ここ20年で世界から注目を集めるようになったギリシャワイン。その理由の一つとして、ギリシャには200もの土着品種が今なお生き延びており、産地の風土を映す個性的なワインが生産されるようになったことが挙げられます。
ギリシャで古くから栽培されている黒ブドウ「クシノマヴロ」はその代表で、この非常に個性的なブドウから実に興味深いワインが造られています。
そこで今回はギリシャの土着品種「クシノマヴロ」を解説したいと思います。
クシノマヴロの特徴
クシノマヴロはギリシャ北部マケドニア地方のナウサ地区を原産とする黒ブドウで、主に単一で赤ワインやロゼワイン、また、ロゼのスパークリングワインが造られます。
種類 | 黒ブドウ |
主な産地 | ギリシャ ナウサ地区、アミンデオン地区 |
香り | 野イチゴ、チェリー |
味わい | しっかりとした酸味、豊富なタンニン |
クシノマヴロの「クシロ」はギリシャ語で「酸」、「マヴロ」は「黒い」を意味しており、その名の通り酸味が強く、タンニンが多いブドウです。
ネッビオーロやピノ・ノーワルとの類似性を指摘されることもありますが、遺伝的には独立しています。
クシノマヴロから造られるワインの典型的なスタイルは、中程度の濃さでミディアムボディ、酸がしっかりしており、タンニンも豊富です。
その豊富な酸とタンニンは長期熟成を可能にするため、クシノマヴロのワインはギリシャの赤ワインの中で最も熟成能力が高いとされています。
とりわけ良質なワインは複雑性に富み、しばしばイタリアの長期熟成ワイン「バローロ」と間違えられることもあるほどです。
代表的な産地
クシノマヴロの代表的な産地はマケドニア地方のナウサ地区とアミンデオン地区です。P.D.O.(※)ナウサはマケドニア地方の重要なアペラシオン(原産地呼称)で、クシノマヴロ単一品種による赤ワインにのみ認められています。
山地が多いマケドニアですが、それほど高い山がないナウサは海からの影響が強くなり、地中海性気候となります。夏は非常に乾燥するので灌漑が必要ですが、冬はヴェルミオ山の斜面に雪が積もります。
クシノマヴロの畑はそのヴエルミオ山の北東斜面、標高200〜500mに広がっています。砂地の軽い土壌からは早飲みタイプのワインが、粘土石灰質土壌からは長期熟成に耐えうるワインが生まれるといったように、この地域はテロワールが多様性に富んでいるため畑の個性を反映した様々なスタイルのワインが生産されています。
アミンデオン地区はナウサから見てヴェルミオ山の北西に位置し、標高は650mと高く、近隣の山脈から冷たい北風が吹き下ろす冷涼な産地です。昼夜の気温差の大きな山岳性気候ですが、五つの湖があることで緩和されています。
アミンデオンのクシノマヴロから造られるワインはナウサよりもがっしりとしたタンニンと骨格を備えているのが特徴です。またクシノマヴロの香りを活かしたロゼのスパークリングワインやスティルワインも多く造られています。
※P.D.O. Protected Designation of Originの略。EUの規定に則した原産地呼称を持つエリアのワインで、厳しい品質基準を備える。官能評価による品質チェック、規定範囲内のブドウ使用、栽培方法などが定められている。
おすすめのワイン
クシノマヴロの魅力をたっぷり堪能するには、ナウサで造られる「ラミニスタ」がおすすめです。
こちらのワインは、ナウサ地区の標高280~330mに位置する砂・粘土ローム質土壌の畑で育ったクシノマヴロを使用。16ヶ月間の樽熟成の後、12ヶ月の瓶内熟成を経てリリースされます。
10~15年もの熟成に耐え得る、クシノマヴロの特徴がはっきりと表れた力強い果実味と酸味が印象的な1本です。
生産者のキリ・ヤーニは、ジャンシス・ロビンソン氏や大橋健一氏をはじめとするマスター・オブ・ワインや世界のワイン評論家により高く評価され、現在ではギリシャ最高峰の造り手の一つとして知られています。
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まとめ
バローロと間違うほどの素晴らしいワインがギリシャの土着品種から造られているとは驚きです。
クシノマヴロのワイン、見かけたらぜひ試してみて下さいね。
参考文献:日本ソムリエ協会 教本2021 The World Atlas of WINE 8th EDITION / Huge Johnson & Jancis Robinson