【解消!ツレヅレハナコのワインもやもや Vol.2】今夜のごはんに合うワインを選べない!
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お酒と食と旅を愛する文筆家・料理研究家のツレヅレハナコさん。日々、ワインもたっぷり飲んでいます。ただし、品種、産地、ヴィンテージなどが複雑に絡む独自の世界にはお手上げのよう。
好きなワインのタイプが分かった次のもやもやは、夜ごはんと合わせる1本の選び方。その戸惑いをエノテカのソムリエである河に打ち明けました。
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酒と食と旅を愛する文筆家・料理研究家。著書にサクッと作れる&ちょっとヘルシーな酒の肴のレシピ『47歳、ゆる晩酌はじめました』(KADOKAWA)や台湾、シリア、フィンランドなど旅先で教わった料理の数々が詰まった『おいしいトコだけ世界一周食べ歩き ハナコの書き留めた味コピ! 世界の現地ごはん帖』(光文社)、2024年5月30日には『ツレヅレハナコのからだ整え丼』(Gakken)も刊行。惹かれるテイストを言語化できたことで、ソムリエとのコミュニケーションの幅が広がったそう。
J.S.A.ソムリエ、J.S.A.SAKE DIPLOMA。京都府出身。ワイン好きが高じて2018年にIT企業からエノテカへ転職。都内2カ所で販売職を経験後、マーケティング部にてコンテンツの作成に携わる。プライベートではワイナリーや酒蔵を巡り郷土料理とのペアリングも楽しむ。
河
「Vol.1 結局どんな味わいが好きなのかわからない!」で、ハナコさんの好みの白ワインは「ふくよかでジューシー」だと判明しました。その後、変化はありましたか?
ハナコさん
食の好みからタイプのワインを引き寄せるキーワードを知ったことで、飲みたいものを自分で選ぶ第一歩を踏み出せた感覚があります。おかげでちょっと自信がつきました。 ただ、晩ごはんとの合わせ方については悩ましい……。私は料理ありきでワインを決めていくので、好みの1本となじむかまではわかりません。
河
どうやってチョイスしているんですか?
ハナコさん
食事に関しては季節感を大事にしています。初夏の今からは白身魚のカルパッチョのようなさっぱりしたものを口にすることが多いかな。そこで手にするのは大抵が白ワイン。つまみと爽やかコンビになりそうだという、なんとなくのイメージです。
河
なるほど。では今回は食事と相性の良い1本をチョイスする2つのコツをお伝えしますね。これを押さえればワイン選びがグッと簡単になるので料理と組み合わせることが楽しくなりますよ。
ハナコさん
ぜひ、知りたいです!
河
まずは料理とワインの「色」を揃えてみましょう。惣菜の色味をワインに倣って白系と赤系に分けます。白系に分類されるタイのカルパッチョやイカの天ぷらなどには白ワインを、赤系のチキンのトマト煮やハンバーグ(ケチャップソース)を食べるなら赤ワインを飲むとおいしくいただけます。
ハナコさん
昔からよく聞く「魚には白、肉には赤」ですよね?
河
実はそうとも言い切れないんですよ。
ハナコさん
そうなんですか!?
河
はい。それこそが2つ目のポイントになります。「料理」に踏み込むと「食材」と「味付け」で区分ができます。「食材」では肉と一口に言っても、牛、豚、鶏、ジビエなどさまざまな種類がありますよね。魚も同様でタイやヒラメといった白身魚とマグロやカツオのような赤身魚に大きく分けられます。また、それらがどう「味付け」されているかまで意識をすると、料理とマッチするワインをチョイスできるようになるんですよ。 今日はハナコさんにその違いを実感いただくために、「塩味」と「タレ味」の焼き鳥を用意しました。
ハナコさん
おもしろい!
河
まず「塩味」は「キリッとフレッシュ」な白ワインとどうぞ。こちらはフランスのソーヴィニヨン・ブランになります。
ハナコさん
たしかに肉の中でも鶏は白っぽいですもんね。いただきまーす。
河
こちらの白ワインは辛口でありつつも、ブドウ由来のほのかな甘みも感じられるものです。青リンゴやグレープフルーツのような爽やかな風味が「塩味」の焼き鳥の旨味を際立たせます。
ハナコさん
塩だけのシンプルな味付けを邪魔しない飲み口ですね。おいしい!「塩味」の焼き鳥と白ワインって夏の最強ペアかも。
河
ちなみに辛口で爽やかなスパークリングとも相性抜群ですよ。 続いて「タレ味」の焼き鳥と「軽やかでチャーミング」な赤ワインをお試しください。こちらはチリのピノ・ノワールです。
ハナコさん
タレのコクと赤ワインの果実味がぴたっとハマってる。さっきの白ワインだとタレの味が勝ってしまいそうですね。逆もそうで「塩味」の焼き鳥と「軽やかでチャーミング」の組み合わせだと赤ワインの風味の方が強いのですべてを持っていきそう。 これまで「料理」を「色」の視点で考えたことがなかったです。もっと大雑把にさっぱりorこってりで分けていました。
河
「料理」を「食材」と「味付け」で分解することで、ベストなワインがピックアップできるようになるんですよ。 さらに補足をすると、味の濃淡にも着目するといいです。例えば焼き鳥のタレは醤油がベースのコクと旨味があります。そのため爽やかな白ワインではなく、果実味のある「軽やかでチャーミング」とよく合うのです。ただし、同じ赤ワインでも「濃厚でパワフル」だとワインのテイストが前面に出て、タレの風味が消される可能性が高いです。
ハナコさん
私はチーズでも迷います。コースのラストにいただくことが多いので、赤と白のどちらを選べばいいか分かりません。
河
モッツァレラやカッテージチーズのようなフレッシュ系なら白ワインを、エポワスやモンドールといった風味や塩味が強いウォッシュ系には赤ワインがおすすめです。これもまた「色」で分類できます。前者は白く後者は基本的に熟成によって表面が茶色くなっているので。
ハナコさん
たしかに!リコッタとか前菜で出ますもんね。そしてもれなく白ワインを飲んでいます。理にかなっていますね。
河
そうなんです。ワインがある食卓に並ぶ一品としてポークソテーやパスタもあると思います。塩コショウでいただくポークソテーなら白ワイン、ソース味で楽しむものなら赤ワインがおすすめです。パスタの場合は白ワインにはカルボナーラなどクリーム系が良く、アラビアータのようなトマト系は赤ワインがコクを引き立ててくれます。 このようにまずは料理とワインの「色」を揃えることから始めて、次のステップとして「食材」×「味付け」に注目する。これだけでどのワインを選べばいいかが明確になります。今日のごはんとベストな組み合わせを想像するとワクワクしませんか?
ハナコさん
はい!2つのコツを掴むだけで世界が広がるということがじゅうぶん分かりました。これまで浮かんでこなかった赤身魚と赤ワインのペアリングを楽しんでみることにします。
文=松岡真子 イラスト=鈴木七代
ハナココラム:取材を終えて
この料理には白?それとも赤?
レストランでなら、ワインを熟知するソムリエさんやシェフがペアリングで出してくれるものをそのまま飲んでいますが、家でとなると話は別。どうしても「えーと、まず魚は白で肉は赤よね」という長年の呪縛にとらわれていました。
今回、河さんのおかげで知ったのは、もう一歩踏み込んだセレクトの仕方。というか、逆に思い込みから一歩引き、全体を見て相性を考えることだったのかもしれません。
魚か肉かは一旦置いて、判断するべきは料理の“味わいの濃淡” 、すなわち 「爽やかさや軽やかさ。もしくは深みや重厚さ」。肉であってもシンプルな塩味なら軽やかだし、魚でもコクのあるトマトソースなら深みがあって濃厚。それを知るヒントの一つが料理の「色」!なるほど~!
さらに、今回の取材でおもしろかったのは、実際に料理と合わせながらの試飲。中でも焼き鳥の塩味とタレ味は、同じ鶏肉の部位と焼き方なのに合うワインがまったく異なり衝撃。お話の意味を一発で体感できるので、ぜひ皆様にもお試しいただきたいなあ。
調理法による色の違いのほか、印象的だったのは食材自体の色によるペアリング。先述の鶏肉は、肉類の中では白っぽいので白に合わせやすい。一方、赤身の魚(まぐろやかつお)は赤ワインに合う!
そこで今回は、今が旬の初がつおでおつまみを一品。大葉やみょうがなどの香味野菜をたっぷり使い、かけるタレはポン酢にマヨネーズとすりごまを入れてコクを加えました。脂ののった秋の戻りがつおに比べて初がつおはあっさりしているので、バランスの良い味わいになると思います。
合わせるワインはもちろん、「軽やかでチャーミング」なニュージーランド産のピノ・ノワール。ほのかなスパイスの香りが香味野菜とマッチし、ベリー系の果実味が赤身魚とコクのある味付けにぴったりです。確かにこれが軽やかな白ワインだと、少々かつおに負けちゃうかもなあ……。
私のワイン選びに、新たな選択肢が登場したのを実感しました!
レシピ:かつおの香味カルパッチョ
【材料 2人分】
かつおのたたき 1サク(約250g)
みょうが 2個
生姜 1かけ
大葉 4枚
かいわれ大根 1パック
〔タレ〕
ポン酢 大さじ2
白すりごま 大さじ1
マヨネーズ 小さじ2
和がらし 小さじ1
【作り方】
1.みょうがは縦半分に切って薄切り、しょうが、大葉はせん切り、かいわれ大根は長さを半分に切り、すべてボールに入れて混ぜる。器に〔タレ〕の材料を合わせる。
2.かつおは8㎜厚さに切り、器に並べる。薬味をこんもりとのせ、タレをまわしかける。
文=ツレヅレハナコ 写真=福田喜一
今回のコラムのワインはこちら
セラー・セレクション・ピノ・ノワール
赤
チャーミング&パフュームド
日本で一番売れているニュージーランドワインブランド、シレーニが手掛ける人気の赤ワイン。豊かに広がる果実味が魅力の親しみやすい味わい。 詳細を見る
4.0
(96件)2023年
2,200 円
(税込)