一昔前まで国際的な市場ではあまり知られていなかったイタリアの土着品種、リボッラ・ジャッラ。
近年のオレンジワインの流行とともに日の目を浴びるようになり、今となっては新しいワインジャンルを生み出したブドウとして世界が注目しています。
今回はリボッラ・ジャッラの歴史を振り返りつつ、このブドウから造られるワインの魅力を紹介します。
リボッラ・ジャッラの基本情報
種類 | 白ブドウ |
主な産地 | イタリア / フリウリ・ヴェネツィア・ジューリア州 スロヴェニア / プリモルスカ地域(ブルダ) |
香り | レモン、グレープフルーツ、アカシア(白い花) |
味わい | フレッシュな酸味とミネラル感 白ワインの場合は軽やか、オレンジワインの場合はコクがある |
リボッラ・ジャッラは主に北イタリアのフリウリ・ヴェネツィア・ジューリア州(以下、フリウリ)東部と、その地域に隣接するスロヴェニアのブルダ地区で栽培されている白ブドウです。
この地域の土着品種で、フリウリとブルダ以外では見かけることはあまりありません。スロヴェニアではレブラと呼ばれています。
リボッラ・ジャッラは果粒の小さいブドウで、薄い果皮は淡い黄色で斑点が見られます。
フリウリでは少なくとも13世紀には栽培されていたという記録が残っており、15世紀頃にはリボッラ・ジャッラのワインの評判が高かったことも知ることができます。
しかし、19世紀後半にヨーロッパを襲ったフィロキセラによってリボッラ・ジャッラの植栽も大きな被害を受け、それを機に、フリウリのブドウ農家の多くが、地元のブドウ品種よりもメルローやソーヴィニヨン・ブランなどフランス系の外来品種に植え換えました。
そして、20世紀後半にはフリウリはフレッシュで洗練された白ワインの産地として世界から高い評価を得ました。一方で、1990年代を迎える頃には、原産地統制呼称 (D.O.C.) の規定に従って生産されたフリウリの全白ワインのうち、リボッラ・ジャッラを含むものは1%以下まで減少していました。
しかし、近年の世界的なオーガニック市場の拡大とともに、ワインの世界でもオーガニックブドウを原料とし、醸造にできるだけ人工的な手法を用いない自然派ワインの生産が増えてくると、オレンジワインの原料として用いられることの多いリボッラ・ジャッラの栽培面積も増加傾向に転じました。同じ時期に、イタリア各地で土着品種の見直しが進んでいることも増加を後押ししていると思われます。
リボッラ・ジャッラから造られる白ワインは、色合いは黄色〜黄金色、繊細な花(アカシア)の香りや柑橘系のレモンやグレープフルーツ、青リンゴのようなフレッシュなか香りが特徴で、味わいには酸味とミネラルが比較的しっかりと感じられます。
また、オレンジワインの場合は、マンダリンや黄色い花のような華やかで甘味を連想する香りがありますが、味わいは極めてドライで適度なタンニンと心地良い苦味があります。また、数年熟成させたものは非常にコクのある味わいになります。
オレンジワインの原料として人気
フリウリはオレンジワインの生産が有名な産地です。昨今は世界的な土着品種回帰の流れもあり、リボッラ・ジャッラから造られるオレンジワインは非常に注目されています。
そもそもオレンジワインとは、赤ワインと同じ手法で白ブドウから造られるワインのことです。
ブドウ果実の破砕後に果汁と果皮を一定期間低温で接触させ果皮に含まれている成分を果汁に抽出し造るため、ワインはオレンジ色を帯びた色合いになります。その結果、味わいは果皮から抽出されたタンニンを備え、ちょうど赤ワインと白ワインの中間のスタイルに仕上がります。
オレンジワインのルーツは、ジョージアで古くから行われていたアンフォラ(素焼きの甕)で造られていたワインにあります。アンフォラにブドウを房ごと入れて醸すことで、酵素などの添加物を、場合によっては酵母も加える必要がなく、発酵途中は果皮が果汁の蓋をして酸化を防ぐため、亜硫酸(酸化防止剤)の添加も少なくて済むとされています。
このような醸造方法にヒントを得たフリウリの自然派ワインの生産者ヨスコ・グラヴナー氏が、1998年にアンフォラでオレンジワインを造り始めたことをきっかけに、イタリアの主に自然派ワイン生産者の間でオレンジワインの製造が広まり、その後スロヴェニアやフランスにも広がりました。
よって、ワインの新たなカテゴリーとしてのオレンジワインは、フリウリが発祥(復活)の地と言えるでしょう。
イタリアワイン界を代表する生産者であり、オレンジワイン復活の第一人者であるヨスコ・グラヴナー氏はフリウリとスロヴェニアにまたがってブドウ畑を所有しています。
以前は、リボッラ・ジャッラの他にシャルドネやソーヴィニヨン・ブランなど複数のブドウを栽培し、それらをブレンドした白ワインを造っており、高い評価を得ていました。
しかし、2012年以降はリボッラ・ジャッラしか栽培していません。彼がリボッラ・ジャッラの可能性を見極め、オレンジワインの生産に絞ったことは、世界中のワイン関係者に少なからず影響を与えているはずです。
リボッラ・ジャッラと相性の良い料理
リボッラ・ジャッラの白ワインとオレンジワインに相性の良い料理を紹介します。
白ワイン
リボッラ・ジャッラの白ワインは、なんと言ってもフレッシュな酸味とミネラル感が魅力です。
キリリと冷やしたリボッラ・ジャッラの白ワインには、カルパッチョやアクアパッツアなどのシーフード料理や、暑い時期にはトマトやツナ、バジル等のハーブを効かせたサラダや冷製パスタ等がよく合います。
また、羊のミルクで造られたペコリーノチーズや、フリウリの名産であるサン・ダニエーレの生ハムとの相性は言わずもがな。ペコリーノチーズも生ハムも塩味がしっかり効いているので、ミネラル感のあるリボッラ・ジャッラのワインと相性がとても良いのです。
オレンジワイン
白ワインのニュアンスを持ちながら、適度なタンニンと赤ワインのようなストラクチャーを持ち合わせたオレンジワインは、前菜からメイン料理まで合わせられるオールラウンダー。
特にリボッラ・ジャッラのオレンジワインはドライで心地良い苦味を持ち合わせていることが多いため、幅広い料理と合わせることができます。
簡単なおつまみなら、サラミやパンチェッタ、スモークサーモン、パルミジャーノチーズなど。
和食もあまり外すことはありません。塩で食べる天ぷらやレモンを絞った唐揚げはもちろん、少し熟成した旨味の強いオレンジワインは生姜焼きや肉や魚の味噌漬け焼きなど味噌とも相性が良いのでおすすめです。
さらに面白いのは韓国料理やアジア料理など香辛料を使った料理とよく合うことです。
海鮮チヂミや豚バラ肉の焼肉サムギョプサル、ヤムウンセン(タイ料理で春雨やエビがたっぷり入った甘辛いサラダ)、バインミー(肉や野菜、ハーブをはさんだヴェトナムのサンドイッチ)など。最近、アジア料理はテイクアウトもよく見かけますので気軽に試してみてはいかがでしょうか。
まとめ
長年、限られた地域でのみ栽培されてきた土着品種のリボッラ・ジャッラが、オレンジワインのブームの立役者として、ここまで世界が注目するブドウになるとは地元の生産者達も夢にも思わなかったかもしれません。今ではカリフォルニアでもリボッラ・ジャッラから高品質なワインが造られています。
現在はオレンジワインが人気のリボッラ・ジャッラですが、暑い季節には白ワインも大変おすすめです。是非、しっかりと冷やしてお楽しみ下さい。
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