スポーツにピッタリのワインを4選

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公開日 : 2022.10.4
更新日 : 2024.4.24
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スポーツにピッタリのワインを4選

これまで、音楽、文学、映画など「静かな芸術系」とワインの組み合わせを取り上げてきました。実は、ワインは賑やかなスポーツとも抜群の相性の良さを誇ります。


今回は、スポーツの観戦のお供に、スポーツ好きへのプレゼントに、また、金メダルを受けた勝者のお祝いでワインをカッコよく使う方法を提案します。


ぜひ、ご自分で試して豪華な状況を演出していただければ幸いです。

目次

桑田真澄とプロヴィダンス

ニュージーランドのブドウ畑

私が「世界のセクシー・メルロの正三角形」と考えているのが、ボルドー、ポムロル村のル・パン、カリフォルニアのダックホーン・スリーパームヴィンヤードと、ニュージーランドのプロヴィダンスです。


プロヴィダンスを初めて飲んだ時の衝撃は今でも鮮明に覚えています。


忘れもしない1998年5月22日。マニアックなワイン会へ友人がプロヴィダンスの初ヴィンテージ、1996年を持ち込みました。


当時、プロヴィダンスは完全に無名で、何の期待もせずに飲んだところ、全員が「何これ?ル・パンに勝てるよね!」とめちゃくちゃ驚いたのです。以降、プロヴィダンスは、世界のワイン愛好家の間でも、シンデレラワインとして有名になりました。


話は変わりますが、ボルドーの最高峰、シャトー・ラフィットが2008年ボトルに漢字の「八」をエンボスして赤く塗ったボトルが、日本のワイン愛好家の間で大きな話題になりました。


ワインに目覚めて高級ワインを大量に購入する中国を意識し、末広がりで縁起がいい数字である「八」を描いて媚とプライドを売ったのではないかと邪推する人も少なくなかったようです。


同様に、あっという間に世界レベルへ昇格したプロヴィダンスが、2010年のラベルに、元読売ジャイアンツの伝説の投手、桑田真澄氏の背番号18とサインを入れたため、日本のワイン界で大きな話題になりました。


「プロヴィダンスよ、お前もか」と思った愛好家もいたようです。


2012年、プロヴィダンスのオーナー、ジム・ヴルティッチさんとお話しする機会があり、「桑田ラベル」のことを聞いたところ、意外な真相が分かりました。


ジムさんは昔から、ワイン好きの桑田氏と何度も食事を共にした仲で、食事の席で桑田氏はいつも「ワインを造りたい」と熱く語り、そのたびにジムさんは「ぜひ、プロヴィダンスへ来て」と招待したそうです。


2010年、桑田氏がプロヴィダンスを訪問し、長期滞在しました。到着直後から寝る間も惜しみ、収穫、道具の洗浄、床掃除、発酵槽の洗浄とワイン造りの全工程で一生懸命に働いたそうです。


2週間目の深夜、桑田氏がジムさんと二人きりになった時、ポツリポツリと話し始めました。


その年の1月、父が誕生日の夜、火事で亡くなったそうで、もう一度、父とキャッチボールがしたかったのこと。気持ちの整理をつけるためプロヴィダンスへ来たところ、ジムさんと父が重なった……。それを聞いたジムさんは、桑田氏を「義理の息子」と思ったそうです。


2010年のプロヴィダンスは創業以来最高の出来。大学で工業デザインを専攻する娘、クリスさんが「桑田サンの背番号18をラベルに入れてはどう?」と提案し、ジムさんは「義理の息子」のために、世界中でこのラベルにすると決心しました。


プロヴィダンスの2010年には、そんな熱い人情が「隠し味」で入っているのです。


野球ファンへのプレゼントとして、これほど素晴らしく、元気が出るワインはありません。

サーベラージュのススメ

サーベラージュ

現代のフランスでも圧倒的な人気を誇るのがナポレオンです。モエ・エ・シャンドンは、ナポレオンと密接な関係にありました。


モエ家の3代目、ジャン・レミー・モエと、11歳年下のナポレオンは、ナポレオンが陸軍士官学校時代からの親友同士。士官学校では、派手な騎兵科に学生の人気が集中する中、戦略や大局を重視したナポレオンは砲兵科を専攻します。ジャン・レミーは、そんなナポレオンをしっかり支え続けました。


ナポレオンの欧州遠征により、ナポレオンと仲の良かったモエのお酒は「皇帝陛下のシャンパーニュ」として急激に広まり、ヨーロッパ中の貴族や文化人が愛飲して、ほぼ独占状態になります。


1812年、ナポレオンが大雪の中をロシアへ遠征する途中、モエ家に1泊した際、ナポレオンが自ら、フランス最高の勲章「レジョン・ドヌール」を授けました。


モエ・エ・シャンドン社の看板であり最も生産本数が多いのが、ブリュット・アンペリアル。この「アンペリアル」の名前は、3代目との深い友情を交わしたナポレオンに由来し、ナポレオン生誕100年を記念して名付けました。

 

戦場で勝利し、凱旋してきた兵士を讃えるため、ナポレオンはモエ・エ・シャンドンのシャンパーニュを抜いたのですが、人数が多くてコルクを抜くのが面倒になり、サーベルでネックを跳ね飛ばしました。


これがサーベラージュの始まりで、以降、勝利のシンボルとなります。


スポーツの勝者を讃える儀式として、これほど派手でカッコいいものはありません。意外に簡単なので、ぜひお試しください。


手順は以下の通りです。

①シャンパーニュをよく冷やし、泡を落ち着かせます。


②包丁の刃がガラスの上をスムーズに滑るよう、ボトルのネックに巻いたホイルを全部剥がします。


③ボトルの接合部分を確認します(ボトルは、タイ焼きみたいに右半分と左半分を繋ぎ合わせてあり、接合部の強度が弱いので、接合した縦の線に沿って包丁の刃をすり上げ、ネックの「顎」に刃を当てて刎ね飛ばします)。


④針金と金属キャップを外しましょう。こうすれば刃が直接ガラスに当たり、きれいに切れます。


⑤シャンパーニュのボトルの尻を左手で鷲掴みにし、斜め上30度上に向けます。右手に持った包丁の刃をボトルの接合部の線上に置きます。


⑥ボトルの顎を目がけ、思い切り良く「1、2、3」で刃を振り抜きます(軽い力でいいので、刃を止めずに、振り抜くことが重要です)。


⑦ボンと小さな音がして、ガラスがついたままのコルクがキレいな放物線を描いて3mほど飛び、泡はほとんど出ません。


⑧続いて、列席者のグラスにシャンパーニュを注ぎます。ガラスの欠片は、ボトルの5気圧で吹き飛んで中へは入りません。

タイミングと、刃が当たる場所が的確なら力は不要。バターナイフや、ワイングラスの円形の底で跳ね飛ばす人もいます。まずは、安価なスパークリングワインで1、2回練習すればコツが掴めます。


注意事項が一つ。サーベラージュの基本は室内での実施です。屋外でする場合、周囲に人がいないことを確認してください。


そうでないと私の場合のように「刃物を持った男たちが酒のボトルを持って大騒ぎしている」と警察に通報されてしまいます。


室内で、大騒ぎをしながら、勝者をお祝いしましょう。もちろん、シャンパーニュはモエのアンペリアルですね。

勝者をF1式でお祝い

シャンパン・ファイト

モーター・スポーツの花形が、最高速度300キロで疾走するF1です。


この勝者を祝うのがシャンパン・ファイトで、表彰台の1位、2位、3位の選手が大型ボトル(3リットルのジェロボアム)を思い切り振り、泡をかけ合って勝利を喜びます。スポーツの勝者に対し、これほど派手なお祝いはありません。


「シャンパン・ファイトと言えばモエ・エ・シャンドン」のイメージがありますが、意外にいろいろな銘柄のシャンパーニュが登場します。


1999年まではモエ・エ・シャンドン、2000年から2015年までは、G.H.マムのコルドン・ルージュ、2016年には、モエ・エ・シャンドンに戻り、2017年からは、カルボンとなりました(カルボンは、名前の通り、カーボン・ファイバーでボトルを作る超マニアックな生産者です)。


スポーツで、金メダル、銀メダル、銅メダルの3人をシャンパン・ファイトでお祝いするのは華やかで派手ですが、シャンパーニュだと経済的に厳しい場合が少なくありません。


そんな時には、お手頃価格ながら「シャンパーニュに負けたくない」とのスペイン貴族の想いとプライドがたっぷり詰まったカヴァがおすすめです。


ここで注意事項が一つ。決して、カヴァを冷やしていけません。


ワインの教科書通りにスパークリングワインを8℃に冷やしてシャンパン・ファイトをすると、服に冷たいワインが染みて、風邪をひきます。あくまで常温で、そして、派手にいきましょう。

冬の野外スポーツ観戦にはホットワインを

ホットワイン

厳寒の冬、ヨーロッパで外へ出る場合、欠かせないのが魔法瓶に入れたホットワインです。ラグビーやサッカー観戦から競馬まで、ホットワインはとても重宝します。


まず、魔法瓶からコップに注ぐと、コップを包んだ手の平の全体が温かくなります。フーフーと冷ましながら、熱々のワインを飲むと、温かい液体が胃袋流れる様子が分かり、一気に身体が温まります。鼻から息を抜くと、シナモンの鮮烈な香りで、頭は冴えわたりますね。


ホットワインのレシピはハムエッグを作るより簡単ですし、調理時間は5分ほどと短時間で完成。以下にレシピを載せます。

①魔法瓶の容量分のワインを鍋に入れ、熱を加えます。

沸騰させるとワインの苦みが出るし、アルコールも飛ぶので注意しましょう(アルコールと飛ばす場合、低温でゆっくり加熱します)。


②蜂蜜をスプーンに1杯入れます。


③レモンを加えると、酸味がキリっと効いてイイ感じに。


④シナモンや生姜を加えると、複雑な風味となり高級感が出ます。

本場では、クローブやスターアニスも使いますが、日本人にはクセが強すぎるかもです。

ホットワインに適した赤ワインですが、渋みが少なく、軽快なボディの赤がイイでしょう。


ブルゴーニュやアルザスのような寒冷地で造るスッキリしたピノ・ノワールがおすすめ。お手頃価格の赤でぜひ、お試しください。



以上、スポーツにピッタリのワインを4種類、ご紹介しました。「家の中でもワイン、野外でもワイン」ですね。

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