「レストランで飲むワインは何だか、家で飲むワインよりも美味しい」と思ったことはありませんか? それもそのはず。レストランではワインを最高に美味しく飲んでもらうために、ソムリエが絶妙な調整をしてくれているんです。
ソムリエというワインを給仕するための専門家がいることからもわかるように、ワインは温度や時間、グラスなどによって味わいや香りが変わる繊細な飲み物。でもレストランだけでなく、自宅でもワインを美味しく飲みたいですよね?
そこで今回はご自宅でワインを美味しく飲むためのコツをご紹介します。
ワインを美味しく飲む4つの方法
ワインを美味しく飲む方法は下記の4つです。このポイントを押さえれば、自宅でも美味しくワインを楽しめます。
- 温度を調節する
- 種類に合ったグラスで飲む
- 料理とワインを合わせる
- 空気に触れさせる
①温度を調節する
ワインを美味しく飲むための最大のポイントは温度です。それぞれのワインに最適な温度で飲むと、驚くほど印象が変わることがあります。その理由は、温度によって味の感じ方が変わるから。お弁当を温めて食べるのと冷たいまま食べるのでは印象が違いますよね?
変化の原則は温度が高くなると甘み、旨みを感じやすくなり、温度が低くなると酸味、塩味、苦み(渋み)を感じやすくなります。これはシーソーのようなもので、どちらかのグループを感じやすくなると、もう片方のグループは感じにくくなります。
ワインのタイプ別に具体的な適正温度を後述していますが、あくまでも一般的な例なので、この原則を元に自分好みに調整するのがおすすめ。
渋くて酸っぱいだけでコクを感じられないと思った赤ワインは少し温度を上げてみたり、逆に甘いだけで渋みや酸味の物足りない味わいだと思ったら冷やしたりといった具合に、その調整は簡単です。
それでは種類別にワインが美味しい温度をご紹介していきます。
赤ワインは12℃〜18℃程度
「赤ワインは常温保存」というのが鉄則だと思っている人も多いでしょう。
たしかに温度と湿度がともに低いフランスでは、室内の日陰に置かれていれば、大抵の場合は適正温度の範囲内だと思われます。しかし、特に夏は高温多湿となる日本においては、常温では美味しく感じられない日が多いかもしれません。
赤ワインが美味しく感じられるのは20℃以下。グラスの中でも温度は上昇していくため、注ぐ際の目安は少し低めの12~18℃がおすすめです。
渋みの控えめなライトボディの赤ワインは12~14℃、渋みの強いフルボディの赤ワインは16〜18℃、ミディアムボディはその中間に。渋みと甘みのバランスを考えて、お好みのバランスで調整してみてください。
ただし、冷やし過ぎには要注意。渋くて酸っぱいだけになってしまうので、果実の風味が感じられる程度に留めておきましょう。
白・ロゼ・スパークリングワインは6~14℃
白ワインとロゼワイン、スパークリングワインは、一般的に赤ワインより低い温度が適しています。赤ワインと異なり渋みがほとんどないため、よく冷やして爽やかな果実味を楽しみましょう。
甘口であればフレッシュさを感じられる6~8℃の低温で、辛口の場合はタイプによりますが、スッキリと爽やかなタイプは6〜10℃、コクと深みのあるタイプは10〜14℃くらいがおすすめです。
②種類に合ったグラスで飲む
ワインをより美味しく飲むための2つ目のポイントは、ワイングラス選びです。
カップやワイングラス以外のグラスでワインを飲んだら、全然美味しく感じなかったという経験はありませんか? ワイングラスはワインの香りと味を最大限に引き出し、美味しく感じるように設計されているアイテムなんです。
ワイングラスには以下のような種類があるので、ワインのタイプに合わせて最適なものを使うとグッと美味しく感じられますよ。
- ボルドー型
- ブルゴーニュ型
- 万能型
- モンラッシェ型
- フルート型
赤ワインはボルドー型かブルゴーニュ型
赤ワインに適したグラスのタイプは、大きくボルドー型とブルゴーニュ型に分けられます。
ボルドー型は、グラスのボウル部分が比較的ストレートなタイプ。このタイプのグラスは、フランス・ボルドー産のように渋みが強く色調が濃い、フルボディの赤ワインに適しています。重厚な赤ワインの渋みがまろやかに感じられ、バランスのよい味わいを感じることができます。
ブルゴーニュ型はその名の通り、フランス・ブルゴーニュ産の赤ワインのように芳香性の高い赤ワインに適したグラスです。ボルドー型とは対照的にボウル部分が横に大きく広がった後にすぼまった形状をしており、ワインの香りを閉じこめることで、ワインの豊かな香りを最大限に楽しむことができるように設計されています。
白・ロゼワインは万能型かモンラッシェ型
大部分の白やロゼワインは、万能型のグラスを選びましょう。ボルドーグラスを小ぶりにしたような最も一般的な形のグラスです。
すっきりとしたタイプの白ワインやロゼワイン全般、軽めの赤ワインにも適しています。最初の1脚として買うならこのワイングラスをおすすめします。
一方、万能型ではボウルが小さいと思われる、オーク樽で熟成された香り高い白ワインを飲む際に適しているのがモンラッシェグラスです。ブルゴーニュ型と同じくボウルが風船のように膨らんでいますが、口径がすぼまっておらず、酸味をしっかりと感じ取ることができます。
赤ワイン用のブルゴーニュ型で代用しても良いですが、ベストを求めるワイン愛好家は検討する価値があります。
スパークリングワインはフルート型
シャンパンなどのスパークリングワインを楽しむ際は、フルート型のグラスを使いましょう。細長く、通常のワイングラスに比べて泡が抜ける時間を遅らせる効果があります。また、グラス内で泡が立ち上っていく様子を、視覚的に楽しむことができます。
しかし近年、シャンパーニュなどの高級なスパークリングワインに関しては、より香りと味わいを楽しめるように卵型のグラスや白ワイン用グラスが使われることも増えてきています。
③料理とワインを合わせる
そして3つ目のコツは、ワインに合う料理やおつまみを用意することです。
マリアージュやペアリングといった言葉がよく知られているように、ワインと食事はお互いに美味しさを高め合うことができる関係。相性が良い食事があると、ワインは何倍も美味しくなります。
ソムリエのようにベストマッチや驚きの組み合わせを見つけることは難しいかもしれませんが、コツさえ押さえれば、それなりに相性の良い食事を考えることは難しくありません。
ワインとメイン食材の色を合わせる
難しく考える必要のないおすすめの技が、ワインと料理のメイン食材の色を合わせることです。
例えば魚貝類であれば、鯛や平目といった上品な味わいの白身魚には白ワインが合います。そしてサーモンやエビにはロゼワイン、マグロやカツオなどの赤身魚には赤ワインが合います。これは肉でも同様に、鶏肉は白ワイン、牛肉は赤ワインとなります。
面白いところは、同じ鳥類でも鴨のように赤身の強いものは、やはり赤ワインの方が合うのです。魚には白ワイン、肉には赤ワインのような固定観念は捨てて、シンプルに見た目で考えてみましょう。
味付けとなるソースの色も同様です。同じ豚肉を調理するのでも、白いクリーム系のソースで味付けあれば白ワイン、醤油やバルサミコ、ポートワインなどを使った濃厚なソースは赤ワインとの相性が高まります。
ワインと料理の色を合わせると、自然と味わいの濃厚さが揃うんです。簡単なのでぜひ試してみてください。
ワインと共通する風味のある料理を選ぶ
次のポイントはワインと共通する風味のある料理を選ぶことです。
例えば、コショウの香りを持つシラー種の赤ワインのお供には黒コショウを削って、レモンのような爽やかな白ワインにはキュッとレモンを絞って。非常に単純なことですが、その風味がワインと料理の橋渡しとなり、相性の良さを引き上げてくれます。
ワインの味わいを想像することが必要になってくるので、少し上級者向けにはなりますが、前述の色合わせと併用するとプロ顔負けのペアリングになりますよ。
困ったらロゼワインとスパークリングワイン
「簡単といっても考えるのは面倒」という方におすすめしたいのが、ロゼワインとスパークリングワインです。
どちらも大当たりはあっても、外すことはほとんどないフードフレンドリーなワインとして知られています。特に、両者の特徴を併せ持つロゼスパークリングは、何でもこなすオールラウンドなワインです。
見た目も美しく、場も盛り上がるので、外さなければ良いという場面におすすめ。
④空気に触れさせる
ここまで美味しくなるためにコツをご紹介しましたが、そもそも買ったワインが渋すぎて好みではなかったことはありませんか?
そんな時は空気に触れさせて、しばらく待ってみましょう。ワインは空気に触れることで渋みがまろやかになったり、香りが豊かになったりと変化します。
注がれたグラスの中で変化を待ってもいいですし、抜栓したボトルからグラス1杯分ほど抜いておけば、ボトルの中でも十分に変化していきますよ。
ワインの楽しみ方4選
さらに美味しくワインを楽しむためのコツを4つご紹介します。
①ゆっくりと味わって飲む
ワインはビールやサワーのようなスピードで飲むものではありません。また、常にストレートで飲んでいることを考えると、アルコール度数も高い部類です。食事と一緒にゆっくりと変化を楽しみましょう。
NG行為としてやってしまいがちなのが、ゴクゴクと飲んでしまい、味も香りも良く分からないというパターンです。飲む前に香りを楽しむこと、口中を転がすこと、飲んだ後には鼻から息を抜くことの3点を意識して、ワインの味と香りを楽しんでください。
②スワリングは反時計回りでする
ワイングラスをクルクルと回す様子を見たことはありませんか?
この動作を「スワリング」といいます。前述のとおりワインは空気に触れると味や香りが変化しますが、スワリングをすることでこの変化を早めることができるのです。
プロっぽくてカッコいいので真似したくなりますが、スワリングにはひとつだけマナーがあります。それは反時計周りにグラスを回すということ(右利きの場合)。
こうすると勢いよく回してこぼしてしまった場合も、対面側ではなく自分側にワインがこぼれます。いざという時に人に迷惑をかけないための最低限のマナーです。
ドラマ仕立てでスワリングを解説
③注ぐ時は少なめに
ワイングラスって大きいですよね。つい上部までワインを注ぎたくなりますが、じつはワインを注ぐ適切な量はグラスの下部3割ほどまで。上部は香りを留めておくためのスペースなんです。
また大ぶりのグラスいっぱいにワインを注ぐとボトル約1本分の量が入ってしまうので、自分のためにもやめておきましょう。
注ぎ方について詳しくはこちら
④ワイングラスは脚の部分を持つ
ふと、自分のワイングラスの持ち方が正しいのか不安になったことはありませんか。ご安心ください。ワイングラスの持ち方に決まりはありません。
ただしフォーマルな場であれば、グラスの脚を持つほうが無難な選択といえるでしょう。
持ち方について詳しくはこちら
初心者におすすめのワインの選び方3選
酸味と渋みを気にして選ぶ
初心者がワインを選ぶ際に鍵となるのが、自分は酸味と渋みのどちらが苦手か考えることです。というのも、多くの初心者は、酸味か渋みのどちらかを苦手と感じる傾向があるから。
当然ながら白ワインに渋みはありませんが赤ワインよりも酸っぱく、赤ワインには渋みがあります。そしてフルボディの赤ワインは、軽めの赤ワインと比べると、酸味はよりマイルドで渋みが強いことが多いです。
自分の好みを考えて、白ワインか赤ワインか飲みやすいと感じた方から選んでください。渋みも酸味も、不思議とそのうち飲み慣れてきます。
甘口を選ぶ
そもそもあまりお酒が得意ではないという方におすすめなのが甘口ワイン。ワインは元々ブドウ果汁から造られているお酒ですから、甘口のバリエーションは非常に豊富です。
無理に辛口を飲もうとせずに、甘口ワインから飲み始めてみては?
度数が低いスパークリングワインを選ぶ
ワイン初心者が最も気を付けなければいけないことは、ワインは意外にもアルコール度数が高いお酒だということ。氷を入れて飲むことが多いその他のお酒に対して、基本的にはストレートで飲むワインはアルコール度数以上に強く感じます。
そこでおすすめなのがスパークリングワイン。一般的な辛口ワインのアルコール度数は12~15%ですが、スパークリングワインは比較的低アルコールで12%以下のものが多くなっています。
また、炭酸と若干の残糖分によって飲みやすく感じるので、いつもレモンサワーを飲んでいるような方は親しみやすいかもしれません。
ソムリエに相談!ワインの飲み方に関するよくある質問
ここでは、ワインの飲み方に関するよくある質問にプロのソムリエが回答します。質問は下記の2つです。
- お店ではどれくらいのペースで飲むべき?
- 温めても美味しく飲めますか?
Q.お店ではどれくらいのペースで飲むべき?
ボトルで頼んだワインを残しても全く問題ありません。無理のない、自分のペースで飲んでください。
ただし、レストランやコースによっては1皿1皿の食事に合わせて提供される場合もあります。その際は、余裕があればコースや同席の方と進行速度を合わせるなど、少しだけ気にしてもいいかもしれません。
Q.温めても美味しく飲めますか?
火にかけた鍋にワインやスパイス、果実、ハチミツを入れて飲むホットワインというものが、ドイツやフランスでは冬場に楽しまれています。しかし、どちらかというカクテルに分類されるものになります。
温めることによってワイン本来の香りや味わいは変わってしまうので、ホットワインにして飲みたい場合はできるだけ安価なワインで十分です。
ホットワインのアレンジレシピ
まとめ:飲み方をマスターして新しい趣味にしよう
長々とワインの飲み方に関することをご説明してきました。煩わしいと感じる方もいると思いますが、それだけ奥の深い世界が広がっているということでもあります。
これらを参考に美味しい飲み方をマスターして、新しい趣味として楽しんでみてください。