モレ・サン・ドニ村の南側に位置するグラン・クリュ、クロ・ド・タール。この特級畑は今日まで約900年間にわたって一度も細分化されていない、ブルゴーニュでは非常に稀有な歴史を持つモノポール(単独所有の畑)です。
今回はこの由緒正しき偉大な畑、クロ・ド・タールを解説します。
産地 | フランス ブルゴーニュ コート・ド・ニュイ モレ・サン・ドニ村 |
面積 | 7.53ha |
土壌 | 粘土を含む石灰質土壌 |
品種 | ピノ・ノワール |
タイプ | 赤 |
テロワール
クロ・ド・タールはブルゴーニュのコート・ド・ニュイ地区モレ・サン・ドニ村にあるグラン・クリュで、標高は約270〜300m、東南東を向いた日当たりの良いなだらかな斜面にあります。
畑は約300m×約250mの長方形で、全長1.2kmの周囲は石垣で囲まれており、古くから特別な区画であったことがわかります。土壌は主に粘土を含む石灰質土壌ですが、微妙に異なる土壌が入り組んだ複雑な構造をしているため、畑はミクロクリマによって細分化され、大きく六つの区画に分けられています。そして収穫や発酵、醸造は区画毎に最適なタイミング、ブドウに合った方法で行われ、ワインに仕立てられています。
コート・ドール地区では一般的に斜面に対して垂直または斜めにブドウ樹が植樹されていますが、クロ・ド・タールでは斜面に対して並行になるように植樹されています。
ブドウ樹の平均樹齢は約60年、中には100年を超える樹もあります。植え替えには、遺伝子の違う株に穂木をして苗を育てるマサル・セレクションを採用し、クロの中には育苗のための圃場が設けられています。
2015年からはオーガニック農法に移行し、2016年からビオディナミ農法を導入。2020年にはビオディヴァンよりビオディナミ認証を取得しました。
モレ・サン・ドニ村の五つのグラン・クリュ
ワインの特徴
クロ・ド・タールは、ピノ・ノワールから造られる赤ワインです。
特異なテロワールに由来する濃厚な果実味と複雑味、緻密で繊細なタンニン、圧倒的な凝縮感、余韻。長期熟成のポテンシャルは非常に高く、まさにグラン・クリュの風格と威厳を具現化した赤ワインと言えます。2019年には醸造施設も刷新され、さらなる品質向上が期待されます。
なお、クロ・ド・タールの畑の樹齢25年未満のブドウからは、セカンドラベルのモレ・サン・ドニ・プルミエ・クリュ・ラ・フォルジュ・ド・タールが造られています。セカンドとはいえグラン・クリュと同じ方法で生産されているため、ワインのスタイルは似ています。グラン・クリュより早めに飲み頃を迎えます。
歴史
クロ・ド・タールは1141年にシトー修道会から派生したタール修道院が所有したことに始まります。
1789年のフランス革命で国に没収されるまでのおよそ650年間をタール修道院が管理し、その後1791年にロマネ・サン・ヴィヴァンの所有者で知られるマレイ・モンジュ家が畑を買い取りました。
そして1932年からマコネに本拠地を置くモメサン家が所有、2017年にシャトー・ラトゥールなどを所有するフランソワ・ピノーグループが買収し、クロ・ド・タールは2018年1月1日をもって 経営がモメサン家からフランソワ・ピノーグループ直轄のアルテミス社傘下になりました。
畑の誕生から今日に至るまでのおよそ900年間で畑の所有者は4生産者にとどまり、7.53haの畑は一度も細分化されていません。
土地が細かく分割され、一つのブドウ畑が多くの生産者によって所有されていることが一般的なブルゴーニュにおいて非常に希少です。