1963年、イタリアのワイン法が制定された際に、重要視されたのがイタリアワインの独自性でした。
より上位の格付けに認められるためにはルールに従い伝統的な品種を使っていなければならず、カベルネ・ソーヴィニヨンやメルロなどの外来品種の使用は厳しく制限されました。
そんな中、定められたワイン法にとらわれず自由な発想でワインを造ろうという生産者によって生み出され、今や確固たる地位を築いたワインがあります。
そう、「スーパータスカン」です。
イタリア・トスカーナ州で造られるスーパータスカンは、一つ一つの銘柄が枠組みにとらわれない自由な発想でワインを造っているため、実に個性的な味わい。
今回はそんな個性豊かなスーパータスカン4銘柄を、JSAソムリエ資格を持つエノテカスタッフがブラインドテイスティング(※)してみました。
※銘柄に関して何の情報も持たずにテイスティングを行うこと。
テイスティングをしたスタッフ
今回テイスティングに参加したスタッフはこちらの3名。いずれもエノテカを代表するテイスターです!
笠原 亮さん
JSA認定ソムリエ / WSET level3。
エノテカ国際事業部にて中国に5年間駐在し、現地事業の立ち上げを経験。
現在は商品部所属。ブランドマネージャーとして生産者の想いを伝える伝道師を目指して奮闘している。
宮嶋 秀之さん
JSA認定ソムリエ。
都内で20歳からソムリエ修行を行い、1998年JSA認定ソムリエを取得。レストランでソムリエに従事する傍らコンクールにも出場、多数の入賞歴を誇る。
井出 智也さん
JSA認定ソムリエ / WSET level3。
第8回J.S.A.ソムリエ・スカラシップ受賞。
大学時代、フランス留学中にワインに興味を持つ。成城学園前店に勤務後、現在は通販事業部で企画制作・予算策定を担当。WSET Diploma受験中。
4銘柄を飲み比べ!
今回テイスティングしたのは、「元祖スーパータスカン」と呼ばれるサッシカイアをはじめ、いずれもスーパータスカンを代表する以下の4銘柄。
ワインは抜栓から30分後の状態でテイスティングを行いました。
①(カマルカンダ)について
宮嶋:さっそくですが今回テイスティングした中で、どのワインが一番好みでしたか?
笠原:私は①と②で迷いました。どちらか選ぶとすると①だったんですが、果実のニュアンスとバランスが良いなと感じました。特に滑らかなタンニンが好印象です。
宮嶋:タンニンがすごくシルキーですよね。ボディは少し軽めでオークは控えめな造り。非常に現代的なスタイルだなと思いました。
笠原:エレガントで伸びやかな酸味とフレッシュな果実味が感じられますよね。
井出:そうですね。酸味がしっかりしていて、絶妙なハーブの香りが爽やかな余韻を造っていると思います。いわゆる“エレガント”なワインだと思います!
宮嶋:上品で繊細なワインを好む方におすすめしたいですね。
・きめ細やかなタンニンとフレッシュな酸味を持つミディアムボディ
・現代的でエレガントなスタイル
②(サッシカイア)について
井出:私は②が良いと思いました。奥行きがあり、全体の要素が調和していて欠点がない。熟成のポテンシャルもあるのかなと思いました。
宮嶋:①と比べるともう少し凝縮感があって、オークも控えめではありますが効いている。今飲んでも美味しいし、長期熟成もできますね。
笠原:余韻が現時点でとても長いですね。
宮嶋:そうなんです。
笠原:全ての要素が高い位置でバランスをとっており、非常に高い熟成ポテンシャルを感じます。今からでも楽しめますが、少しエイジングさせて柔らかくなった状態で楽しみたいワインですね。
・元祖スーパータスカンの貫禄を見せる長い余韻
・今飲んでも美味しいが、長期熟成も可能
③(ペトラ)について
宮嶋:現時点では、今回テイスティングしたものの中で最も複雑な香りだと感じました。長期熟成によるキノコや土などの香りがしますね。
井出:外観も縁がオレンジかがっていて、ドライフルーツや森のような熟成香もありました。
笠原:井出さんの言う通り、若干の熟成感と果実の凝縮感がこのワインの個性かなと思います。
井出:確かに。果実の凝縮感は私も強く感じました!
宮嶋:メルロのような果実の強さがあって、ボルドー右岸、ポムロルを彷彿とさせられました。
宮嶋:どんな方にこのワインをおすすめしたいですか?
笠原:味わいに丸みがあって親しみやすく、熟成感のある奥深い味わいなので、「良いワインを買ってみたい」と思っている人に飲んでみてほしいですね。
井出:樽も溶け込んでいて強すぎないので、飲みやすいですよね。果実味がしっかり感じられるので、ナパのワインが好きな方にもおすすめしたいです。
・ポムロルを彷彿とする凝縮感と複雑な風味
・たっぷりとした果実味
④(グアド・アル・タッソ)について
井出:今回のテイスティングの中で、一番濃い色調ですよね。
笠原:高い醸造テクニックを感じますね。しっかりと感じられる樽感は、少し熟した果実のニュアンスとバランスがとれています。
宮嶋:そうですね。バニラなど明らかなオークの香りが感じられて、明るい果実味もあり最もわかりやすいスタイルかなと思いました。
井出:リッチな味わいで、素直に美味しいと感じられるワインですよね。
宮嶋:近づきやすく誰でも美味しいと思えるスタイルなので、スーパータスカンを初めて飲む方やギフトに良いかもしれませんね。
・素直に美味しいと思える明るい味わい
・初めてスーパータスカンを飲む方やギフトにおすすめ
まとめ
今回のテイスティングを通して、改めてスーパータスカンに多様性があることを実感する機会となりました。
イタリア人の自由な発想のもとに生まれたスーパータスカン。その進化は留まることを知らず、今後も目を離せません。
まだスーパータスカンは飲んだことがないという方は、まずはお気に入りの1本を見つけてみてはいかがでしょうか。
スーパータスカン一覧