カビと共にブドウ栽培者の頭を悩ませるウイルス病。ブドウには20種類ほどのウイルス病が存在します。
そんなウイルス病の早期特定が最先端の画像技術によって可能になったと、NASAが発表しました。一体どういうことなのでしょうか?
ブドウのウイルス病
ブドウには20種類ほどのウイルス病が存在します。これらの病は、果実の糖度低下、着色不良、収量減少、ブドウ樹の弱体化や短命化といった症状をもたらすことがあります。
これに対処するブドウ栽培者たちは、カビによる被害との二重苦を経験しています。ブドウのウイルス病の中でも、リーフロール病は広く知られており、特に欧州系の黒ブドウ品種に典型的な症状が現れます。
この病気は地上でつるごとに分析し、その後に検査を行うことによって特定が可能ですが、従来、結果が得られるまでに時間がかかるため発病を防ぐことができませんでした。そもそも、このウイルスは感染後、人間が視覚識別できるまでに1年ほどの潜伏期間があります。
万が一、このリーフロール病に感染した場合、治療法はつるを除去するしかありません。検査はつる1本ごとに行わねばならないため費用がかかり、生産者にとって非現実的なのです。
アメリカではこのウイルス感染により、年間最大30億ドルもの経済的損失が発生していると言われています。
NASAの技術によるウイルス病の早期発見
そんなブドウのウイルス病に悩むワイン業界に朗報が。
南カリフォルニアにあるNASAのジェット推進研究所で開発された航空科学機器を使用することで、ブドウのウイルス病の兆候を正確に捉えることができると発表したのです。
研究者たちは、GLRaV-3と呼ばれるウイルス疾患に焦点を当て、機械学習とNASAの次世代航空機可視/赤外線画像分光計を使用してブドウ畑を観察しました。
その結果、感染前後のブドウを区別し、感染を最高87%の精度で特定することに成功しました。
この研究結果により目に見える症状が現れる前でも効果的にウイルス感染を識別することができるため、早期の対策が可能になるのです。
研究者たちは、このデータを農業関係者に提供し、植物の病害管理を改善するためのシステムを整備し、生産の持続可能性向上に貢献することを目指しています。
まとめ
この革新的な技術は、毎年多額の損失を被るブドウ栽培者にとって朗報です。
そして、これは単にブドウとワイン業界に留まらず、農業全体に貢献する可能性があります。NASAの最新技術が未然にウイルス感染を検知することで、農業全般に革命をもたらすことでしょう。
参考文献: 1."The Drinks Business" (2023, September 6). NASA Can Identify Grape Disease from the Sky. https://www.thedrinksbusiness.com/2023/09/nasa-can-identify-grape-disease-from-the-sky/ 2."NASA" (2023, August 4). NASA Helps Spot Wine Grape Disease from Skies Above California. https://www.nasa.gov/centers-and-facilities/jpl/nasa-helps-spot-wine-grape-disease-from-skies-above-california/ 3.Los Angeles Times. (2023, September 5). NASA's Aerial Imaging Helps Vineyards Monitor Grape Health. https://www.latimes.com/california/story/2023-09-05/nasa-aerial-imaging-wine-grape-disease-vineyard-health