奇怪な用語が飛び交うワインテイスティング。フルーツや花ならまだしも、スパイスに、ミネラル、焦げ香??しまいには動物臭?!ですが、これにはきちんと意味があるのです。ソムリエ目線で、毎回難解なテイスティング用語や表現などを解明!
あなたもイメージを膨らませてテイスティングに挑戦してみてはいかがでしょうか。
Mr. Gérard Margeon、私が非常に強く影響を受けたソムリエの一人です。
2004年、長年勤めたホテルニューオータニを辞め、ベージュ東京(現ベージュ アラン・デュカス東京)へ移籍したのは世界的なシェフと働いてみたい、という想いからでした。
その頂点に君臨するアラン・デュカス氏率いる世界30店舗にもおよぶ大グループの統括ソムリエがマルジョンさんです。
開業に先立ち、パリを訪れると、180cmはゆうに超える長身、俳優のような容姿のマルジョンさんが現れました。
事務的な話を済ませると「さあ、テイスティングをしよう」と何種類ものワインを用意してくれました。
それから会うたびに、東京でもパリでも、テイスティングを一緒にしなかったことはありませんでした。それほどにマルジョンさんはテイスティングを重視していたのです。
テイスティングを怠るのはソムリエではない、と教わりました。そして、私のテイスティングメソッドの大部分はマルジョンさんから傍受したものとなりました。
マルジョンさんのテイスティングコメントはとにかく本質的で、明確。あいまいな言い方はしません。
そして詳細に富んでいます。たとえば、「赤いフルーツ」というベリーフルーツの総称は使いません。「ラズベリー」と「ブルーベリー」を明確に使い分けます。
ラズベリーならメルロー、ブルーベリーはシラー、カシスはカベルネ・ソーヴィニヨンといったロジックが頭脳にインプットされているかのようでした。
そして、ラズベリーでも、クロッカン(熟しているが実はカリッと噛めるような)、ミュール(完熟)、エクラゼ(完熟を過ぎて表面が潰れたような)を明確に使い分けます。
毎回感心させられるのが、アップデートです。
以前にはなかったロジックや新しい語彙を使うのです。
マルジョンさんと働いた6年、そして2016年世界大会出場のために1ヶ月間パリで受けたトレーニング。この連載を10年も続けられるほど語彙が豊富になったのはマルジョンさんのおかげにほかなりません。
レゼルヴ・ムートン・カデ・グラーヴ・ブラン2019は広がりが豊かで、アロマティックですが抑えも効いています。
パッションフルーツ、メロン、ヴェルヴェーヌ、山椒、さらにヨードや貝殻。嫌気的(フレッシュさがあり)で透明感があり、詳細に富んでいます。
味わいも一貫して広がりがあり、豊潤な印象です。溌剌とした酸味は柑橘の風味を伴い、ボディをリフトし、全体に凛とした緊張感を与えます。後半では味わいのひとつひとつの要素が調和し、フィニッシュとなります。
「Universal」 ある時、マルジョンさんが発した語彙です。
野菜メインの料理、前菜からメインディッシュ、チーズまで合わせることができ、ランチでもディナーでも、またカジュアルダイニングから高級店でもサービスすることができ、温度は低めでもやや高めでも楽しめ、小ぶりなグラスから大きめのグラスでも際立つことのできるワインで、様々な嗜好の方にも楽しんでいただける、という意味です。
この表現を他では聞いたことがありません。
英語でよく使われる語彙になおすとVersatileとなり、これはネットでもよく出てきます。マルジョンさん独自の表現なのでしょう。
もちろん私はUniversalとテイスティングメモには記しています。
今回紹介したワインはこちら
ボルドー随一の白ワインの銘醸地、グラーヴの厳選されたソーヴィニヨン・ブランとセミヨンを使用し造られた1本。ハーブの風味と爽やかな酸、厚みのある果実味やミネラルのハーモニーをお愉しみいただけます。
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