日本各地で親しまれている鍋料理は、ご当地ならではのスタイルがあり、食材や味付けも様々。その土地ならではの文化や風土を如実に反映しているのが郷土鍋の魅力です。
今の季節に楽しみたい郷土鍋は、実はワインもよく合うのをご存じでしょうか。日本全国の郷土料理に詳しい郷土料理研究家の青木ゆり子さんは、「ワインは食事との親和性があるお酒。鍋料理にももちろんよく合います」と太鼓判を押します。全国各地の郷土鍋は、醤油、味噌、塩など味付けも食材も様々ですが、ワインも赤、白、ロゼ、泡、オレンジなど、タイプも味わいも多彩なため、その組み合わせは無限大です。「日本をはじめ、アジア圏の鍋はシェアしてみんなで楽しむのが一般的ですが、ワインもシェアして楽しむ飲みもの。気兼ねなく楽しむのにピッタリの組み合わせですし、ワインとのマリアージュは、鍋の奥深さをもっと広げてくれます」とお話しいただきました。
今年の冬は、温かい鍋と、その美味しさを引き立たせるワインで身も心も温まりませんか?
郷土料理研究家おすすめのワインに合う郷土鍋レシピ
郷土料理に関する情報を発信するe-food.jp代表。地域に根差した料理に魅せられ、世界各国、日本全国を旅する郷土料理研究家。大のシャンパーニュ・ラヴァーで、水炊きとシャンパーニュが定番のペアリング。郷土鍋とワインを合わせるコツは、気候が似ている土地で造られたワインを選ぶこと。
山梨県 ほうとう×オレンジワイン
ほうとうは、山梨を代表する郷土鍋です。麺をうち粉を付けたまま鍋に入れるため、トロッとしたスープが特徴で、濃厚でこっくりとした味わいとなります。樽香のする白ワインはもちろん、オレンジワインやロゼワインとも相性抜群です。
青木さん直伝の郷土料理レシピ ほうとう鍋
【材料】2人分 ほうとう麺 200g だし汁(煮干し) 1L 味噌 80g しいたけ 100g(薄切り) じゃがいも 1個(皮をむいて乱切り) かぼちゃ 120g(乱切り) にんじん 1/4本(皮をむいていちょう切り) 大根 40g(皮をむいていちょう切り) 長ねぎ 1/2本(1cmくらいに斜め切り) 白菜 100g(ざく切り) 油揚げ 1枚(短冊切り) 【作り方】 1.鍋にだし汁を入れて沸かし、かぼちゃ、にんじん、じゃがいも、大根を入れて柔らかくなるまで煮る。煮崩れを防ぐため、野菜は一度取り出しておく。 2.1に味噌半量と、ほうとう麺、しいたけ、油揚げを入れて麺がやわらかくなるまで煮込む。 3.白菜、長ねぎを加え、1の野菜を鍋に戻し、残りの味噌を加えてふたをし、3分蒸らす。 ▼アレンジポイント コクのある味噌ベースのスープは、様々なワインと美味しく合わせられますが、アクセントの七味をカレー粉に変えることでよりエキゾチックな味わいに。ワインとの親和性もグッと高まります。
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青木さんのペアリングコメント
たっぷりの野菜から溶け出した旨みを感じるスープには、ブドウの旨みがギュッと詰まったオレンジワインがピッタリ。かぼちゃのボリュームのある味わいには、オレンジワインの中でも温暖な気候で果実味がしっかりと感じられる南フランス産がおすすめです。
福岡県 水炊き×シャンパーニュ
鶏肉を骨ごと煮こんだスープの中に季節の野菜を加え、ポン酢で食べる福岡の郷土鍋。福岡では、年中親しまれています。鶏の旨みがたっぷりのあっさりスープは、野菜を味わう鍋といえるでしょう。樽を使っていない、フルーティーな白ワインがよく合うほか、鶏の旨みを引き立ててくれる熟成感のあるシャンパーニュもおすすめです。
青木さん直伝の郷土料理レシピ 水炊き
【材料】2人分 <だし> 鶏手羽先 300g(関節の部分を切り離す) 水 1リットル しょうが 20g(皮つきのまま厚く輪切り) 長ねぎ (青い部分を使用) <具材> 鶏もも肉 200g(一口大に切る) とうふ 1/2丁(4等分) キャベツ 1/4玉(ざく切り) えのき 100g にんじん 中1/2本(皮をむいて輪切り) 水菜 60g(5cmくらいに切る) 長ねぎ 1/2本(白い部分を1cmくらいに斜め切り) 【作り方】 1.出汁を作る。鶏手羽先にお湯をたっぷりかけて血合いを取る。水気を切って、水、しょうが、長ねぎの青い部分とともに圧力鍋に入れてふたをしないで沸騰させ、アクを取る。圧力をかけるためにふたをして弱火で1時間煮る。 2.1を土鍋に移し、鶏もも肉、必要あれば水を加える。30分ふたをして弱火で煮る。アクを取る。 3.2にキャベツ、えのき、にんじん、とうふを先に入れ、次に水菜、長ねぎを加えて少し煮込む。 4.3のスープと塩少々、またはポン酢をとんすいに入れて、青ねぎを加え、具を取って食べる。 ▼アレンジポイント つけ汁に合わせて、ワインを変えるのもおすすめです。ごまダレには、樽香の効いた白ワインを、ごま醤油タレには軽めの赤ワインを、ワインとのペアリングをお楽しみください。
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青木さんのペアリングコメント
温かな鍋にしっかりと冷やしたシャンパーニュが格別の組み合わせです。シャンパーニュの芳醇な果実味とキレのある酸味が後味をすっきりとさせてくれます。
ワインがすすむ日本各地の郷土鍋
日本全国にはその地域の暮らしや文化が根付いた美味しい郷土鍋がいっぱい。北は北海道から南は福岡まで、郷土料理研究家の青木さんに教えていただいたワインと相性の良い郷土鍋をご紹介します。
①北海道 石狩鍋
石狩川近くで生まれた漁師料理。野菜と共に、ぶつ切りにしたサケの身とあらを昆布出汁に入れて煮込む。鍋の濃厚な味わいに合わせるなら、酸味が控えめで、軽やかな味わいのワインがおすすめ。
【味付け】味噌
【食材】サケ、キャベツ、大根
青木さんのペアリングコメント
魚介類と相性の良いロゼワインやオレンジワインが好相性◎ ワインのほのかな苦みがサケの塩味を引き立てます。最後に山椒を振りかけるなら、スパイシーな風味を持つワインがよりマッチします。
②秋田県 きりたんぽ鍋
山籠り(※)の際にご飯の残りを棒に刺して焼き、それを鶏鍋に入れたことが鍋の起源。ゴボウや舞茸、セリが入る滋味深い味わいは、出汁感のある軽やかな赤ワインと風味を合わせたい。
【味付け】醤油
【食材】米、鶏肉、ゴボウ、舞茸、長ねぎ、セリなど
※農作業が終わる晩秋に、木の伐採や炭焼き作業で山へ入ること。
青木さんのペアリングコメント
醤油ベースのあっさりとした味付けには、マスカットベリーAやガメイを使った赤ワインがピッタリ。ゴボウやセリの豊かな香りに赤ワインの渋みが重なり、多層的な香りと深みが楽しめるペアリングとなります。
③山形県 芋煮
山形の名産である里芋を使った鍋。食材や味付けは地方によって異なり、村山地方は牛肉で醤油ベースの甘辛系、庄内地方は豚肉で味噌ベースのまろやか系。味付けによって、合わせるワインを変えるのがポイント。
村山地方
【味付け】醤油
【食材】里芋、牛肉、こんにゃく、ねぎ、きのこなど
青木さんのペアリングコメント
甘辛い醤油べースのスープには、ブドウの甘みを感じるグルナッシュを使った赤ワインがおすすめ。穏やかな渋みは牛肉から溶けた脂分をスッキリさせてくれ、果実味が旨みをキュッと引き締めます。
庄内地方
【味付け】味噌
【食材】豚肉、厚揚げ、こんにゃく、ねぎなど
青木さんのペアリングコメント
味噌ベースの濃厚な味わいには、樽香のあるシャルドネがよく合います。樽由来の香ばしい香りが、厚揚げやコクのあるスープとマッチするほか、きれいな酸味が心地よい余韻を作ってくれます。
④滋賀県 鴨鍋
琵琶湖に飛来してくるマガモを使った郷土鍋。越冬に備えて栄養を蓄えるため、風味と旨みが凝縮し、肉質が一段と柔らかくなった鴨肉に、豆腐やねぎなどの野菜を加えて煮込む。鴨の旨みが溶け込んだ甘辛い醤油スープは、軽めの赤ワインと相性抜群。
【味付け】醤油
【食材】鴨肉、ねぎ、セリ、焼き豆腐など
青木さんのペアリングコメント
ピノ・ノワールを使った赤ワインがおすすめです。凝縮されたベリー系の果実味と心地よいスパイス感が、鴨の弾力ある肉質や、脂の旨みと甘みに寄り添います。
⑤京都府 湯豆腐
お坊さんの精進料理が由来で、南禅寺の名物としても知られている。昆布の出汁が豆腐の味を引き立たせ、豆腐そのものの美味しさを味わえる。出汁醤油とポン酢で豆腐の温かさを感じながら食べる。つけダレによって合わせるワインを変えるのが通な楽しみ方。
【味付け】出汁醤油、ポン酢
【食材】豆腐、春菊
青木さんのペアリングコメント
ポン酢でスッキリと合わせるならすっきりとした酸味のリースリングを、出汁醤油なら温暖な地域のシャルドネと合わせてみてください。それぞれ違った角度から湯豆腐の味わいを深めてくれます。
⑥奈良県 飛鳥鍋
飛鳥時代に唐から乳製品が伝わり、貴族の間で牛乳を飲む文化が根付いた。そうした歴史的背景から誕生したのが、鶏肉を牛乳で煮た飛鳥鍋。しいたけや白菜、春菊などを使用し、味わいはさっぱりしながらもクリーミー。合わせるなら、ボリュームのある白ワインがGOOD。
【味付け】塩、出汁、牛乳
【食材】鶏肉、牛乳、春雨、しいたけ、白菜、春菊、人参、白ねぎ、ごぼうなど
青木さんのペアリングコメント
樽熟成をしたシャルドネやピノ・グリなどの白ワインがおすすめです。樽の香ばしいニュアンスと甘やかな果実味が、牛乳を使ったクリーミーな味わいによく合います。
⑦兵庫県 ハモすき
初夏以降が旬のハモと、同時期に旬を迎える淡路島の玉ねぎを使った鍋。ふっくらとして脂がのった甘みがあるハモには、複雑味のあるシャンパーニュを合わせることで、旨みの相乗効果を楽しめる。
【味付け】醤油
【食材】ハモ、玉ねぎなど
青木さんのペアリングコメント
ハモと玉ねぎを甘辛い割下で煮込んだ鍋には、香ばしいニュアンスのあるシャンパーニュがおすすめ。シャンパーニュのミネラル感がハモの風味とマッチします。
⑧福岡県 もつ鍋
第二次世界大戦後、もつ肉とニラをアルミ鍋で醤油味に炊いた料理がルーツ。プルプルのもつは、かみしめるほどに旨みが広がる。もつの脂が溶け込むことでコクのある味わいとなったスープには、ジューシーな赤ワインと合わせたい。
【味付け】醤油
【食材】牛もつ、キャベツ、ニラ、にんにく、唐辛子
青木さんのペアリングコメント
こってりとしたもつには、スパイシーな味わいのシラーズやサンジョヴェーゼのような赤ワインがおすすめです。ワインの果実味が、もつの脂が溶け込んだスープをすっきりと包み込んでくれます。
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