、体験してみてください。
このマリアージュの話をすると、必ず「それなら、初めからポン酢で食えばイイんじゃない?」と言われます。そんな時は「じゃあ、宝塚の男役は男性でいいでしょ?月組トップの月城かなとや、雪組トップの朝美絢(あさみじゅん)の代わりに、溝端淳平や生田斗真が『ベルサイユの薔薇』のオスカル役を演じればいいんですよね?」と反論します。
柔らかいフグ刺しには、軽快なブルゴーニュが合うので、ジュヴレイ・シャンベルタン村の名手、ジャンテ・パンショが造ったオート・コート・ド・ニュイがおすすめです。
おすすめワイン
ブルゴーニュ・オート・コート・ド・ニュイ・ルージュ / ジャンテ・パンショ
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その5:黄桃とシャンボール・ミュジニー(異次元の組み合わせ)
鬼才の画家、サルバドール・ダリの絵に、引き出しのついたキリンが燃えている不思議な絵があります。いわゆるシュールレアリスム系の絵画で、シュールレアリスムの例としてよく使う文句が、「手術台の上で蝙蝠傘とミシンが出会ったように意外」です。
マリアージュのシュールレアリスム的というか、異次元の組み合わせがこの「黄桃とシャンボール・ミュジニー」です。
あるソムリエさんに教えてもらった超マニアックなマリアージュで、「この組み合わせを見つけるのに3年と300万円も使いました」ということで、実際に試してみると「おぉ、異次元同士なのに確かによく合う」と驚きます。
是非、3年と300万円のマリアージュを体験してください。
この組み合わせに、例えばコンフュロン・コトティドはいかがでしょうか?
おすすめワイン
シャンボール・ミュジニー / コンフュロン・コトティド
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