第59回 繊細さと強さ

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公開日 : 2022.2.28
更新日 : 2023.7.12
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奇怪な用語が飛び交うワインテイスティング。フルーツや花ならまだしも、スパイスに、ミネラル、焦げ香??しまいには動物臭?!ですが、これにはきちんと意味があるのです。ソムリエ目線で、毎回難解なテイスティング用語や表現などを解明!


あなたもイメージを膨らませてテイスティングに挑戦してみてはいかがでしょうか。

複数のワインをサービスする(楽しむ)際に、その順序は大切です。


軽いものから強いものへ、若いヴィンテージから古いものへ、シンプルなものから複雑なものへ、低価格なものから高価格のものへといったセオリーがあります。


これを守ろうとすると、なかなか難しいのがペアリングです。


コースメニューの料理は必ずしもワインのそれと同様の順序では組み立てられていないからです。フォワグラの前菜の後に野菜料理がきたり、シンプルな魚料理の前に複雑な料理がきたりするからです。


持ち寄りのワイン会では、たいていボルドーとブルゴーニュの赤ワインがあると思います。同じヴィンテージ、同じ価格帯だったら、どちらが先でしょうか? 


『ボルドーが先』がセオリーなんです。「えっ?!凝縮感があって、渋みの強いボルドーが後では?」と思われる方も多いでしょう。ソムリエからもお客様からも疑問を寄せられることがしばしばあります。


シャンパーニュがブラン・ドゥ・ブランとブラン・ドゥ・ノワールの場合はどうでしょう? 前者はステンレスタンク醸造のクリーンで爽やかなタイプ、後者は樽醸造し複雑でボリュームのあるタイプです。こちらもブラン・ドゥ・ブランが後にくるべきです。

オールマイティに個性を発揮する

シュロス・フォルラーツ シュロスベルグ・グロ―セス・ゲヴェックス 2016は緻密で繊細、やや落ち着きというか抑制された印象です。


よく熟した洋梨にマイヤーレモンの芳香、エルダーフラワーがもたらす華やかさと清涼感に、リンデン(菩提樹の葉)やワックスが深みを与えます。さらにキルッシュ(チェリーブランデー)や石灰のような香りも潜んでおり、繊細さ、緻密さ、奥行きが見事に調和しています。


しなやかで、流れるような口当たりは、ドイツ産リースリングの真骨頂です。味わいの基盤となる溌剌として直線的な酸味がラインガウらしさを際立たせます。心地よい苦味のシリアスな余韻となりますが、酸味と溶け合い、しっとりとした印象をつくります。


「繊細さは力強さを凌駕する」と教わりました。繊細さ、しなやかさは軽さや弱さではないともいえます。


「複雑さ」にも熟成による複雑さとポテンシャルとして備えた複雑さでは違ってきます。そしてワインの価値を示す要素、「余韻の長さ」が供出順においても決め手になるのです。


繊細で複雑、酸味を基調としたしなやかで余韻の長いこのワインは樽熟成した白ワインや凝縮感のある赤ワインの後にサービスすることができます。決して、「口直し」ではありません。


ペアリングにおいてはスタートでも中盤でも、後半でもオールマイティにその個性を発揮することでしょう。

今回紹介したワインはこちら

歴史あるドイツの名門ワイナリーが手がける、辛口リースリングの最上級キュヴェ。グロ―セス・ゲヴェックスはドイツのグラン・クリュにあたります。白い花の香りと、ミネラル感のあるドライな味わいが魅力の1本です。

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