奇怪な用語が飛び交うワインテイスティング。フルーツや花ならまだしも、スパイスに、ミネラル、焦げ香??しまいには動物臭?!ですが、これにはきちんと意味があるのです。ソムリエ目線で、毎回難解なテイスティング用語や表現などを解明!
あなたもイメージを膨らませてテイスティングに挑戦してみてはいかがでしょうか。
「伝統と革新」、ヨーロッパ諸国、とりわけフランス人が好んで使う言葉であり、モットーでもあります。ワイン伝統産地でも頻繁に聞かれます。イタリアはそれを最もダイナミックに実現している生産国です。
トスカーナ、シチリアを筆頭に革新的なワイン造りが大胆に行われた一方で、アンフォラ、スラヴォニアンオークの大樽といった伝統手法も健在。
国際品種によるヴィーノ・ダ・ターヴォラといったD.O.P.(原産地呼称)を捨て去ったワインが脚光を浴び続けても、ブルネロやタウラジはその栄光に影を落とすことはありません。
むしろ土着品種人気の火付け役ともなった個性豊かなD.O.P.がリバイバルを遂げています。バローロはまさにその最たる存在。「王のワインにして、ワインの王」と、いにしえから称された最古のD.O.C.G.はその風格を保ちながらも、益々の発展、革新を遂げています。
1980年代、大きなムーブメントを起こした「ボーイズ(※)」たちも今や重鎮となり、新世代へと受け継がれつつあります。革新も時を経て伝統になる、バローロを見ているとその循環が見事に行われているのです。
1960年代、まだ従来型のワイン造りしか世に知られていない時代にワイナリーに参画したアンジェロ・ガヤは、70年代に革新を起こします。その大胆さは父親に「残念」とワインに名付けられるほどでした。
その娘、5代目のガイア・ガヤにより、そのスタイルは見事に革新を遂げます。偉大な父からの薫陶を確かに受けながらも、父譲りの大胆さで次々と新たな風を吹き込むのです。
※バローロ・ボーイズと呼ばれるモダン派の生産者たち。長期熟成が前提だったバローロを早くから楽しめる味わいにするため、様々な手法を導入した。
ダグロミス・バローロ2018は、広がりが大変豊かで芳香性が高く、緻密かつ繊細、深みがあります。
ブルーベリーやブラックベリーの鮮やかな果実の香り、スミレの華やかさ、ヴァニラ、カルダモン、クミンといったスパイス。樽からの印象が絶妙に混在します。
レザー、紅茶、タバコといったバローロ典型の複雑さがグラスの底に漂います。多層的でフィネスのある香りです。
味わいはスムースで、やわらかみがあり、ジューシーでエアリーな広がりをみせます。アルコール感がタンニンと共にしっかりとした骨格をつくり、密度が高く、グリップのある渋みが余韻に長く残ると同時に口中をリフレッシュします。
際立った芳香性、華やかさのある出色のバローロはまさに新世代が手がける現代的なスタイル。
香りの立ち上がりが高く、やわらかでエアリーな広がり、豊かな味わいながら余韻にはフレッシュ感があり、「ネッビオーロはピノ・ノワールに似ていて、全く違うところがある」という彼女の言葉が納得ゆきます。
オーガニックに切り替え、オークを抑え、かつ原産地呼称の尊重を掲げるガイアのフィロソフィーは確かにこのワインに現れています。この一本の中に、伝統と革新が詰まっている、そんなテイスティングになりました。
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イタリアワインの地位の向上に大きく貢献し、世界中の生産者から尊敬を集めるガヤ。こちらはガヤが誇るバローロの単一畑キュヴェの若樹から造られるセカンドラベル的ワイン。力強い果実味とエレガントなタンニンによる、しっかりとした骨格が魅力です。
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