【わたしのハレワイン&ケワイン】vol.7 菊池 美升さん(ル・ブルギニオン オーナーシェフ)
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あのひとの、特別な日に飲む「ハレ」ワイン、日常に馴染む「ケ」ワイン。
ワイン好きで知られるあのひとに、それぞれのワインと楽しみ方を語ってもらいました。
1966年北海道函館市生まれ。「オー・シザーブル」、「クラブNYX」を経て91年に渡仏。フランスの「オステルリー・ラ・プーラルド」と「ル・ジャルダン・デ・サンス」、イタリアの「エノテーカ・ピンキオーリ」などで計4年半研鑽を積む。帰国後に「アンフォール」で3年間シェフを務め、2000年1月に現在地で独立開業。
▼ハレワイン
僕にとって特別なワインは数えきれないほどあります。
その中でも息子の20歳の誕生日に開けたワインは印象深いものです。オスピス・ド・ボーヌのオークションで落とした2003年「ヴォルネイ・プルミエ・クリュキュヴェ・ブロンドー」は息子のバースデーヴィンテージ。届いてから息子の足型をラベルにスタンプして、息子の成長と共に大切に寝かせてきました。
開けてみるとワインはとてもよい熟成をしていて、お祝いの時間を彩ってくれました。残りの3本は、息子が結婚した時など特別な日に飲めればいいなと思っています。
人生の特別な時に飲むワインもですが、僕にとっては造り手と飲むワインもハレワインです。ブルゴーニュのワインがこんなにも好きになったのは、ブルゴーニュで修行をしているときに訪問した生産者たちとの思い出があるからです。ワインは学べば学ぶほど面白く、生産者ともコミュニケーションがとれる。僕は料理人ですが、そんなわけでワインが好きで、ブルゴーニュのワインには特に思い入れがあるんです。
お店で毎年フランスへ研修に行き、必ず生産者を訪問します。ロベール・グロフィエ、ジョルジュ・ルーミエ、コント・ラフォン、 ルーロ、トロ・ボーなど、皆とてもフレンドリーで、彼らの話を聞きながら、食卓を囲みながら飲むワインはかけがえのないものだと感じます。古くから付き合いのある生産者とは、「あの時はこうだったな」「僕らも歳を取ったな」「あの時の小さな子供が今は立派な当主になっているのか」と話は尽きません。
彼らとワインを飲む時間や空間が魅力的に映り、ワインが語らいのお酒だと思わせてくれるんです。彼らが日本に来た際はル・ブルギニオンで食事をしてくれるのですが、それもまた楽しみです。
▼ケワイン
僕はブルゴーニュのワインはみんな好きで、日頃飲むワインは90%以上がブルゴーニュ産です。
ル・ブルギニオンでは、ソムリエと共に僕もワインを考えているのでテイスティングをします。お店で出すグラスワインを決めるため、仕入れのため、飲み頃の確認のため、お客様にどうやって提供しようかと考えます。
休みの日には、広尾にあるワインショップを巡ります。ワイン好きにとって広尾は夢のつまった散歩コースです。ワインショップを巡って今日飲むワインを1、2本選びます。
僕は以前、イタリアのフィレンツェにあるレストラン、エノテーカ・ピンキオーリで1年ほど勤めていました。その時からブルゴーニュのワインは特に好きだったのですが、美味しく、食事に寄り添ってくれる親しみやすさがあるサンジョヴェーゼをデイリーワインとして飲んでいました。
ブルゴーニュは高く、アリゴテでもブルゴーニュ・ルージュでも3,000円以上になってしまいます。なんでもないお休みの日は2,000円くらいの美味しいワインにしたいので、よくキャンティ(※)を選びます。
ブルゴーニュが好きで、ブルゴーニュのワインが好き。ですが、たまにはイタリアやローヌ、シャンパーニュなど別の産地のワインを楽しみます。
※イタリアのトスカーナ地方で、サンジョヴェーゼから造られるワイン