温暖化が地球を脅かす昨今。2023年は異常気象がワインの主要生産地に影響を及ぼしたことが原因で、ワイン生産量は過去60年間で最少になる見込みであることが発表されました。
その要因と影響を詳しく見ていきましょう。
気象条件の影響
2023年は地球温暖化による熱波に加えて、早霜、大雨、干ばつ等、極端な異常気象が世界中の産地に大きな影響を与えました。地中海沿岸の産地の多くは大雨の後べと病に見舞われ、チリは干ばつのせいで大規模な山火事が続きました。
O.I.V.(世界ブドウ・ワイン機関)の推計値によると、2023年のワイン生産量は1961年以来最低となる見通しで、歴史的に少なかった2017年の2億4,800万hLよりさらに少なくなると見越しています。
これはEUの主要生産国と南半球の収穫量減少に起因しています。EUのワイン生産量は1億5,000万hLで今世紀3番目に少ない量、南半球の生産量は4,500万hLと2003年以来の最低水準になると予測されています。
各産地の2023年生産量の見通しは以下の通りです。
・フランス
EU主要生産国で唯一2022年と同水準の生産量である4,580万hLになり、過去5年の平均を3%上回る見通し。2023年度は世界最大のワイン生産国となります。
コニャック、コルシカ、シャンパーニュは豊作、ブルゴーニュは雹の被害が多少あったものの概ね良好。
一方で、ボルドーは暑さと大雨によりべと病に見舞われ、ラングドック・ルーションは熱波と干ばつにより生産量が減少しました。
・イタリア
2022年より生産量12%減の4,390万hLの見通しで、2017年以来の最低水準。主に干ばつとべと病による被害が原因。
南イタリアでは降水量が激増し、シチリアはべと病の被害の大きさが影響しています。
・スペイン
2022年より生産量14%減の3,070万hLの見通しで、20年ぶりの低水準となる。主に干ばつとべと病の被害による。
・ドイツ、ポルトガル
好ましい気候条件で生産量は平均を上回る見通し。
・ギリシャ
2022年より45%減となる見通し。ギリシャ中央部のテッサリアやペロポネソス半島といった主要産地の多くで干ばつ、熱波の後の豪雨によってべと病が大量発生したことが原因。
・アメリカ
2022年より12%増加する見通し。数年続いた干ばつの後、ナパとソノマ地域の低温と冬の大雨がブドウの木に必要な水分をもたらしたため。
・オーストラリア
2022年より14%減となる見通し。降水量が増え、厳しい寒さやラニーニャ現象の影響による洪水が要因。
・チリ
2022年より20~30%減となる見通し。干ばつと山火事の被害を被ったため。
・南アフリカ
2022年より10%~30%減となる見通し。悪天候が要因。
・ニュージーランド
南半球の主要産地では唯一の例外で過去5年の平均を14%上回る見通し。
市場への影響と均衡
2023年産のワインは世界中の主要産地の多くで生産量減となったため、需要と供給の均衡が崩れる可能性が高くなります。
特にアジアのワイン市場は中国を筆頭に拡大し続けており、希少なワインや高級なワインは生産が減少した場合、価格が急騰する恐れがあります。人気のあるワインはますます手に入りにくくなるはずです。
一方で、世界のワイン市場は非常に複雑で、インフレが高止まりしていることもあり、世界的にはワインの消費量は減少しつつあります。2023年のオーストラリアの生産量減少は、異常気象の他に供給過剰による収量制限によるとの報告もあります。
いずれにせよ、2023年産のワインは貴重なヴィンテージになる可能性があるのです。
まとめ
気候変動問題はもはや他人事ではありません。
これからも美味しいワインを飲み続けるために、私たち消費者は何ができるでしょうか?ワインの未来について考えてみましょう。