V.D.N.(ヴァン・ドゥー・ナチュレル)とは?

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公開日 : 2023.3.30
更新日 : 2023.7.12
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ワインが入ったグラス

V.D.N.(ヴァン・ドゥー・ナチュレル)という甘口ワインをご存じですか?


日本では「天然甘口ワイン」と表されるこのお酒は、フランスで造られる酒精強化ワインの一種で、色合いもスタイルも様々です。


そこで今回は、V.D.N.の特徴や造り方、産地について詳しく紹介します。

目次

V.D.N.(ヴァン・ドゥー・ナチュレル)の特徴

樽

V.D.N.(Vin Doux Naturel ヴァン・ドゥー・ナチュレル)とは、ブドウ果汁の発酵中にアルコール(ブランデー)を添加し、発酵を停止させて造られる酒精強化ワインです。日本語で「天然甘口ワイン」と訳されます。


酒精強化ワインと言えばスペイン産のシェリー、ポルトガル産のポートやマデイラが有名ですが、V.D.N.はフランス産の酒精強化ワインで、そのほとんどが南フランスのラングドック・ルーション地方で造られており、主な原料ブドウはグルナッシュとミュスカ。赤・白・ロゼワインが造られています。


V.D.N.は原料ブドウの糖分が残った状態でアルコールを添加し発酵をストップさせるため甘口になります。このアルコールを添加して発酵を停止させることをミュータージュ(Mutage)と言います。V.D.N.のアルコール度数は15%以上になり、一般的には18%前後のものが多いようです。


V.D.N.は産地によって原料ブドウの構成から熟成方法まで実に多様です。


中にはボンボンヌと呼ばれる約30L容量のガラス瓶にワインを入れ、屋外で太陽にさらして熟成させたり、樽熟成時に目減り分のワインを補充せず、あえて空気に触れさせて酸化を促しながら熟成させる方法で造られるものもあります。


また、暖かい環境下で古樽によって長期間熟成させることで生まれる独特のランシオ香を持ったワインも造られています。

V.D.N.とV.D.L.の違い

フランス産酒精強化ワインにはV.D.N.の他にV.D.L.(Vin de Liqueur ヴァン・ド・リキュール)があります。名前が似ており間違いやすいですが、二つの違いは製法です。


V.D.N.がブドウ果汁の発酵途中にアルコールを添加して造られるのに対して、V.D.L.は未発酵のブドウ果汁にアルコールを添加し、樽またはタンクで熟成させて造られます。


V.D.L.の主な産地はラングドック地方やジュラ地方、またコニャックやアルマニャック地方です。添加するアルコールは地方によって異なりオー・ド・ヴィーやマール、コニャック、アルマニャックが用いられます。

V.D.L.についてはこちら

産地

ルーション地方のブドウ畑

V.D.N.の主な産地は温暖で日照量が多く乾燥した気候の南フランスです。V.D.N.全生産量の約9割がルーション地方で造られています。

ルーション地方

ルーション地方で造られるワインのおよそ2割がV.D.N.となっています。中でもルーション地方広域A.O.C.で、グルナッシュ・ノワール、グルナッシュ・ブラン、グルナッシュ・グリを主体に造られるリヴザルトはフランス国内でも人気の高いV.D.N.です。


リヴザルトにはアンブレ、グルナ、ロゼ、テュイレの4種があり、グルナはグルナッシュ100%、他の三つは白ブドウ品種を主体に造られます。


また、それぞれ熟成方法・期間にも規定があり、アンブレとテュイレは最低3年間の酸化熟成、5年以上熟成させた場合は「オール・ダージュ」、ランシオ香の生じたものには「ランシオ」の表記が可能です。


また、日本ではチョコレートと合わせるワインとして人気のバニュルスもルーション地方で造られるV.D.N.です。バニュルスはスペインと国境を接する地中海沿岸部に位置するA.O.C.で1936年に認定されました。この地域のブドウ畑は海に向かって傾斜する褐色片岩の険しい段丘にあり、暑さと乾燥により、樹に付いたまま干しブドウ状態になった果実から造られることもあります。


バニュルスには赤・白・ロゼワインがありますが、チョコレートと相性が良いのは赤のバニュルスで、グルナッシュ・ノワール主体で造られます。


バニュルスの上位A.O.C.として1962年に認定されたバニュルス・グラン・クリュは赤ワインのみで、オーク樽で30ヶ月以上の熟成が義務付けされています。

ローヌ

ローヌ地方南部ヴォクリューズ県ラストー村で造られるラストーは1944年にA.O.C.に認められたV.D.N.で、グルナッシュ・ノワール、グルナッシュ・グリ、グルナッシュ・ブランを主原料として、赤・白・ロゼワインが造られています。


ブドウ畑は南向きの斜面に広がっており、この地方に吹く冷たい北風(ミストラル)の影響を受けることなく、太陽光をしっかりと浴びた完熟ブドウから甘口ワインが造られます。A.O.C.ラストーにはV.D.N.の他に通常の赤ワインもあります。


また、ミュスカ・ド・ボーム・ド・ヴニーズもこの地方のV.D.N.で、ミュスカ・ア・プティ・グラン・ブランとミュスカ・ア・プティ・グラン・ルージュの二つのブドウ品種から、赤・白・ロゼワインが造られています。日本で見かけるミュスカ・ド・ボーム・ド・ヴニーズは白ワインが主流です。

コルス

地中海に浮かぶコルス(コルシカ島)北部、カップ・コルスに位置する17ヶ村を対象としたA.O.C.ミュスカ・デュ・カップ・コルスは、ミュスカ・ア・プティ・グラン・ブランから造られる白のV.D.N.です。


果汁の糖度は最低252g/Lなければならず、収穫年の12月31日までにアルコール添加を完了しなければなりません。原料となるミュスカ・ア・プティ・グラン・ブランの甘く華やかな香りとアルコールのヴォリューム感が特徴の甘口ワインとなります。

ラングドック

地中海沿岸のワイン産地ラングドック地方ではミュスカ・ド・リュネル、ミュスカ・ド・ミルヴァル、ミュスカ・ド・フロンティニャン、ミュスカ・ド・サン・ジャン・ド・ミネルヴォワの四つのV.D.N.がA.O.C.に認定されています。いずれも、白ブドウのミュスカ・ア・プティ・グラン・ブラン100%で造られます。


エチケットに「ミュスカ・ド・ノエル」と表記されている場合は新酒を意味します。

ラ・フリヴォル ミュスカ・ド・サン・ジャン・ド・ミネルヴォワ

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まとめ

V.D.N.は甘口と一言に言っても、一般的に白やロゼワインなら原料ブドウの香りや甘みがストレートに、赤ワインなら果皮に由来するタンニンとブドウの凝縮した甘味が感じられ、さらには熟成方法・年数に由来する樽の香ばしさや独特の風味が加わって、味わいはそれぞれ異なります。


日本ではV.D.N.はそれほど知名度が高くありませんが、だからこそ、見かけたらぜひ一度試してみてくださいね。

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