【解消!ツレヅレハナコのワインもやもや Vol.5】ブドウ品種ってたくさんありすぎ!
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お酒と食と旅を愛する文筆家・料理研究家のツレヅレハナコさん。日々、ワインもたっぷり飲んでいます。ただし、品種、産地、ヴィンテージなどが複雑に絡む独自の世界にはお手上げのよう。
Vol.4ではラベルに3W「①When いつ(収穫年)」「②Where どこで(生産国、原産地)」「③Who 誰が(生産者)」+「④ワイン名」+「⑤品種」が書かれていることを学び、ボトルを手にしては読み解く自主練を重ねているそう。
ワイン上級生に近づきつつあるハナコさんの前に立ちはだかるのは、ブドウの品種問題。数多くある品種との付き合い方をエノテカのソムリエである河に教わります。
前回の記事はこちら
酒と食と旅を愛する文筆家・料理研究家。著書にサクッと作れる&ちょっとヘルシーな酒の肴のレシピ『47歳、ゆる晩酌はじめました』(KADOKAWA)や、おばあちゃんになっても元気に楽しく飲むために腸をぐるぐる動かす惣菜を仕込んだ記録『ツレヅレハナコのからだ整え丼』(Gakken)などがあり。ワインと初めて触れたのは、学生時代に頻繁に訪れていたイタリアンのファミレスであったことを思い出した今日この頃。
J.S.A.ソムリエ、J.S.A.SAKE DIPLOMA。京都府出身。ワイン好きが高じて2018年にIT企業からエノテカへ転職。都内2カ所で販売職を経験後、マーケティング部にてコンテンツの作成に携わる。品種の名前も要素を絞って覚えやすいように整理した。
河
いきなりですがハナコさんにクイズです。ワイン用のブドウは何種類くらい存在しているでしょうか?
ハナコさん
えっ。30種類とか?
河
残念!イギリスを代表するワイン評論家が刊行したワイン用ブドウ図鑑には1368種類※が記載されています。
※ジャンシス・ロビンソンの著書『WINE GRAPES』より
ハナコさん
そんなにあるんですか!?そして、それを全部覚えないといけないのか……。
河
いやいや、それは無理です。僕もそんなにたくさんの品種を試していないですし、飲んだ品種をすべて記憶もしているわけではありません。
ハナコさん
ホッとしました。
河
驚かせてすみません。そもそもハナコさんはブドウ品種についてどんなイメージをお持ちですか?
ハナコさん
まず覚えないといけないトピックスという印象です。ワイン上級者が「カベルネ・ソーヴィニヨンをください」とオーダーしているのを見て、そうやって頼むものなんだと知りました。 それでちょっと勉強してみようと初心者向けの教本を開いたことがあります。でも、品種の特徴を読んでも飲み比べしないと違いが分からなくて。飲み比べのためにお店でグラスを1杯ずつ頼んでテイスティングする方法もあるんでしょうけれど、料理の相性で選ぶのでそこにたどり着きません。というわけで本を閉じ、品種を頭に入れることを諦めてきていました。
河
なるほど。品種ごとに特徴を知り、それぞれの違いを認識できるようになるのは、たしかにハードルが高いですよね。 ですが、ワインの原料は基本的にはブドウのみなので、その特徴がワインに反映されます。そのため味わいを読み解く大きな手がかりの一つは、「ブドウ品種」となるんです。
ハナコさん
先生から言われると頑張ろうという気持ちになりました。1000種類は無理でも100種くらいならいけるかな!?
河
モチベーションが上がってくださったようで嬉しいです。でも、ハナコさん、まずは白と赤でそれぞれ3種類を把握すれば大丈夫ですよ。この6品種を使ったワインは世界中の国で造られているので、これらの特徴を覚えれば、多くのワインが分かるようになるんです!
ハナコさん
一気にハードルが下がりました!
河
よかった。Vol.1での「好みのワインタイプ」を覚えていますか?
ハナコさん
もちろん。私は「ふくよかでジューシー」な白ワインに惹かれると導き出してくれたものですよね。
河
そうです。ほかには白ワインで「キリッとフレッシュ」「爽やかでフルーティー」と赤ワインの「軽やかでチャーミング」、「まろやかでフルーティー」、「濃厚でパワフル」と6タイプがあったと思います。実はこれが6つの品種に紐づいています。ハナコさんはまず好みの「ふくよかでジューシー」な品種から覚えていきましょうか。
ハナコさん
はい!
河
「ふくよかでジューシー」に当てはまるのはシャルドネです。
ハナコさん
ここに関しては飲んで記憶したのでばっちりです。
河
さすがです。今日はもう少し踏み込みますね。白ワインの品種の特徴を覚えるうえで軸となるのが「酸味」×「果実味」です。後者はフルーツに例えて表現をします。 シャルドネはおだやかな酸味と桃やマンゴーといったトロピカルな味わいが特徴です。ただ、シャルドネは産地によって味わいが大きく変わるので詳しくは次回お伝えします。
ハナコさん
なるほど。シャルドネの奥深さも気になるけれど、まずは「品種」そのものに集中します!
河
次の「キリッとフレッシュ」に当てはまる品種はリースリング。しっかりとした酸味があって、レモンや青リンゴのような味わいが特徴です。 続いて「爽やかでフルーティー」はソーヴィニヨン・ブランになります。爽やかでほどよい酸味はライムやグレープフルーツを彷彿とさせます。ハーブのような香りが最大のチャームポイントでもあります。
ハナコさん
2品種とも聞いたことがあります。なんなら、アルザスのリースリングはよく飲んでいます。
河
ハナコさんは白ワインがお好きですもんね。せっかくなので今日はいつもとは趣向を変えて、赤ワインに浸っていただきたいです。3品種のワインを用意しました。試飲しながら違いを感じましょう。
ハナコさん
わーい!待ってました!
河
赤ワインの軸となるのは「渋み」×「果実味」です。トップバッターの「軽やかでチャーミング」はピノ・ノワールになります。渋みは控えめでイチゴやラズベリーに例えられます。
ハナコさん
スルスルといけますね。
河
そうなんです。渋みのある赤ワインが得意でないという方におすすめでもあります。続いて「まろやかでフルーティー」のメルロをどうぞ。
ハナコさん
グラスに注がれたワインの色みがちょっと濃くなっています。「軽やかでチャーミング」よりしっかりしてそう。豚肉にトマトソースを合わせた料理が合うかも。って、以前、勉強した色みの法則を使ってみました(笑)。
河
素晴らしい!そしてさすがのペアリングです。ちなみにこちらは滑らかで程よい渋みとブルーベリーやプラムのような味わいが特徴です。では「濃厚でパワフル」なカベルネ・ソーヴィニヨンをお試しください。
ハナコさん
インパクトがありますね。これぞ、赤ワインのイメージです。
河
はい。しっかりとした渋みがあります。カシスやブラックベリーといった凝縮感のあるテイストです。
ハナコさん
3品種飲み比べて、キャラクターの違いが分かりました。体感すれば名前もスッと入ってきます。そして、先生が覚えるポイントを2つの軸に絞ってくれているので、分かりやすい!
河
記憶するにはできるだけシンプルな方がいいですからね。ちなみにハナコさんはどのタイプがお好みでしたか?
ハナコさん
「ピノ・ノワール」です。白ワインでは「ふくよかでジューシーなシャルドネ」が好みで、赤ワインだと渋みが控えめなものに惹かれる傾向が分かっておもしろいです。
河
好きな品種が分かったら、レストランやワインショップでオーダーしてみましょう。よりタイプの1本と出合える確率が上がっていきます。
ハナコさん
Vol.1でチャートを覚えてからは「軽やかチャーミング」と伝えていたんですけれど、これからはピノ・ノワールと言うようにします。あぁ、ますます上級者になった気分〜。
河
もし、ハナコさんの好きな品種がなければ、お店の方やソムリエに「ピノ・ノワールに近い品種はありますか?」とたずねるといいです。特にイタリアンでは今回の6品種に出合う確率は低いので、この聞き方をしてみてください。
ハナコさん
たしかに、イタリアンでこの6品種をあまり見かけないかも。なぜなんですか?
河
この6品種は世界各地で栽培されていて、イタリアでも造られているんですが、どちらかと言えばその土地原産の品種を使ってワインを造るのが主流なんです。なので、これら基本6品種より、イタリア原産のブドウ品種を使ったワインが多くなります。
ハナコさん
なるほど!だから見覚えのない品種が多いんですね。そうすると、イタリアンでよく目にするサンジョヴェーゼは品種なんですか?
河
そうです。イタリア原産の品種です。今日の赤ワイン3品種に例えるとピノ・ノワールのチャーミングさとメルロの果実味を合わせたような味わいですね。
ハナコさん
それを聞いてイメージが湧きました。ブドウの品種を覚えると味わいが具体的になりますね。
河
そうなんです。品種を知ることは好きなワインに近づくパスポートでもあるんです。
ハナコさん
ようやくパスポートが取得できましたので、知見を広げるためにも赤ワインを飲むことにします。
文=松岡真子 イラスト=鈴木七代
ハナココラム:取材を終えて
ワインビギナーが最初に引っかかる難関こそ、ズバリ「品種」。私自身、何度もここで挫折してきた身なので、かなり身構えておりました。とにかく、受験勉強並みに品種を暗記しなくちゃいけないんでしょ~?(ため息)
でも逆に、なぜこれまで覚えられなかったのかを考えてみると、理由はふたつ。「覚えようとする品種が多すぎた」ことと「名前を覚えたところで、味のイメージが伴わない」が大きかったような。
今回分かりやすかったのは、河先生が厳選に厳選を重ねた白赤3種ずつの品種に絞ってくれたこと。1300種以上の中から選ばれし6種!あくまでも基本のキとはいえ、これは心強い。さらに、これまで学んできた味わいに沿って立ち位置を整理できたので、「あ、この品種はあのタイプの代表か……」と一気に品種への親近感がわきました。おお、感動~!
そして、思ったのは「レストランで何も考えずにワインを楽しむ」だけでは、やはりワインと仲良くなるのは難しいということ。これまでは、それで十分だった私ですが、今回こそもう一歩先へ。「理解するつもりで、ワインと向き合いながら飲んでみる」のが大切!
と言っても、さほどハードルが高いことではありません。おすすめはズバリ、基本のワインだけを3種ずつ飲み比べてみること。それほど高級なものでなくてもOK。私自身、実際に並べて「これがピノ・ノワール、こっちがメルロ、こちらがカベルネ・ソーヴィニヨン……」と飲んだことで、その違いに納得できたからです。その際、白なら「酸味」×「果実味」、赤なら「渋み」×「果実味」……、このポイントを意識しながら飲み比べると違いも明確に(飲み比べにおすすめのワインを下記にリンクしておきます!)。
今回は、そんな飲み比べの中でも、ラスボス感のあるカベルネ・ソーヴィニヨンにぴったりのおつまみを。濃厚でパワフルなこの品種を、ガツンと牛肉のお料理が受け止めてくれますよ。
レシピ:牛肉のバルサミコソテー 焼きかぼちゃ添え
【材料 2人分】
牛切り落とし肉 300g
塩 少々
粗挽き黒こしょう 少々
小麦粉 小さじ2
かぼちゃ 200g
Aバルサミコビネガー 大さじ1と1/2
Aはちみつ 大さじ1と1/2
Aしょうゆ 大さじ1
Aにんにくのすりおろし 少々
クレソン 2茎
オリーブオイル 大さじ1
粗挽き黒こしょう(仕上げ用) 適宜
【作り方】
1.牛肉に塩、こしょうを振り、小麦粉をまぶす。器にAを合わせる。かぼちゃは3㎜厚さの薄切りにして水をくぐらせてから耐熱容器に並べ、ラップをかけて2分ほど加熱する。クレソンは3㎝長さに切る。
2.フライパンにオリーブオイルの半量を中火で熱し、かぼちゃを並べ入れて両面を焼く。一度取り出し、同じフライパンに残りのオリーブオイルを熱する。牛肉を加えて炒め、肉の色が変わったらAを加えて絡める。
3.器にかぼちゃ、牛肉、クレソンの順で盛り、粗挽き黒こしょうを振る。
文=ツレヅレハナコ 写真=福田喜一
今回のコラムのワインはこちら
モンテス・アルファ・カベルネ・ソーヴィニヨン
赤
パワフル&ストラクチャー
チリワインの確固たる地位を築いたモンテス社が、世界に誇るフラッグシップ・キュヴェ。エレガントで果実味豊かなフルボディ。 詳細を見る
4.3
(237件)2022年
2,750 円
(税込)
飲み比べにおすすめのワイン
エノテカが選んだ飲み比べにおすすめの白ワイン3本、赤ワイン3本です。ぜひ飲み比べて品種の違いを体感してみてくださいね。