エーゲ海に浮かぶ世界的屈指のリゾート地、ギリシャのサントリーニ島。断崖の上に建つ白壁の家々と青い海や空のコントラストを描く景観はとても有名ですね。
この島で古くから栽培されている土着品種がアシルティコです。
近年、ギリシャワインが世界から注目を集めているのは、200もの土着品種が生き延び、産地の風土を映す個性的なワインが生産されるようになっているから。
とりわけ土着品種アシルティコから造られるワインは人気が急上昇しています。そこで今回はアシルティコについて詳しくご紹介したいと思います。
アシルティコの特徴
種類 | 白ブドウ |
主な産地 | ギリシャ、サントリーニ島を中心とするキクラデス諸島 |
香り | グレープフルーツ、レモングラス(ハーブ)、白桃 |
味わい | キレの良い酸味、程良い苦味、ミネラル感 |
アシルティコはギリシャのサントリーニ島を原産とする白ブドウ品種です。
皮が厚いブドウで乾燥に強く、病害虫に対して高い抵抗力があります。
温暖で日照量が多い気候のもとで完熟し、非常にアロマティックで豊かな果実味と高いアルコール度数を持つと同時に、高い酸度も保持できる非常に珍しい品種です。
ただ、酸化しやすいブドウのため醸造には注意が必要で、辛口ワインを造る場合はステンレスタンクで還元的に醸造を行うのが主流のようです。
サントリーニ島を中心とするキクラデス諸島の主要品種であるアシルティコは、同じくエーゲ海の島々で栽培されているアシリやアイダニといった白ブドウとブレンドされることが多く、主に辛口ワインに仕立てられますが、天日干しブドウから甘口のワインも造られています。
アシルティコから造られるワインはレモンやグレープフルーツのような柑橘を連想させる酸味と苦味、塩味を伴うしっかりとしたミネラル感が特徴で、豊富な酸は長期熟成も可能にしています。
代表的な産地、サントリーニ島
ギリシャ本土から南東へ約200km離れたエーゲ海南部に位置するサントリーニ島は、紀元前17世紀に大噴火した火山によって形成されたカルデラ地形の外輪山にあたり、土壌は溶岩、火山灰、軽石など多孔性の下層土を砂地が覆っています。
粘土を含まない土壌は有機物も少ないためフィロキセラに襲われたことがありません。そのため、自根のブドウ樹が生き延びており、平均樹齢は50年を超えます。
サントリーニ島は非常に乾燥した地中海性気候で、年間降水量は約370mmと極めて少なく、病害虫の発生はほとんどありません。
ブドウの生育期に吹く強風と強い日差しから房を守るため、ブドウ樹は枝葉をくるくると巻き込んでバスケット状に仕立てられています。一見、鳥の巣にも見えるこのユニークな栽培方法は「クルーラ」と言います。
降雨量の少ないサントリーニ島ですが灌漑は行われておらず、地中深くに蓄えたわずかな雨水と自然の湿気だけでブドウを育てています。そのため収穫は低収量となりますが、非常に凝縮度の高いブドウとなるのです。
P.D.O.(※)サントリーニはアルシティコ100%、またはアシリ、アイダニとのブレンドで造られるワインで、甘口ワインのVinsanto(ヴィンサント)を除いて極辛口のワインとなります。
Vinsanto(ヴィンサント)は、P.D.O.サントリーニの中で伝統的に天日干しのブドウで造られる甘口ワインで、ブドウの糖度は370g/L以上で、24ヶ月以上樽熟成させて造られます。イタリアの甘口ワインVin Santo(ヴィン・サント)の起源はサントリーニ島にあり、中世にベニスの商人がイタリアに広めたとされています。
※P.D.O. :Protected Designation of Originの略。EUの規定に則した原産地呼称を持つエリアのワインで、厳しい品質基準を備える。官能評価による品質チェック、規定範囲内のブドウ使用、栽培方法などが定められている。
おすすめワイン
アシルティコを世界的に有名にしたのが、ギリシャ最高峰のワイナリー「ドメーヌ・シガラス」。彼らが造るアシルティコのワインは、世界各国の著名なレストランやホテルでギリシャ最高峰の白ワインとして提供されています。
みかんやライムなどの爽やかな柑橘系の香りやフレッシュな果実味が広がります。お寿司や魚介はもちろん、和食との相性に優れた1本です。
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まとめ
ワイン界における昨今の世界的な土着品種回帰の流れの中で、アシルティコのような独自性の高いブドウが注目されようになったのは必然と言えるでしょう。
世界にはまだまだ多くのブドウ品種が存在し、多様なワインが造られているのです。アシルティコのワイン、見かけたらぜひ試してみてくださいね。
参考文献:日本ソムリエ協会 教本2021
アシルティコのワイン一覧