「スーパータスカン」という言葉を聞いたことがありますか?
スーパータスカンとは、ワイン法にとらわれず自由な発想で生み出されたイタリア中部トスカーナ州の上質なワインのこと。
そんなスーパータスカンの先駆けとなり、世界のワイン界に大きな影響を与えたのがサッシカイアです。
土着品種を使用したワインが重んじられる中、国際品種を使用し法律的には格下に位置付けられながらも多くの賞賛を得ました。
今回はそんなサッシカイアを生み出した名門「テヌータ・サン・グイド」の物語をお伝えします。
始まりはボルドーワイン愛から
テヌータ・サン・グイドの歴史は、マリオ・インチーザ侯爵の夢から始まりました。
大のワイン好きで若い時からワイン造りに興味を持っていたマリオ氏。
彼はイタリアの希少品種のカタログを監修していた大叔父に感化されて、20代の頃から実験的にブドウ栽培や瓶内熟成を行っていました。
特にボルドーワインを愛飲していた彼は、自分自身で全く新しいボルドータイプのワインを生み出すことを夢見ていました。
そんなマリオ氏にワイン造りのきっかけが訪れます。
1930年、ボルゲリの領主ゲラルデスカ家の娘と結婚し、広大なボルゲリの土地を相続することになったのです。
これを機にボルドーワインにも使用されているカベルネ・ソーヴィニヨンなどのフランスのブドウ品種を実験的に栽培してみることにしました。
その結果、ボルゲリで育ったカベルネ・ソーヴィニヨンが彼の理想とする香りを持っているということ、そしてボルゲリとボルドーの気候が似ているということを発見します。
この発見と第二次世界大戦の影響で大好きなボルドーワインを手に入れるのが難しくなったことから、マリオ氏はついに夢だったワイン造りを決意。
これまでの実験の成果を活かしてカベルネ・ソーヴィニヨンを栽培し 、趣味の延長として自分自身で楽しむために造り始めたのがサッシカイアです。
世界に衝撃を与えたサッシカイアの登場
それからしばらくはプライベートワインとして家族と友人との間で飲まれていたサッシカイアですが、品質の高さからついに1968年ヴィンテージで市場に出すことが決定します。
ワイン自体の品質は高かったものの、その当時イタリアのワイン法ではカベルネ・ソーヴィニヨンの比率が85%を超えるワインは原産地呼称を名乗ることはできず、サッシカイアはヴィーノ・ダ・タヴォラ(=テーブルワイン)として販売されるしかありませんでした。
また地元の人々はサンジョヴェーゼで造られたワインを重要視し、サンジョヴェーゼを使用した軽い飲み口のワインに慣れていたためカベルネ・ソーヴィニヨンから造られる力強い味わいのサッシカイアをあまり歓迎しなかったそう。
伝統的に土着品種を重んじるイタリアで、サッシカイアは厳しい立場に置かれていたのです。
しかしそんなサッシカイアに転機が。
1978年にロンドンで開催されたブラインドテイスティング大会で、サッシカイアは11か国33種類の有名ワインを抑え1位に輝いたのです。その有名ワインの中にはなんとシャトー・マルゴーも入っていました。
マルゴーをも超える評価を獲得したサッシカイアの実力が、これを機に世界的に知られることとなったのです。
ボルゲリという産地を造り上げた伝説
その後もサッシカイアの勢いは止まらず、1985年ヴィンテージがワイン・アドヴォケイトにてイタリアワインで初めて100点を獲得する快挙を成し遂げます。
そしてついに1994年にはボルゲリがDOCに認定。さらにボルゲリ・サッシカイアとしてイタリアで唯一単独ワイナリーとしてDOC昇格を果たします。
ボルゲリは今でこそスーパータスカンの聖地として広く知られていますが、マリオ氏がブドウを植樹し始めた当時は無名の産地でした。
しかしボルドーとの類似点を見つけ素晴らしいカベルネ・ソーヴィニヨンが育つと確信したマリオ氏により、そのポテンシャルが開花。
ボルゲリはサッシカイアをきっかけに、今や名だたる生産者がひしめき合うイタリアを代表する銘醸地となったのです。
止まらない進化と新たなチャレンジ
そして絶えず品質向上に取り組み進化し続けるテヌータ・サン・グイドのサッシカイアは、近年も高い評価を得ています。
2018年のワイン・スペクテーターの年間トップ100で2015年ヴィンテージが第1位に選出されたことに加え、2016年ヴィンテージではワイン・アドヴォケイトにて100点満点を獲得しました。
そんなテヌータ・サン・グイドはボルゲリの魅力をもっと多くの人に広めるため、実はサッシカイアと異なるコンセプトのワインを二つリリースしています。
グイダルベルトは、マリオ氏の息子ニコロ氏の「ボルゲリで一度も植樹されたことのないメルロに挑戦してみたい」「サッシカイアよりももっと若くして楽しめるワインを消費者に提供したい」という思いから生み出されました。
メルロをブレンドし、熟成を待たずしてボルゲリのテロワールやテヌータ・サン・グイドのスタイルを楽しむことができます。
またサッシカイアやグイダルベルトとは違い、サンジョヴェーゼをブレンドすることでトスカーナらしさを表現しているのがレ・ディフェーゼ。
このワインは元々ニコロ氏が娘であるプリシラ女史の結婚式のためだけに仕立てたものでしたが、その品質の高さから販売が決定しました。
凝縮感がありながらも柔らかくフレッシュな口当たりで、普段の食事にも合わせやすい味わいに仕上がっています。他の二つにはないサンジョヴェーゼならではの個性やトスカーナらしさが楽しめる1本です。
このようにテヌータ・サン・グイドはサッシカイアのさらなる発展だけでなく、より多くの人々にボルゲリ、そして彼らのワインの魅力を広めるために新たな取り組みにチャレンジし続けているのです。
まとめ
衝撃の登場から瞬く間に評判を呼んだサッシカイアを手掛け、イタリアワイン界に革命を起こしたテヌータ・サン・グイド。
法律にとらわれず美味しいワインを造りたいという純粋な思いと熱意、そしてボルゲリのポテンシャルを見出した先見の明により世界的なトップ生産者としての地位を確立したのです。
そんなテヌータ・サン・グイドの今後のチャレンジにも目が離せません。
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